「蟲師」の作者、漆原友紀の初期短編集「フィラメント」を買ってきました。画風は変わったけど、作風はあんまり変わっていない。そんな印象ですね。
基本的には不思議な話、もっと言ってしまえば、生と死の間の世界や出来事を描いたものが多いです。それはひょっとしたら今連載中の「蟲師」まで続く漆原友紀が脈々と描き続けてきたテーマなのかもしれません。「蟲」は「生命そのもの」の存在であり、その描かれ方として、動物や植物が「生きている」状態に比べて生とそうでない状態(死、というわけでもないと思う)の中間であるように思えます。その意味で、「蟲」は漆原友紀が描いてきた(であろう)生と死の間の世界に通じるような、そんな概念であるように思います。この本の中で漆原友紀は「同じ人格の者が描いたとは思えない」と言っていますが、生とその向こう側にある世界の間を描く、という点で作品の根っこの部分ではやはり描いてきたものは一貫しているように思えます。今と違うと思ったのは「蟲師」では登場人物が大人が多いのに対し、この短編集では子供を主人公とした話が多い、ということでした。「蟲師」の原型となった話があるんですけど、これも主役は子供でした。でも、子供の蟲師ってのもいいかも。
で、画風なんですけど、今の画風はどちらかと言うと、ゆるやかなラインというか、幽玄な感じすらするのですが、昔は結構カッチリしたラインで描いていますね。今の画風もいいのですが、この頃の画風も相当好きですね。まだ初期だからか、画風が確立されてなくて、色々と試してみてる感があって、でも結構どれも好きですね。中には若干鳩山郁子を意識してるような画風もあったりして。
で、思ったんですけど、漆原友紀って長野まゆみ好きなんですかね? 長野まゆみ作品にそっくりの場の設定がある話がありました(ちなみにこの話の画風が鳩山郁子風)。さっきも言ったけど、この頃の作品は子供を主人公とする話が多く、その点も初期長野まゆみに通じるところがあるように思います。あと「銀河鉄道の夜」へオマージュを捧げるような作品もあったりして、この点も長野まゆみっぽい。この頃の漆原友紀は結構長野まゆみに影響を受けているのではないかと思います。
そんなわけでですね、画風とか作風とかすごく好きで、あと根底にあるものは今の漆原友紀に通じるものもあるし、非常に面白かったです。長野まゆみが好きで「蟲師」が好きな人は必見かも。