森見登美彦が大好きなのですが、そもそもは深夜アニメの「四畳半神話大系」を観たのがきっかけでした。
それがホント素晴らしいアニメで、あまりに素晴らしすぎて「原作も読みたい」となって、「四畳半王国見聞録」を買ったのが始まりでした。……。ええ、「四畳半神話大系」じゃないんですよw でもこれ面白かったあー。
というわけでですね、その森見登美彦の代表作と言っても過言ではない(代表作多すぎてわからない)のが「夜は短し歩けよ乙女」だと思うんですね。
その劇場版アニメがやるって話を聞いた時は、それはもう観に行かなくてはいけない、と思いましたよ。
で、実際観に行って、面白かったんですけど、残念なのは特典の小説ですね。これがもらえなかったのは実に残念無念……。
ちなみにこの小説、先輩と黒髪の乙女のその後の話が描かれているというじゃありませんか。嗚呼……。そろそろ、文庫版のあとがきあたりに掲載してもいいんじゃないですかね?
映画というフォーマットには合わなかったかも
全体的にはですね、監督・湯浅政明、脚本・上田誠、キャラクター原案・中村佑介、主題歌・ASIAN KUNG-FU GENERATIONなどなど、「四畳半神話大系」の制作陣とほぼほぼ同じということもあり、森見登美彦のあの世界観を見事に映像化していたと思います。
ただですね、やはり「四畳半神話大系」と比べてしまうと、そっちの方が面白かったかもしれません。
というのも、やはり森見登美彦原作ということで、情報量が多いんですね。とにかく一人称で、モノローグで、主人公が喋り倒す。
そういった作風ですと、やはり長くじっくり作れるTVシリーズというフォーマットの方が合ってるのかもしれません。
だから、映画という、長くても2時間という尺の中では、ちょっと収まりが悪かったかな、と。
割と無理矢理に詰め込んだ感は拭いきれなかったかな、と思います。
原作の方では、季節ごとに全四話だったのですが、この映画では、あたかも一夜の出来事のように描かれていました。まぁ、それも映画にするにはなかなか良い方策だったかとは思いますが、やはりいかんせん、駆け足感というか、そういう印象は否めない感じでしたかねぇ。
カラフルな小説世界の映像美!
そうはいいつつも、あのめくるめくサイケデリックな映像美、場や小道具、セットデザインなどはホントに素晴らしい、夢のような世界でした。
京都という街をファンタスティックな世界に変えてしまった感じですねー。
さっきも言いましたが、一夜の出来事なのか、四季を巡ったのか、時間の流れもわからない、最早四次元エンタテインメントって感じです。
その点は、さっきも言ったように、ややもすると駆け足感、詰め込み感を感じてしまう点でもあるのですが、そうやって、時間の流れがよくわからない、それ故夢のようにも感じられて、観方によってはやはり面白い作りになっていると言えるとも思います。
四季を巡った一年間が、一夜の夢のように感じられる。それは、先輩と黒髪の乙女が過ごした特別な一年が、二人にとってはまさに夢のように過ぎ去った一年であったことを表していたのかもしれません。
黒髪の乙女は光を与えてくれる
黒髪の乙女は、日陰しか歩いてこなかった人を強烈に照らす人、という感じがしました。
孤独な老人、やさぐれたおじさん、そして自分に片想いをしている先輩。
色んな人に光を与えていました。最後、先輩の部屋を目指す乙女は、なんだか救世主のような、女神のような。
なんでもできて、どんどんと前に進んでしまう乙女だけど、そんな彼女も恋愛には奥手なところが、良かったですねぇ。
くだらなくも笑える展開のオンパレードの中、最後はグッときてしまいました。多分、乙女と関わった男たちが、なんとなく自分に似ていたからかもしれません。
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