「音量上げろタコ! なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!」(長い)は監督が「転々」や「インスタント沼」の三木聡、主演は阿部サダヲと吉岡美穂、予告編も面白そうだったので、絶対観に行こう、と思っていた映画でした。
しかし、上映開始後、まさかのひと月もたずに東京では終了。
ただ、そんな感じで前評判は低かったんですけど、よくよく評価を見てみると最低と最高しかない。「パンク侍」の例もあるし、ロックものなので大画面で大音量で(タイトルがタイトルだけに映画館で観ないと意味ないとも思ったし)観たかったので、観ました。
結論から言うと、傑作とは言い難いけど、楽しめたことは間違いないです。少なくとも、個人的には映画館で観た価値はあったかな。
日本のロック文化のツボを抑えていた
途中まではロックをカリカチュアしたというか、パロったというか、そういう感じで進んでいって、日本のロック文化のツボをよく抑えた、なかなか僕好みの映画でした。
でも、途中っから舞台を韓国へ移すのですが、そこからは正直あんまり面白くなかったかな(^^;;
釜山の刑務所に投獄された好きな男のために対馬でライヴを行う、というラストはキレイにまとまってはいたものの、 ぶっちゃけ面白くなかったですねぇ。
なんというか…、ロックじゃないんです(なんかすごい昭和的な発言ですがw)。
韓国という国自体もあまりロックが似合う国ではないと思うし…(ポップスとかヒップホップは似合うかもしれない)。
それに、基本的にこの映画は日本で独自進化した「日本のロック」の話だと思うので、例えば舞台をアメリカに移しても、イギリスに移しても、やっぱり面白くはならなかったと思います。
あと、やはりロックスターが投獄されっぱなしじゃ締まらない。
とはいえ、そこに至るまでは前評判の低さもなんのその、非常に楽しい映画だったと思います。
やっぱりキャスト最高!
キャストも、阿部サダヲはロック映画には似合いだし(グループ魂を彷彿とさせるw)、ふせえり、松尾スズキ、田中哲司、麻生久美子もバッチリハマり役でノリノリで演じてる。ただ、岩松了の出番が少なすぎたかも。もっと見たかったですねぇ。
そして、もう一人の主役、吉岡里帆の役なんですけど、こういう人いますよねー!(笑) こういう、何というか、ふんわり雰囲気系毒にも薬にもならないストリートミュージシャンってめちゃくちゃよく見かける(^^;;
で、こういう何とも言えない女の子アーティストをなんとか変えてやろう、プロデュースしてやろう、というのが企画の始まりなのかもしれないのかな、と勘ぐってしまいます。
その役には吉岡美穂はまさにぴったりだったし、また上手く演じているとも思います。吉岡美穂って、多分性格俳優なんじゃないかな。「空の青さを知る人よ」の時も思ったけど、こういう、ふんわりとした女性を演じさせたら右に出る者はいないと思います。
世界観が超俺好み
あと、「13アイスクリーム」や「しあわせそば」などの小道具も絶妙!
主人公たちの住んでいる60年代ヒッピー文化が亡霊のように残っている裏広場や、サイバーパンクのような飲屋街の裏通り、怪しい医者など、場の作り方はもう見事と言うしかないです。
やはり映画には町の作り方や小道具は重要だと思うんです。僕は「映画とは旅でもある」と思っているのですが、そのことを再確認させてくれた映画でしたね。
こんな町行きたい! いや、あるんだろうけど、怖くていけないw だから、映画で欲求を満たすというか。だから、映画は旅でもあるんです。行きたいけど行けない場所への旅。
俺的ストーリー妄想
ただ、途中まで観てて、阿部サダヲと吉岡里帆は実は兄妹だった、という設定かなと思っていたんです。
まぁ違ったんですけど、でも、そっちの方がより業というか、カタルシスのようなものがあったと思うし、面白くなったと思うんですけど、どうでしょうか?