「鬼滅の刃」全巻感想、今回は第6巻です。
これまで5冊読んだのですが、全体的な流れで言うと、物語はここまで一気に駆け抜けた印象です。
もちろん、途中で修行したり、疲れを癒したりはしていたのですが、特に炭治郎が鬼殺隊隊員となってからは、割と(カラスによって)連続して鬼を討伐しに行ってましたよね。
それがこの第6巻になって、ようやく一旦小休止といった感じ。
蝶屋敷に行ってからの印象が強いためか、全体的な印象としては、ほのぼの巻、といった感じでありました。
と、同時に次の戦い前のワンクッションといった感じでもありました。
やっぱり善逸!
第5巻は、全然と言っていいくらい、善逸の出番がなかったのですが、蝶屋敷に行ってからは久々に善逸が登場し、そして善逸は相変わらず善逸でした。
なんかねー、善逸出てくると、なんか嬉しい!
やっぱり、彼が出てくると雰囲気が一気に明るくなりますよね。彼が出てくるだけで、物語全体が彼の雰囲気に引きずられるというか。
ただ蝶屋敷編は休息の回、といった意味合いもあると思うのですが、基本的には修行の回です。ここで炭治郎たち三人は新しい技を覚えて一気にパワーアップして、次の戦いに備えます。
しかし、蝶屋敷の主が胡蝶しのぶという、雰囲気としては割とほのぼのした人だし、何と言っても善逸がいるので、修行といっても、「気合い出せ! ウラア!」のような体育会系な特訓的雰囲気はなく、どこか楽しい、ほのぼのした雰囲気があります。
とはいえ、修行の描写自体はじっくり描いているので、「成長した」という実感が読んでて伝わってきます。
ここらへん、一巻で描かれた鱗滝さんのところでの修行とは違い、あっさり感はなく、しっかり修行を描いていたと思います。ここらへん、なんか上手くなったな、って思います。
上手くなった、と言えば、以前はちょいちょい挟むギャグが割とスベりがちだったように思うのですが、この巻ではそこも上手くなっていた気がします。
鬼殺隊柱合裁判のシーンなどでは、シリアスなシーンにちょいちょいギャグを挟んできて、その固い雰囲気の間のハズし方が割と面白かったんですね。そういうちょっとした「汚し」というか「余白」というか、そういうの入れてくと、やっぱり読んでて面白味というか、そういうのを感じますねー。
鬼殺隊柱は様子がおかしい
あと今回、柱と呼ばれる鬼殺隊の、まぁ、幹部みたいな人たちが出てくるのですが、全員、それはもう一人の例外なく、全員、様子がおかしいw
もう、なんなんでしょう、まともに話が通じそうな人が、強いて言えば冨岡義勇くらいで。話が通じそうなのが冨岡義勇、という点で柱メンバーの異常性がわかろうかというものです。
何て言うんでしょう…、全員悪役に見えるw
まー鬼を相手にするわけですから、これくらい異常な連中を揃えないと、ってことなのかもしれないですけどねー。
ただですねぇ、最初はかなりヤベー奴だな、って思っていた胡蝶しのぶが、実は色々と訳有りで、彼女は彼女なりに一つ確固とした信念を持ってるってことが、炭治郎との会話でわかります。
鬼と仲良くすることを、本気で考えていて、それは鬼に殺されたお姉さんのためなんですね。
お姉さんは、炭治郎と同じく、鬼は実は同情すべき存在であることに気付いていたんです。
一方しのぶは鬼に対しては、人を殺しておいて可哀そうというのは馬鹿な話だと断言します。
でも、姉の意志は継ぎたい。鬼に哀れみを抱いていた姉と、鬼にどうしようもない嫌悪感を抱く自分、その狭間で怒りの感情が溜まっていっているのです。
非常に矛盾した思いを、常に持っている。
また、蝶屋敷編では、実は優しい人で、面倒見の良い人だということもわかってきます。
胡蝶しのぶは、僕の中で今後要注目の人になりました。
やはり、こういう自分の中に矛盾を抱え、葛藤して、その中で色々と模索している人は、どうしても気になってしまいます。
最初は、割と嫌悪感のあった胡蝶しのぶがそうなのですから、他の柱連中も今後、そうした面が見えてくるのでしょう。
鬼舞辻は昭和のヤンキー
で、一方、鬼チームは鬼チームで会合が開かれます。今回は十二鬼月の中でも下弦の鬼のみが鬼舞辻の元に集められ、一人を除き、全員ブッ殺されます(^^;;
もう、なんなんでしょう、まともに話が通じないどころの話じゃない。容赦ないです。ああ言っても殺される。こう言っても殺される。発言だけじゃなく、思っただけで殺される(鬼舞辻は、顔の見える鬼が何を考えてるかわかるそうです)。
何つーんでしょう、その逃げ場のない独裁の感じ。独裁者というよりは、昭和のヤンキー感があります。自分の舎弟に対しては、ちょっとでも自分の気に入らないことがあると焼き入れる感じ。いやー、怖いですねェー。
まぁ、そんな感じで、この鬼舞辻無惨、めちゃくちゃ強いです。下弦の鬼たちが成す術もなくやられてしまうわけですから。
ここで一つ疑問が出てきます。
なぜ鬼舞辻は炭治郎を自ら殺しに行かなかったのか。
これだけ強いのだから、例えば2巻にあったように手下を使わせるまでもなく、すぐ近くにいるし、顔もわかっているのだから、自分でとどめを刺しに行かなかったのでしょうか?
現時点で二人の戦闘力の差は圧倒的なのですから、その方が早いはずです。
そして、鬼舞辻の強さから導き出される疑問がもう一つ。
なぜ鬼舞辻は日本を征服しないのか。
鬼舞辻一人でこれだけ強い上、自分よりは力が劣るとはいえ、一般ピーポーより遥かに強い鬼を多数所有しているわけですから、戦力は既に整っているはずです。
なぜ、鬼舞辻は人に隠れるようにして暮らしているのでしょう? しかも、普段は人間として暮らしているらしい。
なぜそんなめんどくさいことをするのでしょうか?
今後、この謎にも注目していきたいと思います。
ちなみに、今回の鬼舞辻はマイケルではありませんでした。そういや鬼って、自分の形を思うままに変えられるみたいでしたね。
鬼殺隊は合議制で鬼舞辻は専制君主制
そんな感じでですね、6巻では鬼殺隊と鬼チームでそれぞれ会合が開かれていたわけなんですが、なんか、この二つの勢力、対(つい)になっているイメージがあります。
なんか似てはいるんですよね。
両方共、一人の人物を頂点として、その人物に対して、基本的には絶対服従の態度を取っています。
鬼殺隊の方は当主である産屋敷耀哉を、鬼チームの方は鬼舞辻無惨を頂点としています。
ただ違うのは、制度的な点ですかね。
鬼殺隊の方は、柱連中は産屋敷に対して非常に礼を尽くしてはいるものの、平気で意見したり、「柱合会議」なるものが開かれていることから、一定の合議制ではあるらしい。
反対に鬼チームの方は、これはもうどうしようもないくらいに鬼舞辻無惨の専制君主制が採られているわけです。
なんとなーく、イデオロギー的なぶつかり合いのようにも見えてきますねー。
今後そういう思想的、というか、各々が内に持っている精神面での対決も見所になってくるように思えます。