子供の頃からずーっと観たかった「地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン」を先日ようやく観ました。
もう、とにかくね、ガイガンがカッコいいので、やっぱりその点をすごく期待していました。
ところが、と言いましょうか、やっぱり、と言いましょうか、映画は正直微妙なものでしたねぇ。
でも、そこはまぁ、言っちゃ悪いですけど想定内ではあったんですよね。
問題はですね、そのガイガンです。
ガイガンの劇中での扱いがですねー、非常に微妙なものだったんですねー(「非常」なのか「微妙」なのか)。
あ、ひし美ゆり子は相変わらず可愛かったです。
- 予告編
- ガイガン、弱っえー
- キングギドラ、強っえー
- ガイガンはメカゴジラのプロトタイプ
- アンギラス、可哀そう…
- スターになり損ねた怪獣
- 映画自体は微妙ながら設定は面白い
- 割とスタイリッシュ
- 時間と予算
予告編
ガイガン、弱っえー
どこらへんが微妙だったかというと、まず弱いw
例えば、自衛隊のメーサー銃(だったと思う)を顔面に受けると、スゴスゴと木の後ろに隠れてしまいました。
弱い!
しかも四つん這いで。
弱い!
四つん這いですよ! 四つん這い! これヒドいでしょ! あのルックスで四つん這いですよ。ギャップがあっても萌えはしねぇよ、そんなギャップ!
いやー、ひどい。
あと、ガイガンはゴジラに対しても苦しめるシーンはあったものの、接近戦では押され気味だったし、最後の方はゴジラに馬乗りになられてボコボコにされていました。
とにかく弱かったんですね。それは正直ガッカリでした。まぁ、後述しますが、これも歴史の遠近法なんでしょうけど。
ガイガンはせっかくの新怪獣だし、しかもカッコいいデザインに仕上がっていて、とても強そうなのに、全然おいしくなかったです。もうちょっと「スターを作る」という意識があっても良かったように思いました。
キングギドラ、強っえー
逆にキングギドラの強さばかりが目立ちましたねー。
さっきのメーサー銃の件につきましても、キングギドラは涼しい顔で受けて、逆に引力光線で応戦。あっという間に撃破してしまいました。
その場面の他にも、とにかく引力光線吐きまくり! それゆえ、撮影としては火薬の量が半端なく、大変だったと思いますw
まぁ、それはそれとして、キングギドラへの製作陣の気の使いようというか何というか、そういうのが滲み出ていた感じですかねぇ。一体で他の三匹を相手にしても勝ちそうな勢いでしたもん。やはり飛び道具は強いですね。
一方のゴジラも放射能火炎という飛び道具は持っているはずなのですが、こちらはほとんど使わず。もっと平成ゴジラみたいに使っても良いのでは、とも思いました。
なんでそこまでキングギドラを大事にしなくちゃいけないのか、そこが正直よくわからないですねー。確かにスター怪獣なので、わからなくもないですが、それにしてもちょっと持ち上げすぎじゃないですかね。
ガイガンはメカゴジラのプロトタイプ
思うに、ガイガンはスターになりそこねた不憫な怪獣なのかもしれません。
原因としては製作陣の過小評価があったのではないでしょうか。
当時としては極めて斬新なデザインが仇となったのかもしれません。製作陣に「ちょっとやりすぎなデザインじゃない?」と思われてしまったかもしれません。
ただ一つ思ったのは、ガイガンとは、後のスター怪獣であるメカゴジラへの布石となったのではないでしょうか。
まずサイボーグ怪獣というのが、ロボット怪獣の布石になったことは十分に考えられるし、何よりゴジラを圧倒したゴジラタワーの存在もまた、ゴジラのドッペルゲンガーたるメカゴジラのヒントになったのかもしれません。
「ゴジラ対メカゴジラ」では実際偽ゴジラが出てくるし、ゴジラはメカゴジラの攻撃に圧倒されます。また、アンギラスが冒頭に登場する点も本作を彷彿とさせます。メカを搭載した怪獣、偽のゴジラ、そしてアンギラス。奇妙に符合していると思うのです。
アンギラス、可哀そう…
それにしても、今作のアンギラスは可哀そうすぎる。
そもそもゴジラ初のライバル怪獣として登場し、世界初の怪獣プロレスを展開した怪獣なのに、段々とその地位は下降線を辿り、遂には今作で完全にゴジラの舎弟となってしまいました。
やたらゴジラに命令されるし、ガイガン・キングギドラ組との対決では全く見せ場なく、良いところなく終わっています。
劇中、親分のゴジラに「偵察にゆけ」と命令され、嬉々として日本に上陸しようとしますが、水際で自衛隊に返り討ちの憂き目に遭ってしまいます(なんでだ? 本作では正義の怪獣じゃないの?)。まるで役に立っていない。
そもそも、偵察に行く意味あったのか? 偵察ならラドンの方が良かったのでは?
おそらく、パワーバランスで言うと、ラドンはゴジラと対等だから命令を聞いてもらえなかったのでしょう。だから仕方なくアンギラスに行かせたのかもしれません。可哀そうすぎる。
おまけにガイガンの胸の回転カッターで血まみれにされるし、ついでにいえば次の出演作である「ゴジラ対メカゴジラ」では口を裂かれてしまう。踏んだり蹴ったりです。
スターになり損ねた怪獣
今作では下手にキングギドラを登場させてしまったためにガイガンの存在が薄れてしまっていたように思いました。
その反省を踏まえたか、メカゴジラは一体だけで登場。キングシーサーというゲスト怪獣も出てはくるものの、こちらは完全にメカゴジラの引き立て役。メカゴジラはガイガンのようにキングギドラに食われることはありませんでした。
こちらはちゃんとスターとして扱おう、という意図が見えるようで、事実、その後はキングギドラやモスラ同様、全てのゴジラシリーズに登場するスター怪獣となったのでした。
そんな感じでそのカッコ良さに比べて不遇なガイガンですが、ただガイガンとキングギドラの並びはめちゃくちゃカッコよかったです。
並びだけで見ると、ガイガンの方がむしろキングギドラの兄貴分というか、強そうにすら見えます。そういったヴィジュアルの強さからか、後年、ゴジラファンからはガイガンは圧倒的に支持されるようになります。
それ故に、今作の扱いはもったいなかったぁー…。ちゃんとガイガンを強く、おいしく描けば、キングギドラ、メカゴジラに並ぶスター怪獣になれたはずなのに。本当にもったいない。
映画自体は微妙ながら設定は面白い
で、映画の方はというと、これまた微妙でした。
いちいち上げていったらキリがないくらい謎展開のオンパレード。ただ、色々と仕掛けは良かったとは思います。
まず、敵のMハンター星雲人の出自。元々彼らの住んでいた星は地球と酷似していて、人間と同じような生命体が暮らし、人間と同じように文明を築き発展し、そして滅びていったといいます。Mハンター星雲人曰く、地球の人間も似たような道筋をたどっていってるらしい。ここらへんは、ゴジラシリーズに通底する科学批判の精神が見えていて面白いですね。
また、Mハンター星雲人は主人公の漫画家にやたらと「世界平和」と言うのですが、主人公は眉を顰めるんですね。平和の名の下に武力を行使することは、歴史上過去何度もあったことだと思います。科学が行き過ぎると平和ではなくなる、と登場人物も語っていました。そういった批判精神をこの作品は全編にわたって纏っているのも面白い点だと思います。
更に、Mハンター星では、その人間が滅びた後、もっと生命力の強い種族が人間に変わって文明を築き、反映したと言います。それが地球に攻めてきたMハンター星雲人なのですが、その正体は、なんとゴキブリだったんですねー。
実は似たような設定は手塚治虫も「火の鳥」で描いていました。「火の鳥」の場合はそれはナメクジだったんですけどね。ひょっとしたら参考にしていたかもわかりませんね。
そんな栄えた生命体だったのですが、星の寿命というものがあり、やむなく故郷の星を脱出し、似たような星の地球に攻めてきたのだと言います。この設定は結構面白いと思うんですよね。
まぁ、個人的に微妙だったのは、最後にゴジラタワーが爆破された時にMハンター星雲人が滅びていくのですが、その映像がですねー、普通にゴキブリを使ってるんですよねw
ウチのモニターでもなかなかだったのに、裏返ったゴキブリが蠢く様が、公開当時は当然のことながら映画館の大スクリーンに映し出されたわけじゃないですかw そのことを思うと、子供の付き添いで来たマダムたちからは悲鳴が上がったのではないでしょうか。
割とスタイリッシュ
また、色々と小道具がスタイリッシュでしたねぇ。
まずハンター星雲人の制服がですね、これがなかなか良くて。鮮やかなオレンジを基調としたもので、結構お洒落な印象を受けました。オレンジ色の学ランというのもなんか、それはそれでスペーシーな印象を受けました。この発想は素晴らしかったと思います。
他にも、椅子などの調度品やゴジラタワーの基地内、主人公の漫画家の自宅などなど、いちいちお洒落感があるんですよねー。
あと、登場人物の性格付けやヒッピー風ファッションなんかもなかなか良くて、やはり時代背景を色濃く反映してか、70年代のドタバタ探偵活劇とでもいった感じで、その雰囲気はなかなか良かったと思うし、僕は好きでした。
時間と予算
しかしながら、全体としては正直微妙な出来となってしまっていることは否めない感じですかねー。
そもそも怪獣シーンのみならず、ところどころ挿入される過去作からの流用映像のオンパレードはいただけないかなぁ。
ただそのことから推察されるのは、おそらく時間も予算もかなり限られていたのではないでしょうか。だから、もっと時間と予算に余裕があれば、結構ちゃんとしたSF怪獣映画になったかもしれません。
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