ツイッターとか見ていて非常に評判が良かったので、「若おかみは小学生!」を観に行ったんですけど、前評判通りめちゃくちゃ良かった! もう、ホント泣きそうになりましたよ!
重く、シリアスな人生を歩まなくてはいけなくなった子供にファンタジーを絡めると名作になることが多い気がします。
スタッフがすごい!
観終わった後、スタッフを調べてみたら、監督と脚本が非常に力のある人で、これだけの名作になるのもうなずけます。
先ずは原作なんですけど、令丈ヒロ子の児童文学シリーズです。20巻完結済みで、なんと300万部を売り上げる大ヒットシリーズ!
監督はジブリ作品の作画監督や原画を歴任し、「茄子 アンダルシアの夏」を監督した高坂希太郎!
脚本は「猫の恩返し」「たまこラブストーリー」「聲の形」の吉田玲子!
そして、音楽は鈴木慶一だ! いや、すげえメンバーだなぁ。
もう、ね、人物の配置やそのキャラクター設定、起こる出来事などが全て繋がっているように思うし、どれもが効果的。ホント、隙のない作りで、それでいて、めちゃ熱い、魂のこもった作品のように思います。
土着的な設定が見事!
温泉街や神楽など、土着的な設定も見事でしたねぇ。そして好きでしたw 超俺好み。
ここらへんの設定や小道具の使い方は、同じように土着的要素を使った「君の名は。」よりも上手いと思います。出てくる小道具それぞれにきっちりと、しかも浅からぬ意味があるんです。
特に温泉街が出来た理由などは、思想性が素晴らしい。色んな動物が傷を癒しに温泉を利用した、という自然的且つファンタジー的な理由から「来るものは全て受け入れる」という博愛的で反差別的な思想性へと至るところが、物語全体を照らしているように思うし、またそれは、主人公が最終的には他人を許すことへも繋がっていると思います。
良い脚本家や監督は性格が悪い?
キャラクター設定で言うと、完全な悪役がいないのも特徴ですね。
例えば、ピンフリ(ピンクのフリフリの服を好んで着ているため、このアダ名が着いた。このアダ名も小学生らしい頭の悪さ爆発で良い)などは立ち位置的には悪役的であり、ライバルであるが、彼女なりの哲学、思想をしっかりと持っていて、一目置いてしまう。そして、彼女は最終的には主人公・おっこを助けてもくれる。ここらへんが、この作品を清々しいものにしてくれてると思うんですよねー。
ただですね、主人公の試練の与え方がですね、ある意味、すごく残酷なんですよね(^^;; 良い脚本家や監督は皆性格が悪い、とは庵野秀明の言葉だが、まさにその通りだと思います。
でも、この作品ではそれでもその試練には深い意味があって、主人公を無駄に追い込んでいるわけではないんです。
そして、その試練を乗り越えたおっこが、最後に振り返って、目に涙をためながら見せる笑顔は、もうホントね、神々しくすらあるんです。
それら全部を通過して、神楽を踊りながらのエンディングは見事と言うほかないです。
人生訓
また、おっこは両親の死を実感として受け入れられることなく物語は進んでいくのですが、事故を起こしてしまったトラックの運転手が、おっこの働く旅館に泊まりに来たことにより、突如として現実のものとして襲ってくるんです。
それと時をほぼ同じくして、おっこを支えてくれていた幽霊たちが徐々に見えなくなり、最後は完全にお別れをすることとなってしまいます。このことは、人生とは別れである、ということを突き付けられているように感じました。
また、幽霊たちが見えなくなるおっこの喪失感にはカタルシスがあり、そのはかなさが成長と共に失うものの象徴のように思えました。
そして、主人公が一番必要としている時にそれらのものが見えなくなる、というのは試練の一つであり、ここは「魔女の宅急便」と共通するものがあると思います。
試練とは一人で乗り越えるもの、というのは基本ではあると思うのですが、その一方、他の誰か、特に大人が手助けしてくれもする。
図らずも教育の重要性というものを感じてしまいました。やはり、子供を導くのは、もちろん、自らの意思も重要だと思いますが、やはり大人の力こそが大事なのかなと。だから、社会とは教育を根幹として形成されるべきものなのです。
唯一の疑問
そんな感じで、ホント素晴らしい作品なんですけど、演出的な面で唯一疑問に残る点があります。
なぜ幽霊たちが見えなくなるのか、その理由です。
鬼の子は、幽霊達は成仏する、と言っていましたが、なぜこのタイミングなんでしょう? 主人公の女の子が成長したから見えなくなる、と思っていたけど違ったし、その成仏のタイミングが都合が良いようにも思います。でも、製作者側では何か明確な意図があるとは思いますが、それが僕にはちょっと見えなかったです。
とはいえ、色々観てて辛いところや、教えられることも多い作品ですが、とにかく観てて単純に楽しい作品で、もちろん深みのようなものもあり、素晴らしい映画でした。