「ゴジラ-1.0」の超絶ヒットを受けて(いや本当に良い映画だった)、アマプラで遂に、ゴジラ映画が解放されましたぁー!(パチパチ)
いやー、…待ってたゼェ!
そしてこれを機に、ずっと観たかったゴジラ映画を観ることができました。ありがとぅー!
ようやく、「怪獣島の決戦 ゴジラの息子」を観ることができました! えぇ。
予告編
対象年齢問題
先ず最初にびっくりしたのはですねー、なんと! 対象年齢は13以上!
どこに向けた作品だ?! 13歳以下に見せなくてどうする?! 完全に子供向けに作られた作品じゃねぇか!
だって、「ゴジラの息子」ですよ? ゴジラに子供を作らせるってことは、コア層である子供に自分を投影させるための「ゴジラの息子」なわけじゃないですか。対象年齢13歳以上ってことは、そのコア層を外すってっことですからね? 何考えてンだア?
なんというか、「こどものために」という製作陣の気持ちを踏みにじりまくってる感じがするのですが。
何なんですかねー、煙草吸ったりするシーンがあるからですかねー? それでも、大人が煙草吸う分には法を犯してるわけではないですからねー。どこいらへんが13歳以下に見せてはいけないのか皆目見当がつきません。
最近の、そういうコンプラというか、その手の類のものには疑問しか感じませんね。
いやー、たまげた。
ゴジラ対ウルトラマン!?
で、まぁ、それはさておき、さして期待もせずに見始めたのですが(←)、いきなり嵐の中の飛行機の機長役が黒部進! いきなりハヤタ隊員かよ!
しかも、いきなりのゴジラ登場!
嵐の海を進むゴジラを飛行機目線の俯瞰から見せる構図はなかなか良いし、いきなり出し惜しみせずにゴジラを登場させるのもナイス!
そしてもちろん、何より良いのは黒部進ですよ。これにはびっくりしました。更に、彼の登場に喜んだのも束の間、ゴジラと対峙させるという粋な計らい。これはある意味でのゴジラ対ウルトラマンじゃあないですか! まさにジラース以来の邂逅!
豪華出演陣
そして出演者のテロップになるのですが、これがまたビッグネームのオンパレード! さすがは東宝のドル箱映画といったところでしょう。
「キングコング対ゴジラ」の高島忠夫がここでも登場。更には平田昭彦、佐原健二、土屋嘉男のほぼレギュラー陣に加え、前田美波里には驚きました。ゴジラ映画出てたんだ…! しかも「ゴジラの息子」…。更に、「ウルトラQ」で佐原健二の助手役だった西條康彦まで出てました。
登場人物という点では、多分主役的ポジションであるところの新聞記者の役名が「真城伍郎」というのも少し驚きました。「シンゴジラ」で、おそらくはゴジラを作り出した牧五郎博士と同じ読みの名前です。庵野秀明のことだから、おそらくはここから取ったのでしょう。
不満点や疑問点
物語的にはですね、まぁ、基本的にはドラマはあまりありませんw
濃く作ろうと思えば作れるシチュエーションは結構あったと思うのですが、いずれも深掘りはせず。
それに、設定的にも作りがすごく雑な印象を受けてしまいました。日本人であるはずのサエコがなぜカタコトの日本語なのか、なぜエキゾチックな面立ちの前田美波里なのか。最初は現地人の生き残りとかそういう感じかと思ってしまいました。
まぁ、南国を舞台とした映画なので、ここはそれっぽい雰囲気をブチ込もうゼ、ってことだったのでしょう。
あとは土屋嘉男が、なんだか困った人だなぁ、みたいな描かれ方をしていたのですが、むしろ、どちらかと言えば被害者だったような気がします。
というのも、平田昭彦が「無線は壊れた」と言って嘘ついて実験を続行させたり、どちらかと言えば土屋嘉男以外の連中が狂人チームだったように思います。マッドサイエンティスト軍団というか。
それにしても、土屋嘉男の存在感は半端ないですね。なんというか、役者顔って感じ。
あと、怪獣パートも、特にゴジラ親子の擬人化描写が多かったのはやはりマイナス点。
まぁ、それはそこを狙った映画なので仕方がないのですが…。ただ、子供の動物(怪獣だけど)が好奇心旺盛で人懐っこいというのは、自然界でも割とあるあるだと思うので、そこの設定は別に不自然ではないのかもしれません。
日常描写は丁寧
そんな感じで不満点は多いのですが、そこはやはりまだまだ初期の怪獣映画なので、日常描写は丁寧だし、金もかかっていましたねー。
ゾルゲル島の基地の描写も生活感に溢れているし、食事シーンも良かったと思います。事あるごとに登場人物は、バャリースでしょうか、ロング缶のオレンジジュースがズラッと並んでいて、それを飲んでたのが印象的でした。
国連から派遣されたチームだからか、贅沢ですねw 当時、映画を観た子供達は羨ましがったでしょうねー!
そういう日常をしっかり描くと、それが破壊される怖さ、怪獣の強さ大きさを観る者に伝えることができるんですよね。逆にそれをやらないと、ただの仮装大会になってしまいます。
特撮シーンは珠玉
あと、特撮シーンは、やはり当時としてはかなり質が高かったと思います。
ゴジラが海から島に上陸するシーンは、エメゴジが参考にしたんじゃないか、というくらい似てたし迫力あったし、よく出来ていたと思います。
また、気象実験の失敗で島に大雨が降るシーンも、当時としては最高の出来だったのではないでしょうか。
怪獣を撮る時にしても、ほとんどが人間目線で下から煽って撮っていたし、それはミニラにしてもそうでした。
それに、何と言ってもカマキラスやクモンガの操演が秀逸すぎた! たまにピアノ線が見えてしまうのはご愛嬌として(今の技術で消すわけにはいかないのだろうか?)、その技術は今見てもすごいし、見応えがある! デザインや造形も良い。
ブサイクゴジラとミニラの存在感
造形といえば、本作のゴジラが歴代最ブサイクとの評もありますが、こうして映画を観てみると、それがこの映画にはかえって良かった気がします。
異形感があるというか、不気味なんですよねー。「怪獣」っていう感じがします。
それはミニラにも言える事で、実はこの映画ではミニラの存在がものすごかった。
この映画は、さっきも言ったようにドラマという点ではあんまりない感じなんですけど、設定というか、そこは割と、少なくとも当時の映画としてはかなりガチなSF映画なんですよね。来たる食糧危機に備えた国連主導の極秘実験というテーマで。
そういった、設定的には割と本格的なSFだし、出てくる怪獣の不気味で迫力があって造形も良い。
でも、このミニラが全部持ってっちゃってるんですよね。なんとなく、ミニラが出てくることで全体の雰囲気もそっちに持っていかれてしまう。この映画におけるミニラの存在感はゴジラ以上だったようにも思います。
さすがはタイトルロールと言ったところでしょうか。だって「ゴジラの息子」とは、つまりミニラですからね。
反核としてのミニラ
それから、ミニラは、当たり前ですが、ゴジラの子供です。ちなみにオスかメスかはわからないので、正直息子かどうかはわかりません。
劇中ではゴジラを称して「教育パパ」と言っていましたが、ゴジラにしてもオスかメスかはわかりません。ちなみに映画中ではミニラという呼称はなく、「ゴジラの子ども」と呼ばれていました。
そしてそのミニラですが、肌がツルンとしているのです。
元々、ゴジラは第1作では山根博士から「古代の両生類」と説明されていました。両生類はカエルやイモリを思い浮かべればわかるように、肌がツルンとしています。ミニラも同じです。
ところがゴジラはゴツゴツしています。あれは、水爆実験で負わされた火傷の跡というのが公式設定です。
だから、卵から生まれたばかりのミニラは、実はゴジラがかつて持っていた本来の肌なのです。
ミニラとの対比において、ゴジラが負った傷というのが浮き彫りになる、という仕掛けです。ミニラとは、ゴジラの横にいるだけで反核の象徴となる存在、とも言えると思います。それをこの映画を観て気付いたのでした。
だから、ミニラの存在は、ゴジラという反核の存在を更に際立たせる存在とも言えるのです。
音が良い
また、ミニラが終始一貫してキモいのが良いんですよねー。
特に卵から生まれたばかりのミニラは実にキモい。
なんというか、まさに異形のものというか、「怪獣」という感じがします。
それから、ミニラの声が、改めて良かったですね。なんかやっぱり可愛い。
特撮映画って、音が大事とはよく言われるのですが、やはり怪獣の鳴き声もその一環で、すごく大事。ゴジラにしたって、あの声が良いわけで。
それから、音楽が総じて良かったと思います。なんとなく、トロピカルオーケストラといった感じで。やはり特撮映画ということで、音に金をかけているのでしょう。
最後の雪のシーン
あと、ドラマがない、とは言ったんですけど、最後の雪の中のゴジラ親子のシーンは、なんか良かったですねー。ちょっとグッときてしまいました。
雪が降りしきる中、ミニラはゴジラに追いつけず、行き倒れてしまいます。そんなミニラに気づき、ゴジラは駆け寄って抱きしめ、降りしきる雪の中に埋もれていく。そんな二匹が、実に絵になっていました。どことなく、悲劇的な歌舞伎の親子ものというか、世話物というか。
そしてそれを見ながら(物理的・角度的には見れないとは思うけど、まぁ、それはいいとして)ボートで去っていく研究チームは、加害者以外の何者でもなかったですねー。だって、雪降らせたのは研究チームなわけですから。ゴジラ親子はそのとばっちりを喰ったわけです。
ここでもゴジラは、しかも親子で、人間に迷惑をかけられるのでありました。
「冬眠してるだけだから、雪が解ければまた元気になるよ」という取ってつけたようなエクスキューズはあるものの。
そして後に、実際元気になってキングギドラと戦うけども。