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僕が買ったもの、観に行った映画・ライヴなど、要は金を払ったものに対して言いたい放題感想を言わせてもらおうというブログです。オチとかはないです。※ネタバレありまくりなので、注意!

「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」ネタバレ有り読書感想。人と似ているものを壊すと人間性が失われるか?


劇場で映画を観たり、岡田斗司夫チャンネルの解説を観たりして、改めてまた読みたくなったのが、サイバーパンク映画の金字塔「ブレードランナー」の原作小説である「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」です。

そこそこ前に読んだので、やはり結構忘れてましたね(^^;;

一度読んだり観たりしたはずの映画、漫画、小説などが、時を経るとほぼその内容を忘れてしまうのはなぜでしょう?

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↑こちらは映画公開記念特別装丁

サイバーパンク描写はちょっとわかりにくい

もう地球は見捨てられた存在、という設定で、ある種の厭世感に溢れています。ここらへんがまずサイバーパンク

登場人物たちのセリフも、景気の良い内容はひとつもないw いやぁ、不景気ですねぇ。

また、未来の話(設定的には1990年代だけどw)なので、それっぽい道具がたくさん出てくる。いやぁ、サイバーパンク

しかし、それらがどういうものだか、文章からは今ひとつよくわからないです。

まぁ、そういうところは読み飛ばして、雰囲気だけ掴むようにしようと思って読み進めました。

二つの視点から物語が語られる

以前見た岡田斗司夫の動画で、人に似たものを壊すと魂が汚れる、というのがこの作品のテーマだ、という話を聞いていたので、そう思って今回読み返してみたのですが、確かに、なるほど、と思いましたねー。

ちなみにこの小説は主人公であるデッカードと、そして主役ではないけれども、もう一人イジドアという狂言回し的な役割の人がいます。

この物語は、この二人の視点から交互に描かれます。つまり二方向から物語が進んでいくのです。

イジドアはピンボケと呼ばれる、ある種社会不適合者のような人物なんですけど、その実、他人ばかりか猫にまで感情移入できる人です。

ま、ちょっと様子がおかしいところはありますが、なんというか、全体的な印象としては、今の我々からするとごく普通の、良心的な人です。

それに対して、主役であるデッカードはいつもイライラして、他人にも高圧的だったり、喧嘩腰だったりして、終始落ち着かない。

そして、やたら本物の動物を飼うことにこだわってるんですけど、感情移入の対象、というよりは、動物を買うことそれ自体が目的化してしまっている感じです。

やはり賞金稼ぎなので、何度もアンドロイドを破壊しているからこんな性格になっちゃったんだろうな、と思ってしまいます。これは多分岡田斗司夫の解説の影響がモロに出た解釈でしょうねw

変わっていくデッカード

しかし、このデッカード。物語を通して変わっていきます。だんだんと、いわゆる人間らしい描写が増えてくるんです。

オペラ歌手になりすましている女性アンドロイド(ルーバ・ラフト)を始末しなくちゃいけないんですけど、そのアンドロイドに対して、あれだけ歌の上手い人は人類にとって必要なのではないのか、と自問してしまうんです。仕事しろよ、って感じなんですけどもw

そして、もう一人別の賞金稼ぎ(フィル・レッシュ)が出てくるんですけど、このフィル・レッシュがルーバ・ラフトを撃ち殺した時、怒りとも悲しみとも後悔ともつかない感情が、デッカードの中から溢れ出てくるんですね。

ここが非常に人間臭くてですねー、デッカードが徐々に変わってきたことがわかります。

あまつさえ、デッカードは殺された女性アンドロイド、ルーバ・ラフトの方に「同情」し、人間であるフィル・レッシュには、ある種の嫌悪感を抱くようになってしまうんです。

そして自分はルーバ・ラフトに出会うまでは、フィル・レッシュと同じように非情なバウンティハンターだったんだ、と気付き、悩んでしまいます。

なぜ、デッカードが人に似てるけど人ではないアンドロイドにも感情移入できるようになったのか、そのきっかけはよくわからないんですけど、多分、音楽なんじゃないかなぁ…と思います。いや、全然自信ないですけどw

ルーバ・ラフトの歌った歌があまりにも素晴らしくて心を動かされたから、ということなのかもしれません。まぁ、音楽には普通にそういう力があると思うんで、設定としては無理はないとは思うんですけど。どうでしょう?(^^;;

「人間らしい」って何だ?

また一方、イジドアの方にも動きがあります。自分の住んでいるマンションにアンドロイドたちが逃げこんで来るんです。

それで、彼らの身の上話を聞くんですけど、それがまた結構悲惨な話なんですね。まぁ、言ってみればアンドロイドは人間の奴隷ですから。

でも、見た目は人と全く同じだし、何より話してても人間と区別できません。完全にアンドロイドに肩入れするようになります。それで、アンドロイド達にこき使われながらも(←)、なんとか彼らを守ろうとするんです。

この物語の「視点」である二人の登場人物が、本来人間ではないアンドロイドに感情移入する。そして、何らかの形で同胞である人間に敵意を持つ。ここらへん、人間らしさとは何か、を問いかけ、その答えを探して話が進んでいく感じです。

じゃあ、その「人間らしさ」って何かと言ったら、まぁやっぱりこの物語の中では、人間に限らず、動物でもアンドロイドでも、他者への感情移入ができるかどうか、なのでしょう。フォークト=カンプフ検査もそのための装置ですし。

ただ、ホントにそれだけかなー?とも思ってしまいます。

デッカードにしても、イジドアにしても、それぞれの中にある正義というか、良心に従って行動した、或いは考えた、ということが大事なのではないかと。それは彼らが育ってきた環境に起因するものかもしれないし、元々持っている資質のようなものだったかもしれません。

とにかく、彼らは助けたり、考えを変えたり、悩んだりしました。行動したんですね。

それを思うと、多分「人間らしさ」って感情移入するだけじゃなくて、感情移入したその先に何をやるか、っていうことなのかなと思います。

展開は面白いけど…

で、物語の展開の方なんですけど、ちょっとこれがまたよくわからないところが散見されるんですよね。

デッカードがアンドロイドの罠に落ちて、見知らぬ警察組織に逮捕されてしまうんですけど、先ずこの施設は何なのか、そしてこの中の誰がアンドロイドで誰が人間なのか、もう謎だらけ。

確かにスリリングではあるのですが、いかんせん全てが薄ぼんやりと霞を透かして見るようで、よくわからなかったですね。

最終的にはアンドロイドの告白で全体のからくりが暴かれるのですが、それでも今ひとつ謎。割と辻褄の合わないところが多いです。

そしていよいよ物語は佳境に入っていく、というところもなんだか辻褄が合わないように思いました。

マーサー教のマーサーは売れない役者の過去の映像だったり、レイチェルは実は賞金稼ぎ相手に色仕掛けをして仕事をさせにくくしたりと、二転三転の展開は確かに息をつかせぬような意外性に満ちています。

でも前の展開と整合性がないように思うものも多々あるんですよね。面白くはあるけど、「あれ?」と思い、若干ついていけないところもある。

だってレイチェル、前半では自分がアンドロイドだと思ってなかったじゃんw

まぁそれもね、アンドロイド側、アンドロイドを製造するタイレル社側のチームワークによる人間側への揺さぶり、といった展開だと思えばそうなんだろうけど、ちょっと気をてらいすぎというか、複雑にすぎるような気はしますねぇ。考えすぎちゃったかな、というか。

それから、物語ラストに向けてのデッカードの行動や心情の変化が、その場その場で唐突過ぎて、ちょっとついていけなかったし、わからなかったですね。

結局、マーサーとは何だったのか? レイチェルはどうなったのか? 謎は残ったままだったし、最後もハッピーエンドなのかバッドエンドなのかよくわからず、もやもやした感じというのが正直な印象です。

ただ、奥さんとは冒頭とは打って変わって、しっくりと愛を取り戻した感じ。じゃあ、ハッピーエンドじゃん。

人と似ているものを壊すと人間性が失われるか?

そんな感じで、岡田斗司夫の強い影響の下、読み返してみたんですけどw ちょっと思っていたのと違いましたかねぇ。

何が違ったって、デッカードが人と区別のつかないほど人間そっくりであるアンドロイドを殺しまくったら、逆に人間性を取り戻していった、っていうところ。

なんかテーマと逆ですよね(^^;;

ただ、単純に逆とも言い切れないような気もします。

デッカードはアンドロイドを殺していく毎に、どんどん疲弊していってるように見えたんですね。

デッカードはルーバ・ラフトとの出会いによって、アンドロイドを殺す毎にその意味というか、自分のやった行為に向き合って、考えていったのかもしれない。

だから、アンドロイドを殺す毎にどんどん疲弊していくんですけど、その疲弊と引き換えに、だんだんと人間性を取り戻していったのかもしれません。

そして最後、デッカードが手に入れたのは妻の愛だったように見えるんですね。

ここは、人は人に似ているものを壊すと人ではなくなる、とは確かに一見逆なんですけど、作者のフィリップ・K・ディックが、主人公・デッカードを疲弊させ、考えさせることによって、人の心を取り戻させたのかもしれない。

そう思うと、なんとなく辻褄が合うような合わないような。

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