azzurriのショッピングレビュー

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僕が買ったもの、観に行った映画・ライヴなど、要は金を払ったものに対して言いたい放題感想を言わせてもらおうというブログです。オチとかはないです。※ネタバレありまくりなので、注意!

「君たちはどう生きるか」ネタバレ有り感想。『宮崎駿』てんこ盛り映画!!


長らく観に行きたくて行けてなかった「君たちはどう生きるか」をですねー、ようやく観てきましたよ!

いやー、でもツイッターで、ある日突然公開の情報が上がってきた時はびっくりしました。そもそもここ数年ちょっと映画から離れちゃって、全然映画そのものの情報も取ってなかったから、それはもうびっくりして。

もちろん、宮崎駿が新作作ってるって噂は聞いていたんですよ。でも、突然来たから、あれはびっくりしましたねー。で、界隈ではお祭りみたいになってて、なんとか情報シャットアウトして、映画鑑賞までこぎつけたんですけどね。

で、観たんですけど、ま、正直言っちゃうと、何だかよくわからなかったですが、面白くはありました!

ある意味で「宮崎駿」てんこ盛りの映画だったと思います。

駿祭りというか。駿カーニバル&フェスティバルというか。

youtu.be

もののけ」以降の宮崎駿は怖い

まず冒頭で感じたのは、やはりもののけ以降の宮崎駿は怖い、ということですねw

もうね、絵が怖い。

いきなりの火事のシーンから始まるんですね。そういった、冒頭でいきない事件を起こす素早い展開は最近のトレンドを踏襲していると思います。

で、眞人が街中を駆けていくのですが、その時の人の顔がですねー、なんというか、崩れてるんですね。

この感じがですねー、非常に不気味だったんですよねー。なんとなく水木しげるのタッチに似ていたのも印象深いです。

あれは一体どういう意図で、何を表現しようとしていたのでしょうか。それはちょっとわからなかったのですが。

表現力が鬼

それで、やっぱりこの映画でもすごいなぁ、と思ったのが細やかな表現力ですね。動きの表現の確かさは健在ですね。

眞人が東京を離れて汽車に乗って田舎に引っ越すシーンがあるのですが、継母の夏子さんが出迎えてくれます。で、その夏子さん、リキシャに乗っています。

リキシャなんですねぇ。日本の人力車を参考に、人ではなくチャリンコに車を付けたタイの乗り物です。タクシーみたいなもんですね。多分日本にはないものです。なぜここで人力車ではなくリキシャを持ってきたのかはよくわからないのですが、おそらく「これはファンタジーなんだよ、日本じゃないんだよ」ということを印象づけるためなのかもしれません。違うかもしれません。

で、そのリキシャから夏子さん降りるのですが、ちょっとあやうく降りるんですね。あの感じ。あれがリアルだった。人力車乗ったことある人だったらわかると思うのですが、ああいう乗り物って降りにくいんですよね。ストンッなんてみがるにおりれない。夏子さんは着物を着ているので尚更です。そこをちゃんと描いている。

他には、大人と子供の歩幅がいちいち違うんですよね。石畳も、大人は一歩で渡っていくのですが、眞人は一歩では渡れません。しかも、二歩だったり一歩だったりと一定ではありません。大体大人の1.5倍くらい歩数を使うという手間のかけよう。

こういう、細かいところだけど、そういうところがキチンと描けている。

ここが重要で、アニメって結局絵じゃないですか。リアリティなんて何にもなくて、だから観客がスクリーンの中に入って行きづらいんですね。そこが実施に比べてアニメが圧倒的に負けているところです。

じゃ、どうするか。呆れるくらいに細かく表現していくんですね。そうすると完全絵空事のアニメの中に実存感を創出することができ、スクリーンの中に容易に入っていくことができるんです。

この手間を惜しむか惜しまないかが、作品の質、もっと言っちゃうと格を決めていくのだと思います。

その一方で、最初の方の青鷺が飛ぶシーンはなんとなく不自然な印象を受けてしまいました。宮崎駿特有の飛翔感を感じられなかったんですね。どうしちゃったんだろう?という感じ。

やはり、大型の鳥が近くを低く短い距離を飛ぶ、というその表現は難しいのかもしれません。逆にいうと、そういう飛び方に果敢にチャレンジした、とも言えるかもしれません。

日本を描いているようで西洋

あと、やはり宮崎駿は日本的な風景を描くのが苦手なのではないか、とやや思いました。

いや、基本的には上手いとは思いますよ。思うのだが…、西洋の作り方と混ぜてしまう(^^;;

というより、基本的には西洋の構造の考え方ですよね。「もののけ」の村でも、ああいう自然の一部を切り取って人間だけのテリトリーを作る、ていう村を作っていましたが、ああいう城塞都市的な発想は基本的には日本人の町づくりの概念にはないものだと思います。

もっと自然に対して自分たちのテリトリーをゆるやかに設定するようなところがあると思うんですよね、日本の町とか村作りって。

建築についても、宮崎駿って純然たる日本家屋を作ることって、あんまりない。「トトロ」の家とかも和洋折衷だったし(建物自体はめちゃオシャレで超憧れるけど)。「千と千尋」の旅館は日本的でしたが…。

で、今回も、日本家屋か、と思いきや家の中が石で作られている箇所もあったりして。基本的に日本の建築って石を使うことはないと思うんですけどね。

また、居住区行きはもう、開き直ったかのように洋館でしたねw これは、客をもてなす時は西洋建築、自分たち家族が住むところは日本家屋、という旧古河邸や旧岩崎邸などとはちょうど真逆の発送ですね。

そういったところ、宮崎駿の西洋文明への憧れが如実に顔を出しているのかもしれません。そういうところも、この映画が宮崎駿という人が前面に押し出ているところでもあるように思います。

臆面もなく自分をさらけ出す

そう、この映画って、宮崎駿という人間のほとんどをさらけ出しているようにも思えるんですよね。

「豚」や「風立ちぬ」なんかもそうだったらしいのですが、この作品こそ、宮崎駿が臆面もなく自分をさらけ出した初めての作品ではないだろうか、と思いました。

上記のような西洋への憧れもそうだし(コンプレックスと言えるかもしれない)、アクションシーンなんかは、「コナン」にまで遡る宮崎駿のほぼ全ての作品の要素がてんこ盛りになっているように感じました。

やっぱり、宮崎駿は冒険活劇が大好きなんですね。そして個人的には、そういう宮崎駿を観たかったりします。

君たちはこう生きろ

それに、彼のマザコン性をここまで暴露した作品はかつてなかったように思います。

この作品って、個々の事象は極めてわかりづらくて謎だらけなのですが、構造だけ抜き出せば割とわかりやすい。母親への愛情、及びそれに対する超克だと思います。

以前、高畑勲宮崎駿を称して、王子様がお姫様を助ける話しか書けない、と言っていたのですが、この映画はまさにそういった構造。しかも今回のお姫様は自分の母親です。しかも、実母と継母まとめて! ある意味では「究極の宮崎駿作品」です。

その意味で、男子にとっては、世の全て(それは理不尽と言い換えてもいいと思います)を受け入れること、だと思います。

また、世界(塔)を上手く作ることができなかった大叔父を宮崎駿の世代と解釈すると、その世界(塔)の行く末を託されそうになった眞人は若い世代、下の世代ということになるでしょう。

君たちはどう生きるか、とタイトルで言ってはいるけどそうではないと思います。君たちはこう生きろ、という、主に男の子に向けたメッセージであろうと思います。

あ、そもそもこの作品、あの本とは全然違うんですねw 僕は前情報一切入れたくない方なので全然知らなかったw 劇中にあの本が母親からのプレゼントとしてバッチリ出てきてましたし、何よりエンドテロップで「原作 宮崎駿」って書いてあったので。

ただまぁ、あの本が原作であったにしろ、違う感じになるんじゃないかなぁ、とは思ってましたが。

謎だらけだけどわかりやすい

で、まぁ、そんな感じで、ざっくりとどういう内容か、というとそれは多分わかりやすいのですが、上でも言った通り、個々の事象は謎だらけです。夢の中で夢落ちしてたりもしますからね。

そもそも、なぜ夏子さんはあの塔に向かったのかわからない。

おそらくは、やはり夏子さんは夏子さんで心の底では眞人を受け入れられてなかったのでしょう。だから、あの塔に引きこもった。そう解釈すると、ややしっくり来ます。

一方、眞人はなぜ自分をああまでして傷つけたのかわからない。

それも、やはり継母である夏子さん、そして実母を失くして一年しか経ってないのに再婚して子供まで作る父親を受け入れることができなかった故の行動、と考えると、まぁ納得できる。

眞人と夏子さんは二人とも、それぞれに引きこもりになったのでしょう。

で、その引きこもりの状態を強引にこじ開けたのが青鷺です。

ただ、この青鷺も、なんでそんなことをしたのか、その動機はよくわからない。

そんな感じでですねー、他にも細かく挙げていくとキリがないくらい、この映画には謎が多いです。ほとんど説明してくれない。

ただ、種明かしも唐突だったりします。でも、そんな唐突な種明かしをされても「そうだよね」と納得してしまったりします。

塔の中の、あの火の女の子が実は眞人の母親であったり、眞人を助けてくれた船乗りの女が実はキリコさんの若かりし頃の姿であったりはその典型でしょう。まぁ、そうですよね、と思ってしまいました。

思うに、宮崎駿の強引力がすごいのである。もう、そんな細かいことはウムを言わさぬ強引力で突破して、なおかつなんとかしてしまうのである。その強引な説得力! さすが宮崎駿です。怖いです。普段から怒鳴り散らしているっぽいくらい怖いです。

つーか、キリコさん、めちゃカッコ良かった。若い頃、こんなにイケメンだったんですね。顔はほぼ第十三代石川五右衛門

宮崎駿異世界アニメ

そしてまた、基本的にはこの映画は異世界冒険アニメだと思いました。

宮崎駿異世界アニメ。

そういった意味では、ここでもまた最近のトレンドをしっかりと踏襲しているとも言えると思います。

でもその異世界は、そんじょそこらの凡百の異世界とはわけが違います。宮崎駿ならではの独特な玉手箱やカレイドスコープのような、何が飛び出してくるかわからないような、そんな独特の異世界である。これがまたスゴい! ああいう美的センスというか、世界センスとでも言いましょうか、それはも圧倒的ですよね。

しかも、そこの作りにもまた強引力が発揮されている感じ。西洋風の日本家屋がどうした?!という感じw そういったところも「宮崎駿」って感じで、まさに「宮崎駿」がてんこ盛りになっている。

ある意味では宮崎駿の集大成的な作品とも言えると思います。

ちなみに声優は、総じて言ってしまうと下手でしたねぇ。そこで失敗してる感じもまた、宮崎駿の総決算的とも言えてしまうような気がします。

後進からの影響

トレンドと言えば、あの塔は空から飛来したものらしいことが作中で判明します。

もしその空からというのが宇宙的なものだとしたら、どことなく「君の名は」を彷彿とさせます。

そもそも、あの塔の中では過去と未来が混在している。しかも、自分の未来を知りながら「眞人を産みたい」と言って元の世界に戻っていった実母の生き様は、やはり「あなたの人生の物語」を遠回しに彷彿とさせます。

それは「すずめの戸締まり」でも同様のテーマが描かれていました。

これは邪推ですが、やはり宮崎駿新海誠からも影響を受けているのではないか。


 

 

 

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