azzurriのショッピングレビュー

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僕が買ったもの、観に行った映画・ライヴなど、要は金を払ったものに対して言いたい放題感想を言わせてもらおうというブログです。オチとかはないです。※ネタバレありまくりなので、注意!

長野まゆみ「カルトローレ」は砂漠での日常が優雅!!


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長野まゆみの「カルトローレ」を読みました。なかなか面白かったですね。ストーリーとしましては、主人公の目を通して語られるものの後ろの方に、それを包むようにして大きな出来事が流れていく感じですね。多くの長野まゆみの作品に見られるように、この作品の主人公も、記憶が曖昧です。設定としましては、長い年月、空に浮かぶ《船》に暮らす種族がいて、その船が事故って落ちてきて、地上の世界に取り込まれてしまいます(で、いいんだと思う)。で、やはり長い間船の中で独自に暮らしていたので、文化も違うし、言語も違う(多分)。主人公は地上で住むための「適応化プログラム」を受けている真っ最中、というお話です。この設定、なかなかナイスですね。長野まゆみは「設定勝ち」という話が多いです。流石です。


あと、長野まゆみは「場勝ち」というのも多く、今回もナイスです。場の設定としましては、今回は「砂漠」です。そう来たか。主人公が「適応化プログラム」を受けるために片田舎の砂漠にやってくるのですが、なかなかのんびりしているし、砂に覆われている風景も美しく描かれているし、そこはかとなく優雅。憧れる、或いは旅行に行ってみたくなる場を描くのは天才的ですね。よくまぁ、これだけ次から次へと思い浮かぶもんだと思います。


そうそう、それでですねー、この「適応化プログラム」の過程において、主人公の《船》での生活の記憶がかなり曖昧になっているみたいです。これが話の全体像をぼやかせているのに一役買っています。ストーリー自体も結局全体的にどうなったのか、ハッキリとは描かれていません。この主人公は《船》ではどういった役割を担った人だったのか、もうひとつの《船》は見つかったのか、白蛇の皮でできた日誌は何だったのか、等々多くの謎がこの作品にはちりばめられているのですが、そのどれもがハッキリとした答えを与えられません。ただ、読み進めていって、それらは別に答えを出してもらわなくても、いいかな、って感じです。そういう謎ときめいたものではなくて、この作品(そして、多分長野まゆみの作品の多く)はその「世界」が主役なのではないかと。長野まゆみの描き出す世界を旅することが最大の面白さなのかな、とちょっと思います。しかも、「夢の中」で旅してる感じ。主人公の記憶の曖昧さや、世界の在り方の所在無さげさ加減などは「夢の中」で見る世界に通じているようにも思います。本を読んでいる間、長野まゆみの作り出す夢を見ているというか。


ちょっと気になったのは、長野まゆみの作品と言えば、初期の作品では難しい漢字だったのですが、この作品では通常ならばごくごく簡単な漢字を使う場面でも、あえて平仮名を使っています。これはどのような効果を狙っているのか、ちょっとよくわからないんですけど、主人公の地上の世界に慣れていないさ加減を表現しようとしているのかもしれませんね。