去年、公開の情報を仕入れてからすごく楽しみにしていたのが細野晴臣のドキュメンタリー映画「NO SMOKING」でした。まだやってるのかな? ロングランになってるみたいですね。
去年は細野さんのデビュー50周年の年で、個展とか、ライヴとか、非常に精力的だったのですが、こうしたドキュメンタリー映画はファンにとってはすごく嬉しいし、何より細野さんですから、日本の音楽界にとっても貴重な記録だとも思います。
細野さんの幼少の頃の写真や漫画がファン垂涎
先ず、ナレーションが豪華。星野源です!
星野源みたいな人が売れてるってのが先ず嬉しい状況なのですが(日本の音楽もまだ捨てたもんじゃない)、その星野源が細野さんを尊敬してやまないってのがわかってる感があって、やはり一流は一流を知るのだなぁ、と改めて思います。
この映画で語られるエピソードの多くはほとんど知っているものばかりでしたが、子供時代の貴重な写真が多く、また当時の映像も多かったですね。やはりこうして映像で観ると実感というんですかね、本とか雑誌で見るのとは全然違いますね。見応えがありました。
また、細野さんの漫画も映されてたんですけど、それがまたすごく上手くてびっくりしました! 漫画家になりたかったことは知ってたんですけど、あんなに上手いとは思わなかったですねぇ。
ちなみに大学の頃は、あの「三丁目の夕日」の作者・西岸良平氏と共同で同人誌を描いていたそうです。マジで細野さん、漫画家にもなれたんじゃないかなぁ。
また途中、閑話休題的に「あまがみ蛙」という細野さんの夢を絵本にしたようなイラストが出てきて、朗読は細野さん自身だったんですけども、やっぱ細野さんいい声ですね。最近はCMなどのナレーションも多く手がけていますが、あの低い、歌うような台詞回しは本当に聞いていて気持ちいいです。
煙草吸いまくり
「NO SMOKING」と言いながら、案の定細野さんは煙草を吸いまくってました(^^;; 細野さん曰く、煙草と音楽創作は密接に繋がっている、のだそう。煙草の煙のくゆらせ加減が音楽に似ているというんです。なんとなくわかるような気がしますけどね。……具体的には説明できませんがw
そういえばシャーマンや占い師は煙を立てることが多いイメージですが、音楽も大昔は神との交信ていう役割を果たしていたと思うんです。だとすると、やっぱり煙と音楽は、何か通じるところがあるようにも思いますね。
音楽主義
また印象に残っていた言葉として、売れるのを気にするのは商業主義で、音楽主義は違う、と細野さんは言ってたんです。
元々音楽はそんなに売れるものではなくて、細々と、でも着実に世にあったものなんだと思います。それを無理矢理売ろうとしたもんだから(日本では特に90年代)、農薬たくさん使って土壌をダメにしたみたいに、音楽も土壌が全部ダメになってしまって、今のような惨状になったのかな、とその言葉を聞いて思いましたねぇ。
ただそれが、今はネットの発達で、各々が勝手に配信できて、商業主義に陥らずに個人的な音楽主義で発表できる時代になって、謂わば共同体に帰って行ってると思うんです。
十年くらい前ですかね、いずれ音楽は共同体に帰る、って坂本龍一は何かのインタビューで答えてて、それが今、現実になろうとしているのかもしれません。
音楽好きがいれば大丈夫
あと印象的な言葉としては、音楽好きな人はいつの世にもどこの世界にもいて、そういう人たちは昔の作品も聴く、というのがありました。音楽好きな人がいれば大丈夫、とも。
そういえば、最近は崎山蒼志とかKEEPONとかSASUKEとか、十代の非常に才気溢れすぎたアーティストが出てきて、日本の音楽界の将来はビッカビカに輝いていますが、崎山蒼志くんがKOJI2000知ってて、カバーしてたのはビビった。なんでもテイ・トウワが好きで、ネットで調べたんだそう。今はそうやって、ネットでいくらでも調べられるから、音楽好きな子はバンバン深みを増していけるんですよね。
アメリカ公演のシーンでも、若いお客さんの姿が目立っていました。日本では星野源の影響も大きいとは思いますが、海外でも若いファンが多いんですね。
あと、その時々で使う楽器やテクノロジーが違うので、その時ならではの音になるけど、一生懸命作ったものは今聞いても面白い、とも言っていたんですけど、そういう、一生懸命作るところが、若い人が聴いてくれることの原動力なのかな、と。
ビートルズにしろ、良い音楽はいつまでも、いつの世も、若い人が聴いてくれる。
「戦後に生まれて良かった」
また、映画の冒頭で特に印象深い言葉があって、細野さんが「こう、夜寝ていると、戦後に生まれて本当に良かった、って思ってた」と言っていたんですね。
細野さんが生まれたのは戦後間もない東京で、まだ空襲の爪痕が生々しく残っている中で育ったんです。
だからそれは、子供の頃に本当に思っていた実感なんでしょうね。なんだか、今の時代への警鐘にも聞こえます。