スティーブン・スピルバーグの「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」は定期的に観た方がいいような類の映画かな、と思うし、色々考えさられる、とも思うけど、何より「面白い」作品だと思います。
また、映画のラストシーンは、かのウォーターゲート事件の事件発覚現場で幕を閉じていて、ここから様々な映画へと繋がっていくようにも思えて、そこも何だか味わい深いです。
アクション映画のよう!
新聞社同士のスッパ抜き合戦と、メディア対政府、という地味な内容のはずなんですが、あたかもアクション映画を観ているかのような作風でした。
ここらへん、使命感にかられて作った、と言いつつもちゃんと映画としてのエンタテインメント性を入れてくるあたりはさすがスピルバーグですね。
こういう思想的なメッセージ性の強いものって、とかく説教臭くなりがちで、敬遠されがちな傾向ってぶっちゃけあると思います。でも、こういう映画こそ楽しめるように作らないといけないと思うんですよね。なぜなら、作り手は、多分自分が作った作品の中でもこういう映画こそ多くの人に観てもらいたい、と思っているであろうから。じゃなきゃ作らないと思うんです。
だったら、やっぱり多くの人が観て「楽しめる」要素はふんだんに入れた方がいいと思うんです。
突然重荷を背負わされる
ただやっぱり、会社を守るか、国を守るか、で葛藤するメリル・ストリープが心苦し
かったです。
そりゃ国の方が優先されるんだろうけど、一口に会社と言ったところで、そこには多くの人の生活がかかっているわけですから、小さな問題とは絶対に言えないと思うんです。そりゃ悩みますよ。
おまけに彼女は新聞社の社長になろうとしてなったわけではないんですよね。働いたこともないのに、突然社長にさせられたようなものなんです。そんなんだから、普段、懸命ながらも、肩身の狭い思いをしている彼女にはどんなにキツい決断だったか、と感じずにはいられません。
ただ、決断をくだす時のメリル・ストリープは威厳に満ちていました。この一方からもう片方に振り切るときの女性の清々しさ、身軽さ、思い切りの良さはホントすごいと思います。男にこういう身軽さは、なかなか持てない。だから、リーダーにはもっと女性がなるべきだ、と僕個人は思っています。リーダーにはこういう資質は絶対に必要だと思いますからね。
それにしてもメリル・ストリープはホント芝居がうまい(オスカー女優に対して俺が改めて言うまでもないけど(^^;)。自信がなく、気弱な女社長を実に実在感をもって演じていました。だからこそ、グッと来たんでしょうねぇ。
女性への応援歌映画
そしてこの新聞社の社長は、謂わば女性の象徴で、この映画は遍く女性に対する応援歌でもあった、と思うのです。最後の法廷を出るメリル・ストリープの沿道には女性が集い拍手を贈ったのは、まさにそのことを表しているように見えました。
裁判に勝った時、最高裁の判決の文章「報道が仕えるべきは国民であって政府ではない」を読み上げるのも、ワシントンポストの女性社員でしたし。
そしてこのセリフはまさに現トランプ政権への警鐘でもあったように思います。報道の自由と女性の尊厳の高らかな宣言なのです。このセリフは名ゼリフですね。
ラストのセリフは超名台詞
また名ゼリフと言えば、ラストのメリル・ストリープの夫が言う「新聞は歴史書の最初の草稿だ」。
これは、名台詞ですねぇ!
確かにその通りだと思います。歴史的な事件が起こった時、最初にその事件を広く知らしめる文献は、多くの場合、新聞、今ならネットの速報だと思います。いずれにしろメディアですよね。
メディア、記者の矜持ともいうべきセリフ。それくらい、メディアというのは責任が重く、尊い仕事でもあるのです。
これはアメリカだけではなく、日本も、世界中のメディアの方々に聞いて欲しいセリフだなぁ、と個人的には思います。