azzurriのショッピングレビュー

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僕が買ったもの、観に行った映画・ライヴなど、要は金を払ったものに対して言いたい放題感想を言わせてもらおうというブログです。オチとかはないです。※ネタバレありまくりなので、注意!

「武士の献立」ネタバレ有り感想。お父さんカッコいい!!

武士の献立

先日、「武士の献立」という映画を観たのですが、故あって脚本家の方と一緒に観るという機会に恵まれました。ただ、こういう場合誰しもが思うであろう「面白くなかったらどうしよう?」…。どんなに実力がある人でも作る作品全てが面白いということはない。しかし、今回そんなことは全くの杞憂でした。すごくいい映画でした。これはマジでみなさん、お勧めですっ!

 

予告編観た時はもっと高良健吾がちょっと間抜けで人のいい感じの役で、上戸彩が強気でバシバシ行くのかな、って思ったけど、あまりコメディ要素はなく、人の様々なものへの愛情、それは夫や妻への愛だったり、友への愛だったり、初恋の人、そして親、家、国(藩)、そして仕事への愛など、そういった包括的全体的な「愛」を描いていた、骨太な素晴らしい映画でした。

 

とりわけ僕が感銘を受けたのは西田敏行演じる舟木安信(高良健吾)の父・舟木伝内が武力ではなく、「料理」というとりわけ文化的で平和的なものを以て幕府との「対決」を息子に諭す場面ですね。今現在の日本の時代性の中、殊の外重要なメッセージであるように思い、またそのように見ました。

 

また、これも西田演じる伝内が時の藩政に対し並々ならぬ反感を持つ安信に対し、自分の本分、武士の本分とは上に仕えること、政治的な思想も大事だが、自分の存在意義を忘れてはいけないと説く場面。自分がなぜ今生きていけるのか。それは今ある仕事を全うしているからだ。それが嫌なら死ぬしかない。そして跡取りたる自分が死ねば一族も滅びねばならぬ。それが正しいことなのか。生きる、生き残るということの厳しさを痛切に説いているわけです。

 

そんな感じでこの映画は西田敏行が効いてましたね。彼が言うと同じ台詞でも重みが違うような気がします。上戸彩演じる春を嫁に迎える時も良かったです。春を嫁にするために策を弄するのかと思いきや、そんなことはしません。直球勝負でした。武士が女中に対して土下座までするのです。当時としては恥も外聞もない一か八かの大勝負と言っても過言ではないように思います。それを一家を守るためにやってのける。さすがです。寧ろその心意気、カッコいいです!

 

また、安信は子供の頃、刀を持たぬ包丁侍、とバカにされた、という台詞がありましたが、大人は誰一人、そんなことは言いませんでした。おそらく、それは城の人たちは彼ら料理人に「生かされているのだ」ということをわかっていたのではないでしょうか。それは舟木家が石高こそ少ないものの「名門」であるという描写からもわかります。大人こそ、わかっているのですね。

 

また、本作品に保守派の重鎮・前田土佐守直躬を鹿賀丈史が演じていたのもナイスでした。鉄人?(笑) でも、直躬は本作品では悪役的な役どころなのですが、鹿賀丈史が演じるとあまり悪役には見えない(笑) しかも俺の中で良かったのが、悪役である彼が、もう血を流すのは終わりにしよう、と言ったところ。悪役の彼がそういうことを言うことに意味があると思うし、何より料理が彼の心を変えた、ということだとも思う。平和的な手段で戦を終わらせた、と自分は解釈しています。

 

あと、お貞の方と春が再会した場面は妙に泣けた。

 

ラストの安信と春が海辺で抱き合うシーンの絵は良かったですね。向うの方を人が一人右から左へと歩いていくのですが、その感じが良かった。なぜかはわからないんですけどね(笑)

 

そんな感じで、こういう素晴らしい映画を作った方と一緒に見られる幸運に巡り会えたのは幸せなことだったと思います。