「女神の見えざる手」を観たんですけど、噂に違わずすごい映画でした。「巨悪を以て悪を制す」コードギアスに似た感動、カタルシスがありましたねぇ。
ロビー会社のやり手女性社員が仕掛けるサスペンス、ということで、まさに今の時代、右系(ロシア系、と言った方が的確か)ロビイストが国際的に暗躍している今、まさに観る映画だと思い、絶対観たかったんですけど、それだけに留まらず、「映画」としても大傑作。
この映画観たら、やっぱり政治には金が必要らしく、そこがまた何ともはや。
主人公・スローンがカッコいい!
それにしても主人公のスローンは男みたいです。いや、これがこれからの女性のスタンダードか。男は弱く、女は強い。既にそういう価値観念は当たり前のものになりつつあると思います。
で、このスローン、所謂できるビジネスマンです。歯切れの良さ、頭のキレ、眠らず、目的のためには手段を選ばず、夜は男を買って性欲を満たす。そして恋愛はしない。…カッコいいッスね。
そして、この男を買うくだりで、スローンの生い立ちのようなものがほんの申し訳程度語られるます(主人公の過去は基本一切語られない)。家庭的に問題があり、かなり苦労して叩き上げで成り上がったことが示唆されていました。それまで強さ一辺倒で来たスローンのちょっと弱い部分の紹介。ここで少し観客に対して、主人公を歩み寄らせ、感情移入させようという狙いがあるのかもしれません。
ちなみに、この売春夫が後々聴問会で証言台に立つのですが、なぜスローンのために嘘の証言をしたのか、それがわかりませんでした。理由が説明されていないんです。でもまぁ、そこは予期せぬことで主人公の最大のピンチが救われる、というのはプロット的にありだとも思います。
主人公に常に弱さを感じる
実はスローンは終始強さを見せると同時に脆さも感じさせるんですね。
それは冒頭、公聴会の場に立たされていることが大きいと思います。「いずれ彼女は失敗する」と観客に思わせるからです。
観客がそのような色眼鏡でスローンを見ることによって、どこか脆さを感じさせるのではないでしょうか。
思えばスローンは(自分で蒔いた種なんだけど(^^;;)ほとんどの登場人物から信頼されていません。
仕事上の仲間はいるけど、実質的には孤立無援状態。唯一の仲間は、前の会社の大学院生だけ。しかも、それも物語上仲間だとわかるのは映画の最後の最後。それまではスローンを裏切った者、と描かれているんです。
予測できないと言えば、スローンの同僚が銃で襲われることは物語上、スローンも予想外だったと思います。そして、ここが非常に重要で、主人公側はこの予測不可能事で窮地に追い込まれ、スローンはこの同僚を失い、精神的に追い込まれてしまうのです。
スローンはこの同僚に「表に出ろ」と常に強要していて、その結果、表に出た彼女を命の危険に晒してしまいます。ただ、この「面に出ろ」というのは、スローンの本気のメッセージだったのかもしれない。スローン自身がそのように生きてきたのでは?と思ってしまったからです。弱くなってしまった自分を変えるには、表に出て、強くならなくてはならない。そう考えているのかもしれません。
悪を以て巨悪を倒す
しかし、それでも全ては彼女の計算通りに進み、最後は自らの破滅と引き換えに、政治家の不正を暴き、銃規制法案を勝ち取ります。ここのカタルシスは半端なかったですね! めちゃくちゃカッコ良かった。
公聴会で最後に語った言葉は登場人物の本音かどうかはわかりません(スローンは嘘ばっかついてますからねw)。でも、少なくとも製作者の本音であると思いました。
本当に国民のことを思っている政治家は力を持てない。力を持つのは金に群がるネズミだけ。
それは制度が腐りきってるからだと思います。構造的な問題なのです。
しかし、それでも議会制民主主義は堅持されなければならない、と思います。
民主主義は最悪の政治形態です。但し、これまでのあらゆる政治形態を除けば、ですが。確かチャーチルでしたっけ?