azzurriのショッピングレビュー

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僕が買ったもの、観に行った映画・ライヴなど、要は金を払ったものに対して言いたい放題感想を言わせてもらおうというブログです。オチとかはないです。※ネタバレありまくりなので、注意!

「グリーンブック」ネタバレ有り感想。人間の複雑さ多様さへの寛容さ。

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去年、アカデミー賞の作品賞を受賞して話題にもなった「グリーンブック」でしたが、個人的にはその前に予告を見た段階で、これは絶対に観なくてはいけない作品だ、と思ってですね、観に行ったんですけども、いやー、すごく良い作品でした。

所々、流れの良くないところや、それほど笑えないシーンも散見されたんですけども、全体的にはやはりすごく面白かったと思います。

ストレートに人種差別問題を扱っているようでいて、実は人間の複雑さ多様さを描いていて、それに対する不寛容な世界というものを浮き彫りにしている映画なのではないかと、思いました。

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冒頭のシーンが作品を象徴

先ず、この映画には主役、バディになる白人と黒人が出てくるわけなんですけども、何というか、言ってみればステレオタイプな感じの人たちではないんですね。それぞれにぐちゃぐちゃに色んなものが混ざってるんです。

冒頭のシーンがそれを象徴しているように思います。ジャズのビッグバンドが演奏してるんですけど、全員白人なんですね。ボーカルも白人。

一方、後々登場する主人公のシャーリーはピアニストなんですけど、専門はクラシックなんですね。

ジャズは黒人が作った音楽です。クラシックはもちろん、言ってみればヨーロッパの白人の民族音楽です。だから、黒人の音楽を白人が演奏し、白人の音楽を黒人が演奏する。ある意味音楽が混ざってるんですね。なんとなく、この映画を象徴しているように思います。

単純に分けられない

先ず、粗野で短気で乱暴なイタリア人・トニーは(粗野と言いながらも立ち居振る舞いは粋だったりカッコ良かったりします)貧民街に住んでいて、働いているナイトクラブでは喧嘩の処理など、ぶっちゃけ汚れ仕事担当です。とはいえ綺麗な奥さんと男の子二人がいて、親戚一同とも賑やかに楽しく暮らしています。おまけに口が上手い。

トニーの雇い主になる紳士で知的で物静かな有名ピアニスト・シャーリーは大金持ちで、博士号を三つくらい取得しているインテリでもあります。ピアノは、さっきも言った通り、基本クラシックが専門です。でも、家族とは疎遠らしく、カーネギーホールの二階にたった一人で暮らしています。

トニーは黒人が嫌いなんですけど、リトル・リチャードとか黒人の音楽には詳しく、また好きでもあるらしい。またチキンなどのファストフードが大好きです。

逆にクラシック畑のシャーリーはジャズなどの大衆音楽には疎く、手で食べるファストフードは「不潔」ということで苦手みたいなんですね。まぁ、最終的には美味そうに食ってましたが。

シャーリーはトニーのボスで二人の間の決定権は握ってるんですけど、白人とういことでトニーの方がホテルやレストランや仕立て屋などでは優遇されてしまいます。

そんな何もかもが正反対な二人が旅を続けていくうちに、お互いの立場や文化的バックボーンがどんどんと溶け合っていって、最後には強い絆で結ばれる。

ぐちゃぐちゃに色んなものが混ざってる二人が最後に混ざり合うのは必然のことだったのかもしれない、と思わせます。

トニーがシャーリーに言った一言もまた、この映画を象徴しているように思います。

「俺はナイトクラブで働いていたからわかる。人間は、複雑だ」

色んな人に対する寛容さとは何だろう

ただ、違いがあるとすれば、トニーは金と社会的地位はないかもしれないけど、賑やかに楽しく暮らしています。シャーリーは金と社会的地位はあるんだけど、なんだかとても孤独です。

特にシャーリーの孤独は、なんというか、とても独特なんですね。トニーは貧乏な白人ではあるけど、似たような人はたくさんいるかもしれない。でも、シャーリーのような人は多分他にはいないかもしれないです。

この時代、大抵の黒人は社会的地位は低く、貧困に苦しんでいて、満足な教育も受けられない。でもシャーリーは名誉も金もある上、教養まである。シャーリーは黒人から見ても、まぁ言ってみれば除け者なんですね。そういう描写もありました。

トニーには仲間がいるけど、シャーリーには仲間はいない。理解者もいない。

シャーリーの孤独を、トニーは物語の序盤で早くも、見抜いてはいないんですけど、なんとはなしに感じてはいるんですね。シャーリーがトニーを信頼したのは、ここだと思うんです。トニーには確かに教養はないかもしれないけど、感性が鋭く、頭が良いんです。

また、トニーは単純であるが故に、すごい、と思ったら素直に認めることができるんです。トニーはシャーリーのピアノを聴いて、妻に「彼は天才だ」と手紙を送ります。それくらい、素直に相手を見ることができる。

ちなみにこの奥さんは最初から差別とは無縁な方で、とても進歩的な人だったんです。なんか、これもまた偏見なのかもしれないけど、女性の方が柔軟に世の中を見ることができる人が多いような気がするんですけど、これはおっさんである僕のひがみでしょうか(^^;;

また、シャーリーとトリオを組むチェロとベースが白人というのも意外な感じだったんですけど、彼らはドイツ人なんですね。ドイツは第二次世界大戦ですっかり悪役になってしまったので、やはりドイツ人というだけで迫害されていたのかもしれません。だから白人だけど、シャーリーの気持ちがわかるのかもしれない。彼らは常にシャーリーの側の人間だったんです。

こんな感じでですね、この映画は紋切型に差別を描いた映画ではない、と思っています。もっと普遍的な、世の中には色んな人がいて、それに対しての寛容さとは何だろうか、というようなことを問いかけられているように感じました。

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