日本アカデミー賞の最優秀作品賞獲りましたね、「新聞記者」!
僕も観たんですけど、ものすごい映画でした。2019年邦画では僕の中でも一番でした。
攻めすぎなくらい攻めてる映画だったし、映画そのもののクォリティも高かったと思います。
予告編
細かい演出が攻めてる
もうね、いちいちカッコいいんですよ、演出が。ファックスしたり、新聞配達したり、PCいじってるだけなのにカッコいい。そういう事務的なものをカッコ良く映すのはシン・ゴジラ的かもしれません。庵野秀明的というか(^^;;
特に冒頭はあえて焦点が合うのを遅らせたり、そういう細かい演出で臨場感を高め、観客を映画の中の世界に引きずり込もうとしていたと思います。その他にも、凝った構図で攻めて、映画に緊張感やカッコ良さを与えることができていたと思います。
キャストが攻めてる
また、キャスト的にも前川喜平を映画の中のテレビ討論に出演させたり、かなり攻めてましたね。
主演のシム・ウンギョンはアメリカ生育った日韓ハーフの帰国子女という役どころなので、台詞はカタコト(それでもちょっと違和感があったかもしれない)だったんですけど、表情と目の演技がすごかった。迫真性抜群。この人の演技初めて観たんですけど、素晴らしい役者ですね。
そしてまた、この役は日本の外部の人でないと務まらないようにも思いました。「日本」を客観的に見なくてはいけない、「日本」を相対化しなくてはいけない役どころだと思うので、外国人である彼女を抜擢したのは必然だったようにも思います。
またもう一人の主役・松坂桃李も四方八方から神経を引き裂かれるような役どころを好演。この人は着実に良いキャリアを築き上げていますねぇ。そして松坂が演じる男の苗字は杉原。そして外務省出身。何か杉原千畝のことが年頭にあったような人物名で、これもまた色々と示唆的。
田中哲司も効きまくってましたね! 彼は真面目一徹で誠実な役も似合えば、ぶっ壊れた極悪人の役も似合うけど、こういうインテリで怖い役柄でこそ真の実力を発揮するなぁ。
その他にも、出てきた役者さん、皆素晴らしかったと思います。今回キャストが強力でしたねぇ。
ラストも攻めてる
これは超個人的な「印象」でしかないんですけど、我々が住んでるこの国って、実は民主主義が根付いていないんじゃないか、ってたまに思うんですよね。それは生活レベルで。
なんかみんな、友達とかでも、やたら周りと歩調を合わせようとするし、世間一般論を気にするし、画一的であろうとする。これはゆるやかなファシズムなんじゃないだろうか、って。
まぁ、考えすぎだとは思うんですけど、こういう映画観ると、そんなこと思ってしまいます(^^;;
だからこの映画の最後で田中哲司が言った「この国の民主主義は形だけでいいんだよ」という台詞はとんでもないキラーワードだったように思えて、響きましたねぇ。
最後の最後で、松崎桃李の口の形が「ごめん」となっていたことから、この映画の行く末はバッドエンドを予感させるんですけど、こういう映画は現代社会の批評・批判であると思うので、基本バッドエンドでなくてはならないんでしょうね。
やっぱりこういう映画って、観た人に考えてもらおうとしているわけで、そうしてもらうためにはバッドエンドでないとダメなんですね。ハッピーエンドでめでたしめたしだったら、あぁ良かったってなって、あんまり考えようとしないと思うから。
だからディストピア小説で名高い「1984」なんかは、バッドすぎるバッドエンドだったし、「われら」もそうでした。
とにかく攻めに攻めた映画だったですね。もちろん、映画として、細かく張り巡らされた伏線や、絶妙にクロスオーバーする人間関係など、めちゃよくできていたし、この映画にあんまりこういう表現はふさわしくないかもしれないけど、面白かったです。
政治的であり、問題提起もしてるんだけど、エンタテインメントとしても成立していた、素晴らしい映画でした。