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僕が買ったもの、観に行った映画・ライヴなど、要は金を払ったものに対して言いたい放題感想を言わせてもらおうというブログです。オチとかはないです。※ネタバレありまくりなので、注意!

「ペンギン・ハイウェイ」ネタバレ有り感想。原作よりもしっくりきた!

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ペンギン・ハイウェイ」という小説がありまして、なかなか面白かったんですけど、森見登美彦作品としては、正直自分の中ではそれほどは楽しめなかったんですね。他の作品の方が全然面白かったりして。

で、この原作がアニメ映画化されることになりまして、観に行ったんですけど、これが素晴らしくて! 原作を越えた傑作アニメ映画でした。

ちなみに脚本は上田誠。「四畳半神話大系」以来、森見ー上田ラインは完全に出来上がったようですね。

とにかく素晴らしい夏のジュブナイルでした。終わらないはずの夏休みが終わってしまう、哀しさと切なさがありました。

原作よりも「しっくりくる」

とにかくですねー、不思議な話なんですけど、原作よりもしっくりきていたんですね(笑) 普通は小説が原作の場合、それを映画にすると、そもそも表現形態が違いますから、どうしたって無理が生じる。足りなかったり、変なもの加えてみたり、まぁ、ひどい時には酷評される。

でも、「ペンギン・ハイウェイ」の場合はむしろアニメ映画の方がすごく自然で、オリジナルのアニメくらいに感じました。逆に原作の小説がこのアニメを作るためにあったかのよう。

思うに、原作は森見登美彦にしては珍しく(ひょっとしたら初めてかもしれない)小学生が主人公で、そこに原因があるのではないだろうかと。

森見登美彦の主人公って、大体が大学生、そうじゃなくても大体大人なんですね。それもかなり癖の強い奴でw 尊大なくせに情けないというかw それが特有の語り口となって、作品を引っ張って行く、という感じだと思うんです。

だけど、「ペンギン・ハイウェイ」は、癖の強いキャラはそのままに、小学生にしたことで、今一つしっくり来ていなかったように感じたんです。

映画の方も、主役の青山くんの尊大なモノローグがあまりギャグとして機能しておらず、いささか空回りしている感じはありました。ダメな大学生が尊大だと笑えるけど、前途が決まるにはあまりにも早すぎる小学生だと、ただの生意気なクソガキにしか見えなくて、笑えないんですね。

なんですけど、映画の場合は、それ以外は全て良かったと言って良いと思います。

個人的には、やはり絵の力が大きかったのかな、と思います。キャラクターデザインが良いんですよね。すごく可愛らしい男の子に仕上がっていて。この子が少々生意気でも、なんとなく許せてしまうと言うか。まさに「但し、イケメンに限る」状態ですけどw

それ以外にもですね、原作の水々しい小学生の世界を鮮やかな色彩や構図、それと背景画で描き出してて、そういった絵の良さってやっぱり大きかったと思います。

その中に異邦人のように現れる憧れのお姉さんは美しく可愛らしく、そしてどこか神々しくすらあって。そしてペンギンたちの動きを可愛らしくも軽やかな仕草で表出していました。この作品にとって、実は絵や動きというものが、非常に重要であったことが、アニメ化されることで初めてわかったように思うのです。

「男にとっての」別れの話

思うにこの話は、「男にとっての」別れの話なのだと思います。

先ず、あの「海」はおそらく女性の月経の象徴で、お姉さんと相関関係にあるのは、まさにそのことを表しているのだと思います。

だから、青山くんが「海」に入ったのは体内回帰願望の現れで、お姉さんが消えたのはそこからの脱脚を促したのだと思うんです。つまり、親離れですね。

だからこの話は「男にとっての」別れの話なんです。

そう考えると、お姉さんとはつまり母親の象徴に他ならない。青山くんが固執するのは「おっぱい」であり、おっぱいとは母性の象徴ですよね。

しかも青山くんは「お姉さんの」おっぱいに特に固執する。

ただ、青山くんは母親のそれとお姉さんのそれは違うと言うんですね。だとすると、お姉さんは初めての性的な対象ということになります。ここがまたポイントで、男にとっての初恋とは、母親からの脱却の始まりである、ということなのかもしれません。

しかし「ペンギン・ハイウェイ」でのお姉さんは、母親の象徴でもあります。それと同時に初恋の相手でもある。つまり、最初の恋愛には、母親の似姿を求めているんです。なぜなら、おそらく、男の子にとって、それまでは世界の全てが母親だったから。

だから、初恋の相手とは母親の似姿でなければならず、初恋とは母親からの脱却の始まりでなければならないんです。

青山くんがこの夏に得た一番の宝物は、初めて好きになった母親以外の女性との別れだったのではないでしょうか。

青山くんは何かが決定的に欠けている

ところで、青山くんは相当頭が良いんですけど、一方でこの年頃になれば大抵の子が持っているものが決定的に欠落していると思うんです。

それは、人の気持ちを察する、ということ。

その点では青山くんより遥かに頭の良さが足りない内田くんの方が、青山くんより遥かに察する能力に長けている。

やはり、何かを大きく得ている人は何かが足りない。何かが足りないから他で補おうとするのでしょうか。

また、内田くんのキャラがすごく良かったですね。彼もまた原作以上に良く思えたのは、僕は声優の力が大きかったからだ、と思います。なんか彼(実際には彼女)の声、いいですよね。

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