azzurriのショッピングレビュー

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僕が買ったもの、観に行った映画・ライヴなど、要は金を払ったものに対して言いたい放題感想を言わせてもらおうというブログです。オチとかはないです。※ネタバレありまくりなので、注意!

「パンク侍、斬られて候」ネタバレ有り感想。破綻しているようで破綻していない?!

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パンク侍、斬られて候」という映画があって、評価は散々なんですけど、僕はこの映画結構好きなんですよね。

ま、確かに評価は分かれると思います。ストーリーを追うだけの人や整合性に固執する人には楽しめないでしょう。

でも、映画って、ストーリーだけじゃない。脚本だけじゃない。絵や音楽、あのスクリーンに映し出された光と影と音、それら全てが、映画なんです。

だから、ストーリーだけ追ってピーピー言ってる人は、映画館なんかに行かずに、Wikipediaであらすじ調べりゃいいんじゃないッスかね(毒吐いてみました)。

独特の時代劇

先ずはその世界観に惹かれました。

衣装、小道具、大道具、町の造形、世界観など、石井岳龍監督のセンスが爆発してましたねー。宗教の一派の最初のパフォーマンスもかなり説得力があって面白かったと思います。

脚本の方は、正直クドカンの今時の若者風の軽薄な台詞回しはもはや若くはなく、古臭いのではないか、と感じてしまいました。しかし、時代性を全く無視した単語(英語交じりなど)とかをバンバン使ってくるあたりは面白いです。

そんな感じで、セオリーにとらわれない独特の時代劇を描こう、という意思は早い段階から伝わってきました。

「サムライ・チャンプルー」を思い出したし、そういう時代劇は大好きです。でも、それもまた氾濫してしまうと面白味は薄れるんでしょうけどね。

民衆のパワー

浅野忠信の怪しげしかない教祖、北川景子の美しい巫女(だと思う)、黒人の太鼓奏者、おまけに念動力を使う愚者が奇跡を見せるなどなど、この宗教が大きな流れとなる説得力抜群ですね。

あと思ったのは、無理矢理復活させた紛い物の宗教がやがて本物になってしまうは面白い。

あの宗教は、何も考えず付和雷同する民衆の愚かさと恐怖、また逆に、閉塞的な世の中を打破するには民衆の力しかない、ということを表しているようにも思います。

そう、これは宗教というよりは「ええじゃないか」のような、閉塞的な世の中を打ち破ろうとする民衆の暴発のように思えます。

また、あの宗教のフェス感、最後の戦いのテンションの高さは石井監督の真骨頂だと思うし、終末へと至るドライヴ感は「生きてるものはいないのか」を彷彿とさせます。

破綻しているようで、面白い構造の物語

で、まぁ、話の筋の方なんですが、こちらは確かに二転三転掴み所がなく、主人公も頼りない。先の見えない展開は面白いものの、人物の行動、特に主役の行動は一貫性がなく、無理があるように感じました。ここら辺も否定派が多い理由のようにも思うし、僕自身、疑問にも思います。

そして、物語は一見破綻して終わりを迎えるように見えるのですが、僕個人としては、そうは思いません。

結局あの世界は紛い物だったんです。そのことは永瀬正敏演じる猿の一言で明らかです。

あの世界は、やはりあの宗教が唱えるようにサナダムシの体内、という設定なのだと思います。実際クライマックスではあの宗教の教えの通り、無意味に踊り続けた者だけが、解脱よろしくサナダムシの体外へと出ることができた(ように見える)。

紛いものだからこそ、破綻し続けるべきなんです。

しかし、こうも思います。そんな感じで破綻して終わっている、ように見えるけど、最後に北川景子綾野剛を殺して終わることによって、見事に締めていると思うんです。

なぜならこれは「主役が仇である復讐譚」なのだから。普通は復讐譚というと、主人公が復讐を成し遂げようとするものだと思いますが、この作品は逆なんです。だから、主人公は殺される、または復讐されなくてはならない。だって恨みを買うようなことするから。それを思うと、ある種通常の復讐譚とは主客が逆転した、実に面白い構造の物語なんです。