僕が子供の頃は、怪獣と言えばウルトラマンの怪獣でした。僕の子供時代はあんまり本放送がなくて、ウルトラマン80くらいだったんですね。でも、再放送はかかりまくっていて、ウルトラマンとかセブンとか『帰ってきた』(新マンとかジャックとかの呼び名がありますが、僕らは番組タイトルそのままに『帰ってきた』と呼んでいました)とか、ビデオレンタルがない時代にも関わらず、割とポップに観てました。
そんな感じで、ウルトラマンと言えばテレビです。だから、怪獣と言えばテレビでした。
しかしそんな中、映画でしか観れない怪獣がおりまして。そうです。ゴジラです(ガメラもいますが)。
その当時の僕の中では、映画というと何やら「特別感」がありました。テレビなら電源押せば気軽に観ることができるし、家庭のチャンネル権を握ってるのは子供です。テレビは子供の思うがままなのです。
ところが、映画はそうはいきません。子供だけでは気軽に映画なんか観に行けません。親同伴が当り前です。だから、特別感があり、大人としか行けないという点では、ちょっと大人の世界、という感じがありました。(僕の映画好きはここらへんから始まっているのかもしれません)
それに、映画はテレビと違って大スクリーンですから、怪獣のスケールも、普段観ているテレビサイズのウルトラ怪獣よりも、スケールも大きく、「格上」な感じもしました。「ウルトラマンじゃ勝てねぇなぁ」と(設定的には勝てるはずですが、子供の世界はそういう、「理屈」ではないのです)。
そんな感じで、僕は映画の怪獣、特にゴジラが出演する東宝系の怪獣が大好きなんです。
というわけで、そんな大好きな東宝怪獣のフィギュアを一頃集めまくっていました。で、僕が欲しいのは高さが5cmちょっとくらいの小さいサイズのフィギュアです。ゴジラは人気怪獣なので、酒井ゆうじ氏を筆頭に各社様々なハイクォリティフィギュアを開発していますが、残念ながらその他の怪獣は如何せん、このサイズのフィギュアでは「スゲエ!」というのがない。
ラドンもそのうちの一つでした。5cmサイズのが欲しいけど、そもそもクォリティ云々とか言う前に、商品自体がない。
そんな感じなもんだから、ラドンのフィギュアを買うこと自体、ハナッから考えていなかったのですが、ある日、秋葉原の中古ショップを物色していたら、忽然となかなかのラドンがありました。
お? これ良いんじゃね?
そう思って、ミニサイズフィギュアのラドンは、ある日突然、割とあっさり手に入ったのでした。
ラドンの魅力
先ずはラドンの魅力について話しましょう。
やっぱりですね、僕的にはそのデザインですね。気品があるデザインの良さ。これでしょう!
僕の中では、怪獣の「価値」、「格」と言い換えてもいいかな、それはデザインなんですね。設定的な強さじゃない。見た目なんです。ここらへんはプロレスラーと似ているかもしれません。
プロレスラーの「格」って、多分、見た目なんだと思います。背が高い、とか面構えがいい、とか、筋骨隆々。つまり、強さへの「説得力」。だから、ぶっちゃけた話、実際に強いかどうかは二の次でいいんです(ま、極論中の極論ですが)。そういった「説得力」という意味では、「元横綱」とか「オリンピック代表」なんていう肩書きも有りですよね。
そういった、見た目という点では、このラドン、僕的には空を飛ぶ怪獣の中では最高です。
装飾と言えば頭の角の他には、胸から腹にかけてのトゲトゲくらい。そして、「空を飛ぶ」という最大の特徴(それまでの日本の「全怪獣」はゴジラとアンギラスだけでした。二匹とも飛べません)に最大限の説得力を与えた翼面積の大きさ! これがめちゃカッコいいんですよね。とにかく、ラドンと言えば、その翼です。
無駄がなく、シンプルな造形でありながら、大きな翼というインパクトがある。
そしてこの翼が最大に生かされるのは、もちろん飛行している時の美しさです。これはもう、鷲や鷹の実際の猛禽類さながら。しかも、それらよりも断然翼面積が大きい。飛び立つだけで、嵐が起き、町を破壊する説得力抜群です。
だから、顔のイメージよりも全体的なフォルムのイメージが強いですね。しかも、飛んでいる時の姿が印象深い。まさに、空を飛ぶ怪獣かくあるべし、という特徴です。やっぱり、空を飛ぶ怪獣なら、飛んでる姿が一番カッコ良くあって欲しい。
またですねー、ラドンには飛び道具がないのも良いですよね。そういえば、東宝系の地球産怪獣で飛び道具を使うのはゴジラとバラゴンくらいですかね? 基本は「巨大な生物」ですから、そんな兵器みたいなものは持っていません。キングギドラとかガイガンは宇宙怪獣だし(しかもガイガンはサイボーグ怪獣)、メカゴジラに至ってはロボットです。そこらへん、(バラゴンはいるものの)ゴジラだけは特別、という東宝側のポリシーみたいのが感じられます(多分)。
だからまぁ、さっきも言ったように設定的には大して強くないはずなんですが、やたら強いイメージがあります。実際、「ボコられる」シーンがないし、「三大怪獣地球最大の決戦」では、ゴジラと互角どころか、若干押し気味に戦っていました。
設定的には大映の空飛ぶ怪獣代表のギャオスの方が超音波メスを吐けるし、強いのでしょうが、僕の中では、ラドンの方が強そうに見えてしまいます。それはやはり、さっきも言ったように、「格」の問題なんだと思います。やはり、デザインとしてはラドンの方がカッコいい。アクの強さという点ではギャオスの方が勝るかもしれませんが、気品があるのはラドンだと思います。言ってみれば、ギャオスはB級グルメで、ラドンは高級レストランなんですね。
初代ラドンであること
というわけで、このフィギュアについてなのですが、先ず気に入った点が、初代ラドンなんですね。
東宝怪獣は最初の方が怖かったり、カッコ良かったりするのですが、代を重ねるごとに、なんだか可愛くなってしまう、という傾向があります。
ゴジラは逆ゴジまで、アンギラスは初代までは怖い顔をしています。ですが、二匹とも後々目がクリッとして可愛くなってしまいます。それでも、ゴジラは「ゴジラ対ガイガン」まではギリギリ「怖さ」を保っていますが、ラドンは早くも「三大怪獣地球最大の決戦」で、目がクリッと可愛くなってしまいました。早すぎるぞ、ラドン!
しかし、今回買ったフィギュアのラドンは初代のラドンです! ちなみにこのフィギュアはバンダイから発売されたガチャガチャシリーズ「HGゴジラ 5」のもので、ラドン’56という商品となります。ネーミングがラドン’56ですからね、そのものズバリ初代ラドンです。
こちらのラドンは東宝怪獣初代の伝統の乗っ取った(?)シリアスな顔となっております。ただ、シリアス、という点では初代ゴジラや初代アンギラスと同等なのですが、ゴジラやアンギラスが「怖い」のに対して、この初代ラドンはなんとなく「野性」を感じるんですね。野生動物特有の「何を考えてるのかわからない」ようなところがあります。ゴジラやアンギラスは何を食ってるのかもわからない「怪獣」なのに対して、このラドンはメガヌロンという古代の巨大虫を主食として捕食します。この「捕食する」という描写があることから、ラドンはやはり「生物」であることを強調されているのかもしれませんね(飛び道具もないし)。
ガチャなのにクオリティが高い
このフィギュアは一回二百円のガチャガチャの商品です。ですから、ラドンの他にも様々な怪獣も作られ、ある程度大量生産であるため、コストも抑えめになっているはずです。だから、どうしたって「一点モノ」的豪華さはなく、大量生産的なチープさがあります。
しかし、そんな中でもギリギリのハイクォリティさがあるがびっくり! もっと言ってしまうと、よくガチャでこれ作れたな、と思います。それは以前紹介したキングギドラも同様で、あれもHGゴジラシリーズでした。HGゴジラ恐るべし!
どうですか! この雄姿! いやー、やっぱ買って良かった。
僕がこのラドンを気に入ったのは、先ずやはり顔です。
ご覧ください、この男前!
初代の顔、しかもそれをこの価格帯の中ではギリギリ忠実に再現したクォリティの高さ! 特に、目の上の眉毛状の部分、ここの堀の深さがカッコいい。これにやられました。
そして二番目が翼の大きさ。
ピンボケしちゃったけど、下から煽ると、更によく翼の大きさがわかります。
先程も申しました通り、ラドンの魅力は翼です。ラドンのアイデンティティは翼です。その翼が体に対する比率がめちゃデカい! 着ぐるみの、本物のラドンとほぼ同等です! これにやられました。
また、色味も良いんですよねぇ~。ベースは深い茶色です。しかし、茶色一色でベターッと塗っているわけではありません。同じ茶色でも、翼や体の位置によって、濃淡の微妙なグラデーションを付けており、奥行きが出るように彩色されているのです。
また、胸のトゲトゲの装飾、翼の内側が蛇腹状になっている点などなど、細部もかなり丁寧に造形されています。
後ろから見るとこんな感じ。
確かに、ガチャガチャ的大量生産感は拭いきれません。しかし、この大きさで、このクォリティは、多分いくら待っても、もう出てこない、そう思いました。
だから、割とすんなりと、当り前のように買ってしまいました。そして、2020年現在、(多分)このラドンを越えるクォリティのミニフィギュアのラドンは誕生していません。
HGゴジララドン(紛らわしい言い方ですが)、最高だゼ!