先日、絶対に観たかった「Ryuichi Sakamoto Playing the Piano : 2022+」を観に行ってきましたー!
故あって、昨年末の配信ライヴを観ることは叶いませんでした。だから、YouTubeで「Merry Christmas, Mr.Lawrence」が特別公開された時はイチもニもなく飛びつきました。
その後、NHKでもダイジェスト版が放送! いやもう、ホンット、NHKにはありがとうございますと言いたいです。
そしてその放送内で、映画公開の予定もあることを教授が仰って、それ聞いた時はもう、本当嬉しくて、楽しみにしていたのですが。
その映画が、遂に公開されました! しかも、配信ライヴでは未公開の曲まであるという…!
というわけで行って参りました。場所はもちろん109シネマズプレミアム新宿。教授が音響を監修したという映画館での上映ということで、その点でも楽しみでした。
そして、やはり最高でした。
teaser
久々の歌舞伎町
先ずは104シネマズビル屋上のゴジラを記念撮影しながら、久々の歌舞伎町を進んでいきます。
徐々に写真を撮りながら近づいていき、最後にゴジラの真下でカメラを構えたら、トラックにクラクションを鳴らされてしまいました(^^;;
夢中になって道路の真ん中で撮影しちゃダメですよw
ちなみに、歌舞伎町へ行ったのは実に久々だったのですが、割と小綺麗にはなっていましたねー。とはいえ、そこは歌舞伎町w 相変わらずの雰囲気は保ったままでありました。さすが歌舞伎町。かぶいてるね。
そして! いよいよ初の109シネマズプレミアム新宿へ。
しかしなんつーか、そのビル内部にある飲み街がねー…なんというか、下品w 電飾の感じとか、もー、ホンット、なんとかして欲しい感じでしたが。
教授はこんなところの映画館の音響を担当したのか…、となんだか勝手に気の毒な気分になってしまいました(←)。しかし、階をエスカレーターで上がっていって映画館に着くと、そこはちゃんと小綺麗なスペースであったのです。
物販とチケット購入
先ずは物販へ。入るといきなり教授の挨拶と略歴のボードがお出迎え。
そしてすぐに教授のスペースが! CDや本、Tシャツはもちろん、スコラシリーズなどが博物館のように陳列されていました。ちょっと細野観光を思い出してしまいましたね。
他にはガイナックス関連の映画グッズもたくさん。教授が音楽を担当した、かの名作「王立宇宙軍 オネアミスの翼」の限定版もありました。この作品、実は超ウルトラスーパー大好きな作品なので、正直ちょっと心を引かれました。しかし、今日の所は我慢(正直ちょっと高かったし)。
あと、ネルフのマグカップもありました! こちらもちょっと欲しかったけど、ウチに三つ四つあるので、さすがにちょっともういいだろう、と思い、こちらも断念(でもまだちょっと欲しいけど)。
ちなみに、観劇後に「12」のマスキングテープを買いました。
そしていよいよチケットを購入。しかあーし! なんと現金不可! マジかよ。後でマスキングテープを買った時もそうだったのですが、この映画館フロアでは完全に電子的な決済に移行した模様。使う側からすれば、かなり不便ですが、仕方がないのでクレジットカードで購入しました。
ちなみに座席代はAクラス4,500円、Sクラス6,500円。なかなかです。「この映画館、すぐに廃館になるんじゃなかろうか?」と勝手にいらぬ心配をしてしまいました。
しかし購入を進めていくと、途中、画面で「ドリンクとポップコーン込みなので、是非ご利用ください」みたいなメッセージが。なるほど、とちょっと思いました。そういうサービス込みなのね。でも、その値段分安くしていただいた方が嬉しいかも…。
ラグジュアリー映画館
そしていざ映画館へ! 中に入ると、かなりなラグジュアリー空間。さすが4,500円!
そしていきなりのレセプションカウンター! 本当はイの一番にトイレに行こうと思っていたのですが、そのトイレに行くのも忘れ、思わずカウンターに歩を進めてしまいました。
カウンターに行くと、購入画面にあった通りウェルカムドリンクと『ウェルカムポップコーン』が! すげえなぁ。こんな映画館初めてだよ。さすが4,500円。
で、カウンター内部のおねいさんにドリンクを選ぶよう言われたので、アイスコーヒーを所望。更におねいさんはポップコーンの種類を問うてきたので、塩を選びました。他にはキャラメルと、その二つのミックスがありました。
ウェルカムアイスコーヒーとウェルカム塩ポップコーンを両手にラウンジを奥に進んでいくと、運良く窓際の席が空いていたので確保。
外を見ると、眼下にはなんと、さっき撮影した104のゴジラ!
東宝の映画館を見下すように作った東急の意地の悪さを感じなくもないですがw、眺めは最高! 実にリッチな気分でアイスコーヒーとポップコーンを食しました。アイスコーヒーもポップコーンもうまかったです。昼メシ食ってなかったので、実は正直助かりました。
そういえば、J-WAVEの教授特番でクリス・ペプラーが、教授とゴジラ話で盛り上がったことを話していて、その話の中で、教授は伊福部昭が好きだった、と言っていたのを思い出しました。そういった意味でも、なんとなく縁も感じてしまいます。
そんな風にしてゴジラを見ていたら、途中、カラスがビルの谷間を飛んで横切りました。
「12」制作中、録音中にカラスの鳴き声が入って良かった、みたいな教授のコメントがあって、それを思い出しました。そんなこともあり、なんとなく、「楽しんでね」と教授に声をかけられたようにも思いました。
そして時間が来たので、いよいよスクリーンへ。ポップコーンとアイスコーヒーは全部食い切れなかったので、トイレはもう我慢です。
中へ入るとこれまたラグジュアリー。座席も肘掛スペースもゆったりで、もちろんドリンクを入れるところもバッチリ。めちゃくちゃ良い座席でした。音響は教授監修だし、こりゃ確かに4,500円だなあ、と改めて思いました。もはや文句はありません。賞賛あるのみ。
最高の座席!
いくつかの予告編の後(「怪物」もありました!)、いよいよ本編スタート。
先ずは教授からのご挨拶。だったのですが、なんと!主に教授は画面左側から語りかけていたのです。
このことのどこいらへんが「なんと!」かと申しますと、僕が座っていたのが左側の方の最後列だったんですね。つまり、画面の教授のド真っ正面だったんです!(ややズレてはいましたが)
なんとなくここらへんがいいなあ、と特に何の考えもなく選んだ座席だったのですが、それが最高の席だったわけです。あの時の俺ナイス!
思えば、教授のステージはピアノを横に置いて左側が定位置でした。YMOでも立ち位置は向かって左でした。この構図は、そういうのもあったのかもしれないですね。教授といえばステージ左という。
だから、ほぼ俺の真正面だったので、教授に話しかけられているようでした。目線の高さはバッチリだったと思います。
そんなサプライズ(←?)の後、いよいよ演奏開始。
教授監修の音響
この映画館の売りの一つでもある、音に関してなのですが(やはり先ずはそこが気になりました)、正直、他の映画館との違いは明確には感じられませんでした。
そもそも、最近の映画館はどこも音が良い。逆に言うと、全体的にレベルが上がっていると思うのです。
ただ、J-WAVE特番で言われていた「正しく無音」というのはバッチリ感じられました。何も音がしないんです。無音を作り出すってのが結構難しいらしくて、どうしてもホワイトノイズとの戦いになりますからね。そしてまたホワイトノイズが結構な強敵。そこに打ち勝って無音を作り出すというのは、やはりさすがだと思います。
そういうこともあってか、ピアノの極小さい音も細かく聴こえました。特にダンパーペダルの音が生々しい。さらに言ってしまうと、ダンパーを離す時、少しハーモニクスがかかるのです。やはりピアノは弦楽器なのだなぁ、と改めて思わされました。
ちなみに、小学校の頃のピアノの先生には「ピアノは打楽器だから思い切りぶっ叩きなさい」(ウロ覚え)と言われました。大学のバンドサークルの先輩には「鍵盤楽器は歴史的にリズム楽器だったことを知った方がいい」とも言われました。
ピアノという楽器は、弦楽器や打楽器などなど、様々な楽器の要素から複雑に構成された総合体なのかもしれません。
あと、教授の息遣いも聴こえてきました。なんとなく、グレン・グールドを思い出しました。グールドのレコードには演奏中の彼の癖でもある鼻歌がよく入っているのです。グールドは、教授が敬愛するピアニストでもあります。
そういう、ピアノ演奏の音以外の様々な音の要素が聴き取れました。そういうのは、もちろん録音する際に、意識的に採取された音であると思います。
それを思うと、やはり教授はベルトルッチの影響も大きかったのだと思います。教授は最初、作った音楽をベルトルッチにプレゼンした時、シンセを使った録音だったそうです。そりゃそうだ。その当時、教授と言えばシンセだったわけですから。
しかしベルトルッチは「これは音楽じゃない」(ウロ覚え)みたいなことを言ったとか言わなかったとか。なぜなら「椅子の軋みや、息遣いが聞こえないじゃないか」。
それに対して教授は「だったら、椅子の音をサンプリングしましょうか」と言い放ったそうです。いやあ、トンガってたんだなぁw
ただその後、確か教授自身もそんなベルトルッチの影響を受けたって何かのインタビューで言ってたような気がします。
あとは、そういう「ノイズ」みたいなものを意識的に入れるのは、やっぱりジョン・ケージの影響もあっただろうし、20世紀の現代音楽にも町の音を入れたオーケストラもあったみたいなので(「スコラ」で紹介してました)、そういった素養は元々教授の中にあったのでしょう。
だから、ベルトルッチの「文句」も、最終的には受け入れられたのではないでしょうか。
ただ、そういったノイズを拾う録音技師の技術がすごいのか、それを再現する館内音響が良いのか、どっちだろう?とは思いました。両方かもしれない。
優しい演奏
曲で言うと、最近はあまり演奏しなかった良い曲を演奏してくれたのが、個人的には特に嬉しかったですね。
例えば、「嵐が丘」と「Happy End」がそんな感じ。この2曲、めちゃくちゃ良い曲ですからねぇ。特に「嵐が丘は」「The Last Emperor」や「The Sheltering Sky」に並ぶくらいの名曲だと思っています。
演奏で言うと、YouTubeで特別配信された「戦メリ」を聴いた時と同じように、やっぱり「優しい」と思いました。
もちろん、教授の音楽の中には攻撃性というか、先進性というか、前衛性みたいなものはあると思うし、それは演奏の中にも最後まであったと思います。でも、優しいんです。
攻撃性の中にやさしさが出てきた感じ。教授自身、このライヴを終えた時「ここに来て新境地」と言ったインタビューを読んだことがあります。まさにそうだと思いました。
あと、何と言っても「東風」をソロピアノでアレンジしていたのも嬉しいポイント。で、この演奏、ゆったりしたテンポなのに、ビート感を感じさせたと思います。
アレンジもそうだし、演奏技術の妙でもあると思います。そもそも教授の曲は弾いてみるとわかるけど、リズムキープがめちゃめちゃ難しい。やはり教授はリズム感すごいと思います。
それに、教授自身言っているように技術は落ちたとは思います。もう昔みたいに速くは弾けないし。でも、音がいい。タッチがいい。そこはもう、センス、経験、思想とすら言ってもいいかもしれない。そういうものが、やはり抜群なんだと思うのです。
映画ライヴ
あと思ったのは、久々に映画館で観たら、やはり観客の咳とか、飲み物を飲む音とか聞こえてくるんです。
特にピアノコンサート映像だから、ちょっとした音でも聞こえてくる。
でもそれが、かえってライヴ感をかき立ててもいたと思うんですよねー。
元は配信ライヴとして作られた映像なのですが(より正確に言うなら、公開レコーディングを配信ライヴ仕立てに見せる)、こうして劇場公開することによって初めて「ライヴ」になったようにも思うのです。
また、個人的には、以前ならそういうノイズが許せなかったんですけど、今回は「ライヴ感」として、ちょっとテンションが上がってしまいましたw
あぁ、ライヴってこうだったな、ていう感じ。
今後は映画館で映画を見る自分の態度、姿勢も変わっていくかもしれない。
そういったこともあって、今回はまさにライヴを擬似体感できる、まさに「映画ライヴ」だったと思います。なんとなく、ビートルズの「Eight Days A Week」を思い出してしまいました。
エンドクレジットの「Opus」のカットはまさにコンサートに来ているようでしたねー。多分、この劇場のステージなどのことなども計算し、そういう風に見えるように撮ったのだと思います。教授も等身大に映っていたように感じました。
まさに映画ライヴ。
永久に残したい作品
この「Opus」も、さっき言った「最近はあまり演奏しなかった良い曲」の一つなのですが、まだまだ教授には良い曲があります。
例えば、「音楽図鑑」に入っている「マ・メール・ロワ」などは超名曲なのです、おそらくはコンサートでは演奏されたことはないのではないでしょうか。非常にもったいなく、残念でもあります。ただそれを思うと、やはり唯一無二の音楽家だったのだなぁ、と改めて思いますね。
そして、こういう演奏、ライヴ、映画を残してくれた教授は偉いと思いました。映像作品としても本当に素晴らしい。やっぱり教授はカッコいいと思う。永久に残したい作品ですね。
映画が終わって、ほとんどボーッとしながら帰り支度をしようとしたら、ウェルカムポップコーンを盛大にブチまけてしまいました。
落としたポップコーンを片付け、まだ残っているアイスコーヒーを飲もうとラウンジに出たら、まだ明るかったです。随分日が伸びたなぁ、と思いました。今が一年の中でも一番気候が良い時季かもしれない。
ゴジラを見下ろす窓際の席は埋まっていたので、反対側の奥に行ったら、そこもまたラグジュアリー空間でした。いや、本当に良い映画館だ。映画の余韻に浸りつつ残ったアイスコーヒーをおいしく飲みました。その後、ちゃんとトイレにも行きましたよ。
帰りのエスカレーターから見えた夕陽が見事でした。