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村田沙耶香「消滅世界」ネタバレ有り読書感想。現代日本の女性にとっての理想郷?!


村田沙耶香の「消滅世界」を読んだのですが、なかなかすごい小説だったけど、割と退屈な小説でもあったかな。

巻末の解説にもあったんだけど、この小説は一部の人にはディストピアであっても、一部の人にはユートピアなのだと思います。腐女子を中心としたオタク系の女子、オタク以外でも現代に生きる日本の多くの女子には理想郷なのかもしれません。


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というのも、ここ数年実は女は男のことなど好きでもないし、できれば顔も合わせたくないんじゃないか、と常々思っていたんです。そしたらこの小説読んで、amazonとかで感想を見てみると、やっぱりそれは当たっていたみたいですね。

ただ、それは人類が「生命体」として退化していく過程の表れでもあると思うんです。突然極端な話になりましたが(笑) なぜなら、男がいらない、ということは究極的には子供を作りたくない、ということであり、産みたくない、ということは子孫を残すことを拒否する、ということに他ならないからです。男がいらない、ということは割と本能的な判断でくだしていると思うので、本能的に女性は人類を滅ぼそうとしているのかもしれませんね。極論かもしれないけど、現代の日本の女性の願望を考えると、そうなっちゃうと思うんですけどね。

そんな感じで、現代日本に生きる女性の本当の本音が描かれてはいたんですけど、作者自身は本当のところどう考えているのかってのはよくわからない、と感じました。なぜなら、登場人物の心理描写や関係性、状況や舞台設定など細かいところまでよく描けているものの、作品全体が、まぁその、ぶっちゃけた話、つまらなかったんです(言っちまった)。これが女性の理想郷じゃいー!と思って書いているのであれば、もっと筆が「ノる」と思うんです。

しかしこの作品は何というか、もうこれは感覚的な話で、しかも割と勘で言っちゃうんですけど、文章が「ノッて」ない。魅力的な登場人物が一人もいない。

それから、この作品世界では「新しい常識」が次から次へと出てくるのですが、出てくるたびに「狂っている」や「正常」という言葉がカギカッコ付きで出てきます。実験都市千葉(ニューロマンサーを思い出してしまいました(笑))の「子供ちゃん」や最後の赤ん坊畑などの描写は不気味でおぞましいものとして描かれている、ように感じてしまいます。

そして最後は主人公がこの「狂った」作品世界でも並外れて狂ってしまう、という点もこの世界を肯定していない証拠の一つのように思えてならないんです。なぜなら、理想郷として描くのであれば、主人公が狂うはずはないのだから。親に睡眠薬を飲ませて監禁する、というのはこの作品の世界でも立派な犯罪でしょ!

また、主人公の母親は現代の我々の常識を有している唯一の人物として描かれているんですけど、彼女が最も人間的で、何というか「生き生き」してるんですね(これまた感覚の話で申し訳ないんですけど)。その結果、相対的に最も魅力的な人物となってしまっているのも、作者がこの作品世界を肯定はしていないのではないか、という疑問の裏付けの一つだと思うんです。

ちなみに登場人物は、この母親以外は、何というか「生きて」ないんですね。結局この作品を構成するための人形にすぎないように見える。そこらへんも、この作品が「ノッて」いない理由の一つだと思うんですけど。

で、その「ノッて」ないというのが、この小説が設定的には面白くて非常に繊細に作っているものの、退屈であった理由なのではないかと、思います。

まぁとにかく、この作品はディストピアユートピアかで、割と意見も分かれると思うのですが、僕はまぁディストピアとして描いたのではないかと、思ってしまいます。

でも、後から作者のインタビューを見たら、そういう話でもないみたい。もっと多様な価値観、生き方を認めたらどうですか、という話のよう。それは全くその通りだと、個人的には思います。

 

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