冬目景が好きだ。
何が好きか?
色々あるけど、「ベタ」なところに尽きるかもわかりませんね。雰囲気勝負というか。
なんつーかねぇ、設定とかかなりベタなんですよ。例えば、「羊のうた」っていうマンガがあるんですけど、それは「吸血鬼(ちょっと違うけど)」の一族で、人の血を吸うことに対して葛藤する、まだ若い姉と弟の話なんですけど。ね? ベタでしょ? でもねー、これがいいんですねー。古き良きベタさ加減というか。もう、お姉さんなんか高校生だけど、普段家では着物ですよ。弟はもちろん学生服です。着物を着る必然性はない気もするけど、そういう雰囲気作りが大事なんです。
それで、ちょっと前に買った「幻影博覧会」なんですけど、これもやっぱり設定はベタ。先ず、舞台が大正時代半ばの帝都東京。主人公は私立探偵とその助手の女の子。で、この女の子というのが訳ありで、まだ中学高校生くらいなのに、学校には行かずに事務所で働いてて、「相棒」と称する大型犬を飼っていて、やたら色んなこと知ってて、素性もよくわからない。ね? ベタでしょ? でも、やっぱりこれがいいんだな。もう、なんか俺の心の琴線に触れまくってる! こういうベタな感じがやっぱ俺スゲー好きだ! もっとみんな書けよ、こーゆーの!
でも、ベタなんだけど、読んでるこっちが恥ずかしいってのはないんですね。「逆に面白い」とかではないんです。本気で面白い。
多分、絵の魅力というのもありますね。人物なんかは割に最近のマンガの感じなんだけど、タッチというか、全体的に劇画調なんですね。背景の陰や模様なんかもほとんど手で描いてるし、派手なトーンなんかほとんど使ってない。物語と絵がすごく合ってる感じがします。もし、この話が最近よくあるアニメっぽい感じの絵で描かれてたら、多分読まないと思います。やっぱ、絵って大事っスよね。
やっぱり、絵も含めてそうだけど、雰囲気作りって絶対大事だと思う。このマンガもこの女の子の正体は何だろうとか、ストーリーも気になるし、人物のキャラもちゃんと描けてて、だから面白いんだと思うけど、それらも雰囲気というか、場の設定や世界観があってのことだと思う。小説って文体が大事だって言われることがよくあるけど、それと同じことだと思う。雰囲気で読む、というのは絶対にあると思う。