「鬼滅の刃」全巻感想というマラソン企画、全23巻なので、まだまだ道のりは長いです。
今回はその第二弾ということですが、これが! 面白くなってきた!
いや前回の第一巻の時にですね、「売れてなかったら次買ってない」ということを言ったのですが、いやいきなり! 第二巻でドカーンと面白くなってきたのでびっくりしました。ここからが本域といったところでしょうか。
しかも……、俺好みの作風になってきた(主に絵)。
やっぱ、大正時代、いいッスね!
丁寧な作り
第一巻ではですね、割と雑な作りだな、って正直思ったんです。台詞とかも紋切型だし、特訓のシーンも「もう終わっちゃうの?」ってくらい、ザッと描いていた感じだったし。
でも、二巻に入っていきなり様子が変わった感じですね。
それは二巻収録の最初の話。いきなり炭治郎が最初の難敵というべき巨大な鬼に勝つシーンから始まるんですけど、その鬼の過去、鬼になってしまった瞬間みたいなものを描いていたんですね。
その鬼は、多分飢餓感のあまり自分のお兄さんを喰ってしまったんです。それで、以来ずーっと一人きりで寂しくて不安で孤独だったんですね。何十年と。
それで、お兄さんを喰ってしまった後に、お兄さんのことを、ひいては人であった頃の記憶がなくなってしまうんです。鬼になってしまいましたから。
これは、すごく悲しいことだと思うんですよね。悔恨の思いすらなくなってしまう、というのは、そのお兄さんとの関係性すらもなくなってしまう、ということですからね。
後悔するっていうことは、その人との関係性が保たれてるってことだと思うんです。関係性がなければ、後悔そのものができません。だから、後悔するっていうことは、その人の中では、まだ関係性は切れていないとも言えると思うんです。
でも、それすらなくなってしまった。お兄さんの記憶をなくしてしまって、その最後の関係性すら断ち切られてしまった。これはつまりどういうことかというと、全くのひとりぼっちになってしまうわけなんです。
そして、自分が汚くなってしまった、蔑まれている、そういうことも、実はこの鬼はわかってるんですね。
でも、炭治郎はその鬼の悲しさがわかってしまうんです。彼は嗅覚が超人的に鋭くて、感情すらもわかってしまうんです。ある種のエスパー的なところがあるんだと思います。
そんな炭治郎は、自分が倒した鬼の手を取ってやるんですよね。
それが、その鬼にしてみれば、お兄さんの手のように感じて、何かこう、一つ救われるというか。
もう、いきなりこのシーンから始まるんですよ。これは、結構やられましたねー。グッと来るというか。
こういう、敵のキャラも掘り下げると、物語にグッと深みが増してきますよね。
また、和巳さんという、鬼に自分の、多分恋人、というか許嫁だと思うんですけど、その人を喰われてしまった人が登場するんですけど、この人が炭治郎の手を掴むシーンがあるんです。で、炭治郎の手に触れてみて、いかに炭治郎が厳しい特訓を積んできたか、わかるんですね。
第一巻では、特訓のシーンが割とあっさりだな、って思ったんですけど、こういう何気ないシーンでその凄まじさを表現している。こういう丁寧な描写が主人公の辿ってきた道を、登場人物にわからせているようで、実は読者に感じさせるというか。
とても丁寧な作りになってきたな、と思いました。
キャラ濃厚の登場人物
あと、二巻では新キャラがたくさん登場してくるのですが、みなさん、かなりキャラ濃いですね。
鬼殺隊試験に合格した子で、刀寄越せっつって試験官の女の子(男の子かもしれない)をブン殴る、首輪つけといた方がいいんじゃねぇか、って野郎が出てきます。
それから、日輪刀を打った鋼鐡塚さんは、齢三十七にして子供に相手に駄々をこねる人で、非常に大人げなくて可愛らしいですね。
あと何と言っても、珠世さんと愈史郎の二人。もう御二方とも非常に美しく、御耽美さんなんですけど、特に愈史郎ぼっちゃんが様子がおかしいw
もう、珠世さんにベッタベタに惚れていて、かなりの美少年キャラなのに頭の中はピンク色。この人はなかなか良いキャラですねぇ。
マイケル?
キャラと言えば、いきなり炭治郎の家族の仇である敵が登場したのには焦りました。この展開の早さ! 出し惜しみなしですね。
もちろん、これは「顔見世」ってやつで、まだまだこの仇敵との因縁は続くのでしょうが、物語の序盤も序盤で出すところが、非常にテンポの良さを感じさせます。
で、それはいいのですが、この鬼舞辻無惨(すごい名前だ)、モデルはマイケル・ジャクソンですかね? しかも「Smooth Criminal」のビデオの時(つまりは映画「Moonwalker」の時)の。
なんかすごく似てるんですけど。名前にも「舞」が入ってるし。
マイケルファンの俺としては、ちょっと嬉しい。
ところで、ちょっとマイ…鬼舞辻絡みで気になることがあります。
一巻では「傷口に鬼の血を浴び」ると鬼になり、基本的に「人喰い鬼はそうやって増える」そうだったんですけど、二巻に入ると、このマイ…、鬼舞辻しか鬼を増やすことはできない、ということになっています。
この二巻で、若干の設定変更があったのでしょうか。ちょっと謎です。
異形を連れる主人公
登場人物関係でもう御一方。炭治郎の妹君であらせられる禰豆子です。
第二巻からは遂に本格的に炭治郎を助け、鬼との戦いに参戦するわけですが、この感じがいいですよね。
人間である炭治郎が敵方と同じ鬼を連れている、ってのが矛盾した関係性でありつつ、何とも頼もしい。
この主人公が異形を連れてるってのが、ケレン味がありますよね。ウルトラセブンのカプセル怪獣にも通ずるところあるというか。しかも、この異形が血を分けた妹というのもまた、哀しさを背負っている感じで、カタルシスがあります。
また、着物着て、太もも出して戦う姿は、どことなく「ドロロンえん魔くん」の雪子姫を彷彿とさせる感じで、個人的には非常にツボです。
で、この禰豆子を元の人間に戻すヒントは、他ならぬマイ…鬼舞辻なのですが、炭治郎が鬼を倒す時に、「鬼舞辻はどこだ?」って聞くんですけど、この感じがですねー、非常に「快傑ズバット」的で良かったですね。あ、そういう展開かな、と思ったらすぐに鬼舞辻を見つけてびっくりしたんですけど。
でも、復讐のために黒幕を追う、っていう展開はやっぱり似てるかな、と思います。
創意工夫のあるバトル
そしてやはり、二巻に入ってから本格的なバトル漫画になってきた感じですね。
鬼の能力や、それを相手にする炭治郎の戦い方も、一戦一戦それぞれ違っていて、目が離せないですね。特殊な能力に対して、主人公側が持ってる手札をどう使うか。ある種頭脳戦的な要素もあると思います。
なんとなく思い出すのは、やはり「ジョジョ」ですね。ジョジョのスタンド戦なんかも、そういった側面があると思います。
やはり創意工夫のあるバトル物は読んでいて、引き込まれてしまいますね。
ただ、炭治郎。鬼の口を黙らせる時、口を切るのは怖いし、グロすぎる。ジャンプの少年漫画って、たまに残酷すぎる描写が出てきますよね。しかも、主人公がそれをやるのは、ぶっちゃけ、ちょっと疑問ではあります。
大正浪漫は浅草から
そして何と言っても、浅草という都会に行ってからは、一気に大正浪漫味が強くなります。
これこれ! 大正を舞台にした漫画はこうでなくちゃ。
浅草という街の感じがね、やっぱいいですね。去年「いだてん」を見てたんで、それもちょっと思い出してしまいます(「いだてん」は僕の中では圧倒的歴代No.1大河ドラマです)。
特にその大正浪漫で御耽美な感じを強く醸し出しているのは、珠世さんと愈史郎の御二方ですね。珠世さんの「惑血 視覚夢幻の香」の花模様などは、もうホント御耽美。それを背景に佇む御二方は綺麗の一言ですね。
だからまぁ、なんというか、大正御耽美バトル漫画とでも言うべきもので、何と言うか、超俺好み!