劇場で観て以来、実に久々に「ヒックとドラゴン」を観ました。
というのも、なんとアマプラで「ヒックとドラゴン2」がやっていたのです!
これねー、日本で公開されてないんですよねー。そんなこと、あってはならないことなんですけどねw その「あってはならないこと」が起こってしまいましてw
もし日本で2が劇場公開されていたら間違いなく観に行ったのですが、現実はそうはならなかったので未だ未見という、あってはならない世界線に僕はいます。
そんな経緯があったので、これは2を観なくてはならない。その前に、1をもう一度観ておきたくなったので、今回の久々の視聴となったわけです。
それに、新たに実写版が折しもこの日公開ということだったし、タイミングとしても良かったような気もします。
- 予告編
- 15年ぶりの視聴!
- ️ヒック親子
- ヒックはめんどくさい
- ヒックは魅力的な主人公
- ヒックは善意の異端児
- 善意の悪役
- ヒックとトゥースは一蓮托生になってしまった
- ️デザインや絵の魅力
- セリフが洒脱
予告編
15年ぶりの視聴!
「ヒックとドラゴン」は2010年の公開以来だから…15年ぶり?
いやー、時の経つのは早いなぁ。びっくりですね! まぁ、それはいいとして。
でも、大体内容は覚えてましたね。それくらい覚えやすい、わかりやすいストーリーと言えばそうなのかもしれないし、またインパクトのあるエピソードも多かったということかもしれません。
でも、そういう、いわば単純な構成の中に様々なものが詰め込まれていたように思います。
最初観に行った時は、ドラゴンということで観に行ったと思うんですけど(もはやウロ覚え)、何と言っても、この作品の要は主人公ヒックでしょう。
ドラゴンも大事だけど、それ以上に大事なのはヒックです。
もう、ヒックが全てと言って良い。ヒックに始まり、ヒックに終わり、物語中の全ての要素はヒックに絡まっています。まさに主役ですね。
️ヒック親子
というわけでヒックなんですけども、父親はなんとバイキングの長! すごいですねぇ。そういった意味ではエリートっちゃあエリートなんですよね。
ちなみにバイキングというだけでも荒くれ者という感じがしますが、この作品のバイキングはそれだけじゃありません。なんと、竜を肉弾戦で討伐するという…。
どんだけだよ!w
基本的には剣や棍棒などの武器を使うのですが、場合によっては素手でブン殴ったり取り押さえたりもします。すごいですねぇー。
そういうバイキングの長を父親に持つわけですよ、このヒック君は。まー、それだけでも大変。
で、そんな父親との関係はと言いますと、どうもあんまりうまくいっていない様子。
母親はどうも他界しているらしいのですが、そのことが父親との関係性がギクシャクしている根本原因となっていることが伺われます。
やはり、女二人親子に比べて、男二人親子というのは圧倒的に距離感を掴むのが下手な感じがします。他の映画でもそこらへんがテーマとなるものも少なくないくらい、そのことは割とよくある話で、深刻なものなのでしょう。
逆にそういったところ、コミュニケーション能力に長けているのはやはり女性で、男はどうもそこらへんが下手でぎごちない。
ただ、一度距離感を掴んでしまえば、より強固に繋がることができるのは男のような気もします。本作でも、ヒックの父親・ストイックと、ヒックの鍛冶屋の師匠でもあり、いわば育ての親でもあるゲップは非常に強い絆で結ばれていました。
あと、やっぱり母親がいると、うまくいかない父子関係でも、お互いの間を取り持ってくれる潤滑油のような役割も担ってくれそうですしね。そういうのも、女親はうまそうな気がします。
ヒックはめんどくさい
じゃあ、そんな荒くれ者しかいないバイキング、その長の一人息子ヒックはどんな奴かというと、小さくて細くてひ弱。加えて色々めんどくさい。
目下、ストイックに留まらず、島全体の悩みの種ですらあります。そのめんどくささは、誰もが尻込みする竜の巣の探索に、行かない奴はヒックの面倒を見ろ、とストイックが言った瞬間に志望者が続出するというくらいにめんどくさいらしい。
というのも、このヒック、細くて小さくて弱いくせに、人一倍やる気満々で、竜を倒して一人前のバイキングになることを目指しているのです。
それだけならまぁ良いのかもしれませんが、そこに留まらず、ヒックが何かやろうとすると必ず大惨事を引き起こすという、さすがバイキングの長の長兄だな、と思わせること請け合い。
要するに、バイキング的には良いところが何にもない実に困ったちゃんなのです。ヒックに注意をする時、そこを直せ、と言ってヒック全体を見て言うくらいにひどいもんなのです。
ヒックは魅力的な主人公
じゃあそんなヒックは全く魅力のない主人公失格の主人公なのかというと、これがまた魅力全開、魅力の塊なのです。
先ず、小さくて細くてひ弱なところが魅力。つまりギャップです。そんなヒックがバイキングで、しかもその長の息子であるわけです。このギャップ感が実に主人公です。
加えてやる気満々です。大体こういうキャラ設定の場合、往々にしてそんな荒くれ者には反発を覚えて内心バカにするものですが、ヒックの場合はそんな自分にコンプレックスを持ち、且つそれを克服しようと奮闘しています。
むしろ、みんなの仲間になろうと必死なんです。
そして、全然心が折れない。そういったところはストイックの血を濃厚に受け継いでいる感じがします。さすが親子です。そういう血の繋がりまで考えたようなキャラ設定もナイスですよね。
更に、実はここが一番の魅力だと思うのですが、やっぱり頭が良い。
器用だし、研究熱心だし、粘り強い。新しい武器や道具の開発が大得意なんです。
そういったところ、やはり思い出すのは「小さなバイキング ビッケ」ですよね。
ヒックとビッケ。名前も似ているw
ただ、ビッケは最初からみんなから愛されまくっていたと思うのですが(ウロ覚え)、ヒックはお荷物です。
で、ここにドラマが生まれるんですよねー。そこでへこたれ、やさぐれてもドラマになるし、そこを何とか克服しようと頑張るのもドラマになる。ヒックは後者ですね。
ヒックは善意の異端児
そして、最も危険と言われ、謎に包まれた竜であるナイトフューリーを、いきなり冒頭のエピソードで見事仕留めてしまいます。
その後も、左の尾羽を失ってしまったナイトフューリー(その後、ヒックにトゥースと名づけられます。歯が特徴的だからか?)の、その左側を作ってあげたり、トゥースに乗るための装置を作ったりと、彼の持つテクノロジーは、少なくともこの島では圧倒的です。
また、トゥースと仲良くなった後、竜の生態に興味を持ち、トゥースを研究材料(!)として、色々と調査しまくるのです。
その結果導き出されたのが、竜は人間の敵ではないということでした。
これはまさに革命でしょう。この島では地動説の導入くらい、歴史の転換点と言っていいのではないでしょうか。
もちろん、そんなことはなかなか受け入れてもらえないのですが、そこのぶつかり合いもまたドラマです。
そんな感じで、ヒックが動けばそこにはドラマが生じるのです。
なぜなら彼は、この島では決定的な異端であるからだと思います。
そしてその異端は皆に溶け込もう、皆の利益になることをやろう、という善意で動く異端なのです。
善意の悪役
また、善意と言えば、登場人物は皆、良かれと思って行動しています。
主にヒックがぶつかる相手、壁として設定されているのは父親であるストイックです。基本的には島の人間全員がヒックの「敵」と言ってもいいのですが、その象徴として機能しているのがストイックでしょう。
そのストイックにしても、彼がそれまで信じてきた「常識」や慣習、そして彼の経験に基づいて、良かれと思ってヒックと接してきました。
ところがそれが、新しい価値観を持ち、ストイックとは真逆の「小さくて弱い」という特性を持ったヒックには壁にしかなっていません。
逆に言うと、壁ではあるが、悪意はないんですね。そこが、観ていてもどかしくもあり、憎らしい登場人物が出てくることによる嫌な気分にならないのが、また良いようにも思います。もちろん、ひたすら憎らしい登場人物だけが持つ魅力もあるのですが。
また、島の人全員もまた、基本的には悪意はありませんでした(子供たちは、当初はヒックに対して悪意を持っていたが)。
ヒックとトゥースは一蓮托生になってしまった
そしてもちろん、トゥースとの関係性もまたこの作品の大きな魅力の一つです。むしろ、基本的にはそこがメインです。
しかしながら、トゥースが大怪我を負ったのはヒックのせいなんですよね。もちろん、その時はヒックはトゥースを討ち取る気満々なわけだから、そりゃそうなんですけど。
おそらく、トゥースの方では自分の怪我はヒックの攻撃によるものだということは気づいていないんじゃないですかね。だから、トゥースはヒックを許したのかもしれない。
そしてそのことに、ヒックは大きな負い目を感じたのではないでしょうか。だから、ヒックはトゥースにとどめを刺すことができなかったのかもしれません。
もちろん、ヒックの生来の優しさがあったことは大きな要因でしょう。しかし、その負い目が、ヒックをしてとどめを刺させなかったのではないでしょうか。
そしてそれは、なぜヒックがラストで左足を失わなくてはならなかったのか、に繋がってくると思います。
彼は「罪」を犯しました。物語では罪を犯した人間は必ず裁きを受けなくてはなりません。それが、ヒックにとっては左足を失うことだったのではないでしょうか。
飛べなくなったトゥースを飛べるようになったのは、ヒックのおかげではあります。しかし、逆に言うと、それはヒックなしでは飛ぶことができないという、トゥースから自由を奪ったことでもあるのです。
だからこそ二人は一蓮托生の強力な相棒となったのですが、そうなった原因はヒックの「罪」であるのです。
だとしたら、ヒックは裁きを受けなくてはならない。
しかしながら、彼の失った左足は、より強力にトゥースの左尾羽の仕掛けと繋がることになりました。
つまり、ヒックにしてもトゥースがいなければ高速に移動することができなくなってしまったわけです。ここに来て、二人はいよいよ強力に、それこそ一蓮托生になりました。なってしまった、と言った方が正確かもしれない。
お互いがお互いなしでは生きていけなくなってしまったんですね。ここに相棒としての完成形と共に、何か業のようなものも感じてしまいます。
️デザインや絵の魅力
ちなみに、このトゥース、見た目が非常に「モンスターハンター」に出てくるナルガクルガに似ています。制作陣は「モンスターハンター」をやってるのではないでしょうか。それくらい、似てますねー。
他にも個性的な竜がたくさん出てきて、その竜たちがこの作品の最大の魅力と言ってもいいのですが、実に皆独創的で個性的。
片方の首でガスを吐き、片方の首で火を吐き、着火することでより強力な火炎を吹く双頭の竜や、蜂のように羽ばたいてホバリングする竜など、大きいのから小さいのまで、実に様々で面白い。
また、非常に映画的な美しい絵が印象的です。
それは、夕日を背に飛ぶトゥースなどのわかりやすいものももちろんあれば、バイキングの島の感じもすごく良い。素晴らしい場です。
そういった絵の中を3DCGの登場人物たちや竜たちが、実に説得力のある動きで魅せます。
実写か?と思わせるほどですが、やりますね、実写版w アニメがほとんど実写だからやる意味あんのか?と正直思ってしまいますがw ま、いいやそれは。
その一方で、きちんとアニメならではのマンガ的な動きも入れてくれるのがニクいですねー。アニメの魅力を存分にわかっている感じ。
あ、そうなると、やっぱ実写やる意味ありますね。
セリフが洒脱
あと、セリフ回しが非常に洒脱でお洒落。僕が観たのは吹き替え版なのですが、多分翻訳の人のセンスも良いのではないでしょうか。
全編、特にヒックのセリフ回しが実に良いんですよねー。なんか、洒落が利いてるというか、皮肉が利いてるというか、それでいてどこかチャラくて、良い感じなんですよねー。
特に全体的に気に入ったのは、セリフが表面通りのものではないものが多いこと。かなり皮肉を利かせたり、それが後から別の意味を持って再使用されていたり、とにかく上手い。
例えば、ゲップやストイックが否定の意味を込めてヒックを見つめて何か言った後、ヒックが「僕の全部を見て言った!」というセリフがあるのですが、これがラストで全く逆の意味になるんですね。誇りと愛情をもってヒックの全てを見て言うようになるんです。
この感じがまた…、もう、最っ高! 良かったなぁ、ヒック、認められて、とも思うし、ストイックやゲップの愛情も、かえって強く感じさせてくれます。
またこれもラストシーンですが、ヒックの義足を作ったのは、いわば義足の先輩であるゲップだったんですね。で、「ヒックっぽくオシャレに作ってみたが、どうだ?」とゲップがヒックに問うんです。するとヒック、「ちょっと改良させてもらうよ」と返すんです。
この、二人の性格や関係性を端的に表すブラックなジョークをラストに持ってくるところもまたニクい。
あと、セリフではなく表情で伝える、なんてなことも結構ありましたね。例えば、ヒックが実はドラゴンと仲が良いことがバレてしまうんですけど、それはバイキングのそれまでの常識からすると非常に危険なことなんですよね。それで父親のストイックと仲違いしてしまうんですけども、そのストイックがヒックと別れて外に出た時の表情がね、なんとも言えず、悲しいような、残念なような、それまで怒りまくっていたのと裏腹に、すごいションボリな感じなんですよね。
そういうのって、感情じゃないですか。自分でも多分どう感じていいかわからないというか、非常に戸惑っていると思うんですよね。それって、セリフじゃ言えないし、多分ストイックとしても言葉が出てこないと思うんです。そういうところを表情で表現しているんですよね。
だから、そういうところの作画というか、表情の動かし方というか、すごいと思います。セリフで表現しない方が効果的なことがあるかもしれないけど、そういう時ってものすごく難易度が高いんですよね。そういうのができるアニメーターを抱えてるっていうのが、やっぱドリームワークスすげえな、って思います。
他にも、関係性で言うと、トゥースに警戒心を抱くアスティが背中に乗ると、アスティにトゥースを気に入ってもらいたいヒックの意図とは裏腹にアクロバティックな飛行を決めるところが何とも逆に可愛らしいですよねーw
多分、自分とヒックの間に入る邪魔者、つまり嫉妬心があったんじゃないですかねw いや可愛い。
他にも、とにかく登場人物全員のキャラが立ちまくっていて、一人ひとりを見ているだけで飽きない。
やはり作品の魅力はイコールキャラクターの魅力であることもまた再確認させられます。
とにかく、全編見どころしかない素晴らしい映画だと、改めて思いました。
