azzurriのショッピングレビュー

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僕が買ったもの、観に行った映画・ライヴなど、要は金を払ったものに対して言いたい放題感想を言わせてもらおうというブログです。オチとかはないです。※ネタバレありまくりなので、注意!

島村洋子は俺にとっては特別なビートルズ作家?!


All My Loving

BUDOKAAAAAN!!!


というわけでポールの武道館コンサートに行ってきました。ビートルズのメンバーが武道館でコンサートを行うのは伝説のビートルズ来日以来初めてのことだと思います。もちろん、ポールはポールであってビートルズではなかったのですが、今回の武道館公演で思い出した小説があります。


「抱きしめたい」(島村洋子)


コバルト文庫ですね。少女漫画みたいな絵の表紙や挿絵があって、ラノベの走り的なジャンルだったんですけど。題名からわかる通り、ビートルズを思いっきり題材にした小説です。主な読者層が中高生女子だったコバルト文庫vsビートルズという異色の組み合わせ! そのミスマッチ感が非常に魅力的な小説です。


内容的には来日中のマイケル・ジャクソン(!)に会うべくヒルトンホテルに忍び込んだ女子高生三人がタイムスリップしてしまってビートルズに会ってしまう、というとんでもなく胸熱なストーリーとなっております。これが書かれたのが確か1987年だったから色々と時代の流れを感じてしまいます。


この本の他にも『オールマイラヴィング』シリーズがあって、そちらも「隙あらばビートルズ」という感じでした。こっちが先の刊行ですね。こちらは高校生の男の子の目線から語られる青春群像劇なのですが、高校生ながらビートルズや60年代ロックに詳しい、今思うとちょっと変わった男の子でした。これ読んだ当時僕も高校生だったのですが、僕の高校時代はビートルズ一色だったので、何の疑問もなく読んでました(笑)。


僕が高校の頃、ビートルズ聴いてる奴なんてほとんどいませんでしたからね。まぁ、時代が違うんで当たり前っちゃあそうなのですが、いい音楽なのに何でみんな聴かないんだろ?くらい思っていて、だからビートルズが好きな登場人物たちがすごく嬉しかったですね。もっとも、僕にビートルズ薦めてくれたのは同じ高校の別のクラスの奴だったんですけどね(^^;;


『抱きしめたい』にしても『オールマイラヴィング』にしてもお分かりの通りタイトルはもちろん、各章の副題もビートルズの曲名をそのまま使っております。しかもちゃんとその章の内容に即したものとなっており、「わかってる感」を強く感じます。


そんな感じで作者のビートルズ愛を存分に感じることができる点もこれらの小説が大好きな点なのですが、ビートルズをスパイスにしつつもその当時の等身大の高校生の気分を非常にうまく表現していて、悩んだり気をもんだり笑ったり悲しんだりする姿がすごく可愛らしく、そして何となく切ない。そういうその年代特有の感覚を描き切っている。あれからもう何十年と経ってしまったけど、そういった年代の感覚というのはいつまでも不変であると思うんですね。それが証拠に更にそこから遡ること何十年の高校生たちを夢中にさせたビートルズと登場人物たちは様々な形で邂逅するわけですけど、その組み合わせにあまり違和感がない。そういった普遍的な青春小説であることがこれらの小説の最大の魅力だと思います。


そう、ビートルズっていつまでも若い人の心を掴むんですよね。若いアーティストも大抵はビートルズ聴いてるし、ポールのコンサートでも若い子もチラホラいました。おそらく若い人に訴えかける何かがあるのでしょう。作家では同じように若い人の心を掴む人は太宰治であるように思います。そういうアーティストや作家の存在を思うと、やはり若い年代の感覚というのはいつの世も不変であることの裏付けであるように思われます。


そうそう。そんな感じで高校の時はビートルズばっかり聴いてたのですが、どういうわけか、ビートルズとは友達感覚みたいなところがあったんですね。どこかすごく近くに感じていた。その感覚がこれらの小説にもあって、「抱きしめたい」では実際に会ってもいる。でも、会うことが必然にして当たり前のように思ってしまう。今時の高校生が、現役時代は何十年も前で、既に音楽的にも存在的にもクラシックの領域に入りつつあった(既に入っていたかもしれない)バンドをすごく近くに感じている。何となくひょっこり会えてしまう感覚にさせる。それがビートルズの魅力かもしれません。そういった点にビートルズがいつまでも若い子の心を捕え続ける秘密があるのかもしれません。


そういや、今回のポールの公演でもポールからのサプライズがあったらしいですね。三階席にいた女性が金髪美人と日本人男性秘書みたいな人に声をかけられて、どれくらいポールのことが好きだったか尋ね、相当なファンだとわかると、ポールからのプレゼント、と言ってアリーナ最前のチケットをくれたそうな…。ポールをすごく身近に感じたエピソードだし、なんかもう、漫画みたい。


そういや、ポールと言えばビートルズ時代に来日した時、ジョンと一緒に宿舎を脱走して東京の街を観光したそうです(ポールはすぐ捕まったらしいですが)。そのエピソードを初めて聞いたとき、何となく小説みたいだなぁ、と思い、その時もやはり「抱きしめたい」を思い出してしまったのでした。「抱きしめたい」ではこのエピソードは使われていなかったのですが、個人的には使って欲しかったですねー(^^;;


主人公たちとほぼ同じ時代を同じような年齢で過ごし、しかも物語全体を覆っているのがビートルズ。挿絵の少女漫画みたいな絵も可愛らしく、僕にとっては本当に特別な小説でした。


ポールが武道館ライヴで『All My Loving』を歌ってくれたのは自分の中ではなんだかよくできたお話のようで、それはそれは特別な出来事でした。