azzurriのショッピングレビュー

僕が買ったもの、観に行った映画・ライヴなど、要は金を払ったものに対して言いたい放題感想を言わせてもらおうというブログです。オチとかはないです。※ネタバレありまくりなので、注意!

長野まゆみ「箪笥のなか」ネタバレ有り読書感想。いろんな意味で境界が曖昧!!

装丁の感じもやっぱり好き

 

好きな小説家は?と問われたならば、いの一番に上がってくるのが長野まゆみです。最初に買ったのは「夏期休暇」という文庫本。なんとなく本読みてぇなーと思って、本屋をブラブラしてたら、平積みになってるこの本があって、それで、その装丁の感じがすごい良くて、ジャケ写買いをしたのが最初でした。で、読んでみたら、今まで読んできた小説とはかなり変わってて、すごく気に入って、他の本も色々買っていくうちにすっかりハマッてしまいました。

 

この人の小説って、やっぱり文体にかなり特徴があったんですね。先ず、文字、文章を「絵」として考えているじゃないかっていうフシがあって、そこに先ず惹かれたような気がします。パッと眺めただけで、なんというか、綺麗というか、いいんですね。例えば、あんまりカタカナを使わない。外来語なんかも、日本語の漢字の表記にして、その横にルビをふる。そうするだけで、同じ言葉でも随分印象が変わります。そういった、文章の見た目の雰囲気もかなり意識しているように思えます。

 

あと、この人の場合は小説というよりは何つーか、物語というか、まぁ、変わった感じです。おとぎばなしみたいな。実生活をリアルに描くとか、そういう感じでは全くないですね。未来にしろ、過去にしろ、非常に想像的な感じだと思います。

 

それから、特徴的なのは登場人物の意識ですね。主役と言いますか。どこからどこまでが現実でどこからどこまでが夢なのかわからない。そこらへんの意識というか、境界がかなり曖昧で、読んでる方は幻惑されるというか。そこらへんはかなり特徴的だと思います。

 

で、今回のこの「箪笥のなか」なんですけど、以前の作品と比べて、かなり変わりました。まずは舞台が現代の日本です。最近の長野まゆみの作品は舞台を現代にすることが多くなりました。また、これは作者のエッセイ風に描かれている点も以前との変化を感じさせます。そうは言ってもやはり長野まゆみっぽさは健在で、この作品でもやはり不思議な出来事が起こるのですが、やはりその境界が曖昧です。不思議なことが起こったなぁーと思ったら、実はそうではなく、普通に事が過ぎていったと思ったら、それは実は不思議なことであったりとか。言ってることがわかりにくいですが(^^;; あと、文章に対するこだわりというか、そういうとこも健在で、この小説、カギカッコがないんです。人の台詞も地の文のように書いてあります。だから、読んでて、ここ台詞だったんだ、と思うことがしばしばあります。そこらへんもすごく曖昧ですね。そういう風に読者をある意味「不安」にさせるというか、境界を曖昧にさせるためのねらいなのかもしれません。