去年の暮れ、「Paul MacCartney The Love We Make」を観てきました。ジョン、ジョージときてポールです。このタイミングは偶然か意図的なものなのか、いずれにしろ個人的にはビートルズメンバーの記録映画を立て続けに劇場で観れるということは素直に嬉しい。ただ、ジョンやジョージの映画とは違い、ポールの半生を描いたものではないので、同じドキュメンタリーでもやはり趣は違いました。印象としては「超豪華な情熱大陸」(笑)
この映画は9.11テロをニューヨークの空港で目の当たりにしたポールがテロのおそよ一ヵ月後に行ったコンサート、「Concert for New York City」を追ったドキュメンタリー。ニューヨークを愛したジョン、バングラデシュ救済コンサートを開いたジョージを何となく思い出してしまいます。
劇中でもポールが言ってるけど、ポールのお父さんは消防署員でした。ポールってこういう音楽と社会的な運動を結びつけるのってあまり印象ありませんでした。でも今回ポールをコンサート開催に突き動かしたのはそのことも大きな要因なのかもしれません。
内容的にはコンサートのリハーサルの模様やテレビやラジオのインタビュー、そして当日のバックステージなど貴重な映像盛りだくさんです。それらが基本的には白黒で、実際放送されたテレビ映像やライブの時のみカラーに切り替わるという手法で、これがなかなか雰囲気出てて良かった。かなりスタイリッシュな印象があります。また、密着映像だからポールの人となりなどがよくわかる感じです。気さくでユーモアがあるカッコいいおっちゃん、ってな印象。やはりポールも友達が多そう。
ジョンやジョージは「傲岸不遜な面もありながら繊細で優しい面もある」という感じでしたが、ポールの場合は不遜な面は感じられず、気さくで誰にでも笑顔で応対する、やさしくフラットな面がある、といった印象。そういった意味で繊細ではあるんでしょうけど、ジョンやジョージのそれとは違う感じです。どちらかというと「マメ」というか。逆に誰にでも笑顔、ということは忍耐強さやしぶとさがないとできないと思いますし、それからある種のしたたかさを持ち合わせているような気がします。
ちょっと印象的だったのはポールがニューヨークの町をふらりと散歩するシーンがあるんだけど、あっという間に人に囲まれてました。ちょっと前に見たジョンのニューヨーク時代のドキュメンタリーではジョンが「ちょっと有名な近所の兄ちゃん」的な接し方をされてて、ニューヨークのそういうところにジョンは惹かれたらしいのですが、ニューヨークも随分変わってしまったのかな、と思いました。それとも、地元の人じゃなく、観光客なのかな? リハーサルで「Fly Me to the Moon」を歌っていたのも印象的。ちょっとした遊び的なセッションだったんだけど、これがなかなか良かった。やっぱポールって、センスあるよなぁ。…まぁ、ポール・マッカートニーですからね(^^;; 当たり前か。
で、やっぱり圧巻だったのはコンサートシーンです。ものすごいメンバーが集まってました。ビリー・ジョエルが「Let It Be」弾いてたもんなぁ…。あと、バックステージでポールがモニターのエルトン・ジョン見ながら「Your Song」を一緒に口ずさんでいて。多分ポールってこの曲が好きなんだなぁ。名曲ですからね。しかし、このコンサートではポール、ビリー、エルトンと稀代のメロディ・メイカーが揃ったんですよね…。すごいコンサートだなぁ。ちなみにポールの娘さんはボンジョビが好きらしいです。コンサートとバックステージを交互に映してたので、ちょっと現場にいる気分で観れて。束の間ゴージャスな気分を味わうことができました。ポールの楽屋を訪問するメンバーもまたすごいんですよねぇ~。
観終わって感じたのは、月並みだけど、やはり音楽の力はすごいなぁと。ライヴシーンはダイジェストだったけど、さすがにあれだけのメンバーだから映画終わってもちょっと興奮してました。音楽の力というか、力のあるアーティストの底力というか。みんな歴史に名を刻むような人たちばっかりでしたからね。そして彼らを集めるポールの力。やっぱすごいですね。