「心が叫びたがってるんだ。」を観てきました。あの「あの花」スタッフ制作ということで期待超大だったのですが、更に超えてきた感じですね。最高の映画でした。
ポスター見て合唱がテーマなのかな、と思ってたんですけど、TVCM見たらミュージカルがテーマだったのでびっくりしてしまいました。僕はミュージカルには少なからぬ縁があるので、僕の中で更に期待が高まったわけですが、こういう日本の学園アニメでミュージカルを真正面から描いたものって今までなかったと思うんですね(僕は知らない)。そんな感じで色々非常に楽しみでした。
で、ミュージカルがテーマということで、おそらく劇中劇があるだろうと。だから映画館の座席も一番ど真ん中の良い位置を取りました。そしてこれが奏功して、あたかも劇場の座席が映画中の座席の延長であるかのように劇中劇を観れて非常に良かったです。また入場する際、この劇中劇のパンフレットまで配られ、臨場感はバッチリでした。こういう、作品の外にまで気を配る演出が僕は非常に好きなので、そこも楽しめましたね(^^)
さて、映画が始まって数分でいきなり大人の世界だったのには焦りました(^^;; これ絶対地上波のゴールデンでは流せないですね(笑) まぁ、スタートは大人の世界に入り込んでしまった子供の悲劇、雉も鳴かずば撃たれまい、という感じですかね。実はこの映画全体も、あの昔話を下敷きにしてるんではないか、と思ってます。
そうなんです。この話は子供の頃に犯してしまった罪によって家庭を崩壊させてしまった子が思春期になり、その後どう生きるか、がテーマとなっています。主人公の女の子はもちろん、相手役(?)の男の子も似たような過去を持っています。その罪によって自我を必要以上に委縮させてしまい、言いたいこと、言うべきことを言うことができずにずっ生きざるを得なかった子がいかに叫ぶようになるか、そこが非常に見どころです。もちろん、この女の子が一人に対し、そしてまた一人に対し、とどんどん心を開いていくのですが、その感じが非常に良いですね~。この映画の魅力の大部分はこの子の頑張る感じがウエートを占めていると言っても過言ではありません。
でまた、この子が子供の頃はものすごいお喋りで明るい子だった、ていうのがまた効いている。痛々しさがより浮き出るんですね。人間なんて、その本質は大して変わらないから、今でもこの子はお喋りで楽しい要素はあるんですが、それを無理に押さえつけている。で、そういう彼女の面白いところを引き出すようにニヒルなイケメン君が付き合って支えていくんですね。その時の朴訥としたところがまたいい。しかもお互いのキャラがお互いを引き立てている。非常によく出来たキャラ立てだと思います。
そんな感じでこの二人に引っ張られるように回りを全て巻き込んでみんな成長していって、最後大団円を迎えるか、というところで更にまたもうひと押し、最大の試練を与える。そこがまた憎いですね~(^^) ただまぁ、その試練の乗り越え方がこの映画唯一、若干の不満ではあるのですが、いかに主人公に対して壁を作るか、が大事だと思うので、その点では非常に引き込まれましたねぇ~。それに、お城で王子様と二人きり、という夢が叶ったのですが、それが悪夢に終わるというのも良かったのではないかと。そう、それが逆に良かったのではないかと。それが彼女を更に、いい意味で大人にするのではないかと、思います。
この物語には主要人物は四人いるのですが、一人、逆に叫びすぎて罪を犯してしまった子がいます。それが野球部のエースなのですが、この子がめちゃめちゃ効いている! こういうアニメでは珍しい、リアルな感じでゴツい子です。こういう野球部いるよなーって感じw ある意味、最もミュージカルにそぐわないキャラなのですが、こういう子を持ってきたミスマッチ感が素晴らしい。でも、よくよく考えたらチアガールのキャプテン以外、全員そぐわないですねw 引きこもりすれすれの喋らない女の子、ニヒルなイケメン、傲慢な体育会系野球部エース。素晴らしいキャスティングですね。でも、せっかく高校野球のスター選手がミュージカルやるんだから、もっと学校中騒いでもいいような気がしましたが…。ただまぁ、このエースには校内カーストのトップに君臨する雰囲気はなかったですねぇ(笑)
まぁ、そんな感じで罪を犯した子どもが自分を取り戻していく話なのですが、はっきり言って、大人が全部悪い。もうちょっと考えろよ、とよくよく考えたら憤りを感じるくらい悪い。それを思うと大人もやはり大人なんかじゃなく、不完全な存在でしたかないことを改めて思わさせられます。大人も頑張れ! しかし、子どものお膳立てをするのもまた大人。この物語で主人公四人に対し、ミュージカルをやらせるのは担任の先生なのです。この先生、スゲエ! そしてカッコいい。ちなみに声は藤原啓治。シブい。
罪を犯し、それを償い、更なる成長をする。いつまで経ってもその繰り返しなのですね。
まさに、人生損失補填。
劇中劇のパンフレット。