「ほとりの朔子」「淵に立つ」が良かったので、すっかり好きな監督になったのが、深田晃司です。
で、その最新作が公開されるってんで、その当時、当然のごとく観に行ったのが「海を駆ける」です。
ま、でもですね、なかなかにして不可思議な映画でしたね。
またまた謎映画の森に迷い込んだのでありました。
映像美
先ず、すごく綺麗な映画でしたねぇ。
画面の切り方とかがすごく計算されている印象を持ちました。
そしてとてもスタイリッシュ。
家の感じとか家具とか、南国インドネシアのお洒落な部分を切り取った、という感じでしょうか。
絵としての映画というか。
これもまた、劇場に足を運ぶ醍醐味ですよね。
展覧会で絵を観る気分で映画を観るというか。そういう効能も映画にはあると思います。
謎映画
でも、なんだかよくわからない映画でした(^^;;
まぁ、ファンタジーということなので、ファンタジーにありがちと言えばそうかもしれないですけども…。
とにかくディーン・フジオカの役どころが謎すぎてわからない。
ただただ不可思議なだけの存在で、周りに何か影響を与える、ということもないように思えます。
で、そのディーン・フジオカが主役らしいんですが、主役には思えなかったですね。
むしろ、鶴田真由のファミリーを取り巻く若者たちの群像劇、といった趣でした。
初めのうちはインドネシアで起きた津波災害と東日本大震災をなぞらえるような、そんな話かと思ったんです。
でも、そこから微妙に浮き上がる日本人のいびつさがあぶり出されていき、全編に渡ってそのような描写が点在してきます。
ただ、物語も中盤を過ぎると、それぞれの恋愛感情を軸に行き方を模索する若者たち、という方向にシフトしていったように思います。
そして更に、そこからディーン・フジオカ扮する謎の男・ラウの不思議性がどんどんと露わになっていって、ラストの方では完全に不可解ファンタジーになってしまうのです。
ラウは人を助けもするし、理不尽に人の命も奪う(そのように受け取れる)。
そんなラウは、ひょっとしたら自然の象徴なのかもしれない、と思うとなんとなく納得はいくんですけど…。
それにしても不可思議な映画でした。
太賀スゲエ!
そんな感じで、ディーン・フジオカが演じた主役のラウはもちろん、インパクトは絶大だったわけですが、ただ役者としては、何と言っても太賀でした(現在は仲野太賀ですが、この当時は太賀でした)。
前々から良い役者だなぁ、とは思っていたのですが、この映画を観て、マジ半端ねぇな、と思いました。
もう、その実存感たるや、他の追随を許さない、って感じです。
ホント、現地人か、って思うくらい。インドネシアの現地の言葉もとても流暢に(と言って、その言語知らないんで、「日本人的には流暢に聞こえる」って感じなんですけど(^^;;)話すし、佇まいなんかも、我々がイメージする「現地で生まれ育った日本人」って感じ。
確かに話の筋はよくわからない謎映画ではあるのですが、映像美、そして太賀の演技だけでも一見の価値有り、だと個人的には思います。