2019年、一番良かった映画は何かと問われたならば、僕が観た中ではこれですね。
「バジュランギおじさんと、小さな迷子」!
めちゃ良かった。良すぎた。
笑って泣いて感動して考えさせられて。
いやすごかった。
ただ、タイトルには「おじさん」とあるものの、主役のパワンは「兄ちゃん」と称するのが相応しいような風情の快男児でしたw
ちなみに僕が観た初めてのインド映画でした。
予告編
ナイーブすぎるテーマを扱っているのに超エンターテインメント
先ず、全体的な状況としてはこれです。
インドとパキスタンの対立。
いや、ナイーブ!
政治的でナイーブなテーマを扱っています。
しかし、このテーマを扱いながら歌とダンス、アクションなど王道のエンタテインメントだけにとどまらず、ラブストーリーをも交えつつ描いてます。
しかも笑えるけど、シニカルな風刺なんかじゃなく、割とガチめのヒューマンドラマで描いてる。言ってみれば「男はつらいよ」みたいな感じと言えば、その笑いと涙さ加減がわかるでしょうか。
ここがすごいですよね。こういう政治的なテーマを笑いで描く場合、現状の政治への不満から描く場合が多いので、どうしてもシニカルな作品になってしまいがちです。
そういうシニカルな風味が苦手な人って少なくないと思うんで、どうしても政治映画って、あんまり注目を集めたり興行的に成功したりすることって少ないと思うんです。
でもこの映画はモラトリアムな青年と迷子の少女を中心に据えることで、心温まるヒューマンドラマに仕立てあげてます。
この発想がすごいですよね。
しかも映画の全ての要素をこれでもかと叩き込んだかのようで、それらがうまく溶け合ってるんです。
発想はあっても、それを現実化する手腕はホント、なかなかないと思うんですよねー。
こういうテーマを扱いつつ、ここまで笑って泣けて楽しめる映画は初めてでした。
逆にこういうテーマの映画だからこそ、多くの人が楽しめ、より多くの人に観てもらい、長く語り継がれる映画にしよう、としたのではないか、と思うんです。
それはもう、製作者側の心意気ですよね。
また、映画全体がグッドパワーを信じて作られているように思えてならないんです。
よくよく考えたらかなりの理想論で作られてもいるんですけど、理想論で作らなければこういうテーマではハッピーエンドにならないと思うし、また、ハッピーエンドにしなくちゃいけないとも思うんですよね。
またその理想論こそがこの映画最大にして切実なメッセージなんだと思います。
意外性のある展開
そんな感じでですね、割とご都合主義だな、と思うシーンも結構あるんですが、それが伏線になっていたり、こいつは悪人だな、と思っていたらそれが後に主人公たちの行動や自分の信念によって善の行動へ走ったり、結構展開的には意外性があるんですよね。
それに、ラストシーンは大体予想つくなぁー、って思いつつ観てたんですけど、これが大間違い。
ちなみに僕が予想されたラストシーンはパワンが迷子の女の子・シャヒーダーを実家に帰して抱き合って大団円、てな感じでした(^^;;(安直ですね)
ところがどっこい、パワンの単純な動機の行動がインドとパキスタンの対立を断ち切る鍵となり、最後に国境で兄ちゃんと女の子が抱き合う、という、もう考え抜いて絞り出したかのような感動劇でした。
いや、このラストシーンをこそ描きたいがために映画全体を作っていったのかもしれない、と思わせるほどの超・超・超大団円! もう、ホント、最後は涙と勘当の大洪水でした。劇場のあちらこちらですすり泣く声また声。
これはねぇ…、やられましたねー(T-T)
また、セリフとしては、ジャーナリストの「憎しみは広がりやすい。しかし愛は…」
というセリフが非常に印象に残りました。
悪事は千里を走るってのは、いつの時代もどこでもそうなんですかねぇ…。
主役の兄ちゃんはヒーローじゃなかった
主人公の兄ちゃん・パワンは最初登場してきた時、センターで踊ってたし、なんせ迷子になった異国の女の子を助ける、という役どころなのでヒーロー的な描かれ方をするのかな、って思ってました。
しかし、話が進んでいくと全然そんなことはないことがわかります。
もちろん、最終的にはヒーローになるのですが。
実はこのパワン、家もなく、婚約者の家に居候してます。
大学も十浪くらいしてるし(^^;;
良くも悪くも敬虔で真面目なヒンドゥー教信者で、めちゃめちゃ頭が固いんですね。
でも、めちゃくちゃ人がいいんです。
それに、めちゃ強い!
シャヒーダーが売春宿に売られそうになった時、群がる悪漢たちをブッ飛ばすくらい強い!
でも融通が利かなくて、婚約者に対しても今一つ煮え切らない。なんか、もう一つ上手くいかない感じの青年なんです。
しかし、それを導いていくのがインドを出る前は婚約者であり、パキスタンに入ってからは旅で出会う様々な助けてくれる人たちでした。
そういった、色んな人たちの助けがあって、パワンは成長し、最終的にはパワン自身もパキスタンの文化を受け入れ、そしてクライマックスでは印パを結ぶヒーローとなるのです。
これはパワンの成長物語でもあるのです。
この映画はミュージカルエンタテインメントであり、ロードムービーであり、一人の若者の成長物語であり、でも本質的には政治映画であるという、もうムチャクチャな、それでいて涙と笑いの感動物語という、とんでもない映画でした。
この映画、ホントおすすめです!