随分前に「雲のむこう、約束の場所」のDVDとメモリアルボックスを買ってきたんですけど、この連休中にようやく観ました(^^;; まぁ、映画自体は公開時に観に行ったのですが。
この映画の魅力は色々あるのですが、まぁ先ずは何と言っても「絵」じゃないですかね。料理を褒めずに皿を褒めてるみたいで恐縮なのですが(^^;; でも、アニメ、いや映画において「絵」というのは非常に大事な要素だと思います。この映画も緻密にして独特の空気感のある絵で異世界を構築するのに成功していると思います。で、ほとんどCGで描いていると思うんですけど、新海誠の場合は全体的な印象として暖かかったり、柔らかかったりするんですよね。そこらへんが他のCG作家と一線を画しているところかなぁ、なんて思うのですが。
それから設定ですね。日本が分断されるというその設定はある意味非常にリアル。聞いた話ではその寸前までいったらしいですからね。この設定を使った映画って今までなかったんじゃないですかね。それでいてこの映画はそういう状況の深刻さに比べて描かれている表層的な日常はえらいのほほんとしているのです。もちろん、その日常の至る所に深い傷跡が見え隠れするのですが。そういうのほほんとした雰囲気が逆にリアルというか。そういう描き方もすごいと思います。
あと、「平行宇宙」という設定。これは噛み砕いて言うと「宇宙が夢を見ている」ということらしいのですが、更に噛み砕いて言うと「パラレルワールドのようなもの」だと思います。実際に他の「世界」があるのではなく、「こういう可能性もあった世界」だと思います。この設定も「さもありなん」という感じで、僕はすごいと思いました。そしてさっきも言ったようにこの映画の設定は可能性の高かったもう一つの「戦後」の世界で、そういった意味ではこの映画自体が「平行宇宙」の一つなのではないでしょうか。
それから声優陣も素晴らしかった。メインとなるような人物はもちろんみんな良かったんですけど、やっぱり吉岡秀隆はいい役者ですね。特にナレーションが良かったんですけど、特典映像のインタビューでは本人曰く「難しかった」そう。やはりそういう風に難しさを感じることができるというのは名優の証拠なのかなぁと思いました。あのイチローだってヒットは打てば打つほど難しくなってくるって言ってますもんね。
で、まぁホントね、いいとこ挙げてったらキリがないんですけど、最後にやっぱり主役三人の心の交流というか、それはやっぱり綺麗だなぁと、思いますね。ちょっと羨ましい。最後に夢の中でサユリがどんなにヒロキのことを求めていたかっていう気持ちが消えてしまうところが、切ないですね。でも、確かにどんな感情でも、そういう「気持ち」って持ち続けるのはホントに難しいと思います。ずっと持っていたいけど、消えてしまう。あるいは褪せてしまう。そういうものかもしれません。
それからメモリアルボックスの方には動画コンテとか壁紙とかが入ってたんですけど、こちらも楽しめましたね。あの美麗な絵を堪能できるし、それから動画コンテがね、面白かったですね。動画コンテと本編はそんなに変わんないんですね。絵が粗くてSEが付いていないっていうくらいじゃないかなぁ。声も入ってましたからね。僕はアニメのラフスケッチみたいなのも好きなので、動画コンテだけでも楽しめるかも(^^;;