『THE GUILTY』というデンマーク発のサスペンス映画を観たのですが、『search』以上にアイデア勝利で、『search』以上に物語がよくできていました。
なんせこの映画、電話越しに事件を解決するというワンシチュエーションのサスペンス!
極めて作るのが難しい状況なのですが、見事な映画に仕上がってました!
『serach』は確かに限定的だけど、ネットというアップトゥデートなツールで、しかも映像がある。こちらは電話という古典的なツールで、しかも音声しか送受信できない。
より限定的なシチュエーションなんですね。これでどうやって映画撮るのか?!って感じなんですけど、いやあ見事でした!
役者の演技すごかったですね。緊迫感や焦りや怒りや悲しみのようなものを表情(無表情も含めて)、または雰囲気でも表現していたように思います。
撮り方、演出も上手かったですねー。丁寧に効果的になるように考え、カットを重ねている。
また、場面によっては長い間があって、それにすら表情があるようでした。電話の向こうも丁寧に作っていたように思います。
音が効果的で、そして声の演技が素晴らしい。また、それらに対する主人公の細かなリアクションもすごい。
伏線の張り方も絶妙。伏線張ってます、というのではなく、小出しに「何かある」と匂わせ、観客に考えさせる。その考えさせ方が上手い。
あとは何と言っても物語半ばを過ぎた時に放たれた一言ですね。このたった一言で状況が一気に逆転してしまった怖さ、そして上手さ。
今までの話の流れが一気に色彩が変わって、そして全てがわかった感じ。この「一言の逆転」ってのは今まで見たことがなかったかもしれません。あまりにも見事すぎました。
それもこれも主人公のミスリードが原因なんですけどね。誘拐事件と思しき事象に関連する人たちの関係が自分の家族と似ているため、主人公が感情移入しすぎてしまったから起きたことだと思います。その状況設定も上手いですねー。
そして最後の最後、主人公が全てを告白して事件を解決に導くのですが、それは懺悔のようにも聞こえました。最後の最後、全てをさらけ出した主人公が、一人の命を救う。映画の中の全てが繋がるのも見事なのですが、人間の多面性が突き詰められたように思いました。
この映画の原題はデンマーク語で「犯人」を意味するのですが、日本では「THE GUILTY」。原題よりも更に踏み込んでこの映画を表しているような気がします。
この映画における罪とは誰のどの行為なのか。突き詰めて考えれば、この映画で罪を犯したのは、主人公の警官だけかもしれない。
そして、彼は最後、罪を告白することにより、他の誰かを救うことで、罪をほんの少しだけ雪いだのかもしれない。しかし、各々が奪った命は戻らない。意図がなければ罪ではないのか。罪を雪ぐことはできるのか。多分できないようにも思う。
とにかくすごい映画でした。