去年の暮れ、坂本龍一のドキュメンタリー映画を観に行きました。しかも上映前にトークショーがありまして。ドキュメンタリー映画の前にご本人のトークを聞けるというのはなかなか乙なものがありましたねぇ。
映画は暗がりや逆光の中にある光が、印象が強かったですね。
撮り方がすごく綺麗で、ドキュメンタリーではあるんだけど、何と言うか、ちゃんと『映画』になってるなぁと思いました。
すごく映画的に、作品的に撮ってるような気がして。
予告編
教授の音楽活動のダイジェスト
基本的にはここ五年くらいの教授の活動とか生活とかが映し出されているんですけど、昔の映像も多く挿入されていて、教授の音楽活動の全般もダイジェスト的に観れる感じです。
昔の映像観ると、ホントにすごい音楽家で、ピアノも上手いし、すぐに名曲も書けちゃう。やっぱすごいなぁ、と。
最近の教授は音の一つ一つが面白い響きを出すし、楽器を既存の使い方ではなく、新しい使い方で新しい音を奏でてしまう。以前は音楽に対する探究心が旺盛だったけど、今は『音』に対する探究心がすごいという風に思いました。
音について
そう、この映画観てて改めて思ったのは音についてですねー。映画の中でも教授のピアノが響き渡るのですが、もちろんドキュメンタリーなのでレコーディングのように何回も録り直したり、音を作ったりというような管理された音ではありません。
練習の音だったり、曲作ってる時の音だったり。環境的にもスタジオじゃないですから、自宅でピアノ練習してる時に街の音が入ってきたりします。
ラストエンペラーの撮影中に作曲を頼まれて、調律なんて全然されていないピアノ弾いて曲作ってる時のピアノの音とか、3.11の時に津波で潮に浸かったピアノがあって、その津波ピアノを弾いてる時とか。
でもドキュメンタリーですから、そういう荒っぽい音を容赦なく記録していきます。でもそういう音がいいんですよねー。普通にCDとかに入ってる音よりも全然面白く、味があったりする。
これはトークショーの時にも話してたんですけど、レコーディングでスタジオミュージシャンに来てもらう時、最初のうちはあんまり上手くない。でも、プロだから段々上手くなっていって、最後には間違えなくなる。でもそうなると面白くなくて、最初の方の間違えているテイクを使ってしまうこともあるんだとか。
そういやあ、以前マイケル・ジャクソンの『スリラー』買った時にデモ段階のテイクが収録されてたんですけど、そっちの方が断然パワーあったりして驚いたことを覚えています。
整えられた音楽は面白くない!?
管理されて整地された音楽ってやっぱり面白くないんですね。だからライヴ盤が発売されたりする。音の緻密さ加減で行ったらライヴ盤なんてひどいもんだと思うけど、やっぱり人気があって売れてしまう。そしてやっぱり面白いし、カッコいい。
なんでかなー?と思うんですけどね。
理由はやっぱりよくわからないけど、プリミティブな美しさや力強さがあるのかなー。
練習の時なんかはレコーディングみたいに正確に弾かなくちゃいけない、なんて意識がないから思いきり弾けるし、逆にあまり弾いたことがない曲だったらまだ最初だし、ってことで逆にプレッシャーはないだろうし、そういったある種の思い切りの良さみたいなものが音に勢いを与えてるのかな。
あとは雑音とか、一見いらなく思えるものが、音に彩りというか、無意識的な飾りつけをしているとか。
まぁ、そんな感じでよくはわからないけど、映画を観てて、やっぱり教授のピアノは良い音出すなぁ、と思いました。