azzurriのショッピングレビュー

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僕が買ったもの、観に行った映画・ライヴなど、要は金を払ったものに対して言いたい放題感想を言わせてもらおうというブログです。オチとかはないです。※ネタバレありまくりなので、注意!

「ブラック・クランズマン」ネタバレ有り感想。良い出来ではないけど、深みがある。

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「ブラック・クランズマン」を去年、観たんですけど、なんで行ったかというと、予告編が面白そうだったから。

黒人なのにKKK団の「潜入捜査」に行くというですね、どうやるんだ?という内容で、しかも実話ベース! そんなこと実際あったんだ?!という驚きがありまして、これは観に行かねば、と思った次第です。

ただ、実際観たらですね、想像していたほどはウィットに富んでいなかったし、笑えもしなかったですね、結論から言っちゃうと。差別してる連中を笑い飛ばす痛快さ、を観たかったんですけど、どちらかというと、割とガチめな反人種差別映画でした。

 
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映画としてはそんなに良い出来ではない?

映画としては、ロンがなぜKKK団の面接試験に電話をしたのか、その肝心なところがよくわからなかったり、全体的になんとなく説明不足というか、ちぐはぐな印象を受けました。

また、演説シーンが長かったり、最後にニュース映像で締めたり、と、あからさまなメッセージ性はちょっと工夫が足りない印象も受けました。そもそも最後主人公たちがどうなったのかもわからない。かなり中途半端な形で終わっていました。

そんな感じで、映画としては、作りはちょっと微妙な感じというか、そういうところはちょっと残念だったですかね。

やはり商業ベースの映画ですし、特にこういう内容のものはもっと取っつきやすい方が良かったと思うんですよね。なぜなら、こういうメッセージ性の強い映画こそ、多くの人に見てもらいたいと思うから。カルトではダメなんです。残念ながら、この映画の作りはカルトと言わざるを得ないと思います。

そこらへんはよく比較される「グリーンブック」の方が、言ってしまえば上だったように思います。その点では、ね。

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「時代が」逆行している?

ただこの映画のすごいところは、「グリーンブック」と違い、オブラートになんか包まないところですね。「グリーンブック」も差別シーンは結構描かれていたんですけど「生活の中での垣間見られる出来事」という点にとどまっていた印象です。

 

対して、「ブラック・クランズマン」はラストなんかも「めでたしー、めでたしー」なんかでは絶対終わらせない。非常に激しい映画だったと思います。極めて強い意志を感じます。

だから、この映画を通して、知らなかった、知らなきゃいけない事実を知ることができたのは意義深いことのように思います。

黒人の集会で、老人が昔体験した出来事について語るシーンがあるんですけど、そこで語られた、白人が行ってきたことが、非常に衝撃的でした。

極めて猟奇的で狂気の沙汰としか思えない。ここまで行ってしまうのか、というくらい。

行きつくところは、ああいうところなのかもしれません。

また、ただ単に反黒人差別映画ではなかったです。黒人だけでなく、根強いユダヤ人差別にも言及していました。広く「差別主義」とでもいうべきものに、強く抗議する内容だったように思います。

更にこの映画は、「反トランプ」というところにまで行き着きます。KKK団の集会では「アメリカ・ファースト」と唱えるし、劇中のエピソードはトランプ政権で起こった白人警官による黒人の銃殺を想起させるものでしたし、そして映画のラストはトランプ関連のニュース映像で締められていました。そもそもKKK団がトランプ政権になってから勢いづいている団体です。

おそらく、この映画の舞台は70年代くらいのアメリカだと思われるのですが、現在の状況と非常に似通っている印象でした。まるで今が40年前に戻ったかのよう。少なくともこの映画だけ観ると、なんだか時代は後退しているように思えてならないです。

ふと、2000年代くらいまでって、こんなだったかなぁ、って思ってしまいます。

差別、敵対という行為そのものを批判

そして、更にこの映画は、反人種差別にとどまらず、「差別」という行為そのものを攻撃していく様相を呈していきます。

それは黒人の集会が非常に白人に対して攻撃的になるシーンを見て思いました。明確に「白人を殺せ」と言っているんです。クライマックスではKKK団の集会と黒人の集会が交互に映されるのですが、「ホワイト・パワー」「ブラック・パワー」と叫ぶシーンが交互に映されていました。

憎しみには憎しみで返す黒人の集団も、それはそれで人種差別的ですらあった。差別に対して、差別で返すことは、結局同じことをしているのではないか、と問いかけているような絵でした。

主役の黒人警官であるロンがここに対してすごく意識的なんですよね。そんなシーンがあって。

恋人に、ピッグ(白人警官のことを黒人はこう呼んでいた)じゃなくて警官だ、と諭すシーンがあるんです。白人にもいい奴はいる、と。彼だって白人に対しては思うところがあるはずなんです。でも、白人だからと言って、全員を無条件で嫌うことはしないんです。

実際、ラストの電話のシーンではロンと潜入捜査を共にした白人警官とで実に楽し気に笑っているシーンがあったんです。

対立でなく融和が必要なんだ、と言われてるように思えました。しかも、なぜ笑っていたかというと、電話口の向こうのKKK団のボスを嘲笑っていたんですね。

黒人と白人が一緒になって差別主義者をバカにして笑っている。このシーンはこの映画を最も象徴するシーンなのかな、って思いました。個人的には最高に痛快なシーンでもありました。

映画としては良い出来とは言えないけど、「深み」という点では非常に深みがあった、考えさせられた、ズドンと来る映画であったようにい思います。