azzurriのショッピングレビュー

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僕が買ったもの、観に行った映画・ライヴなど、要は金を払ったものに対して言いたい放題感想を言わせてもらおうというブログです。オチとかはないです。※ネタバレありまくりなので、注意!

「コップクラフト」一巻感想。剣と魔法の異世界と海外刑事ドラマの異種格闘技戦!

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コップクラフト」というTVアニメがありまして、すごい好きで毎週楽しみに観ていました。

元々は、次のシーズンのアニメは何を観るかを調べていたところ、村田蓮爾キャラデザということで目に留まり、どんな内容か見てみたら、なかなか面白そう!ということで第一話を観て以来ハマッてしまいました。

割と低予算で作られていたらしく、時折作画が崩壊気味になるきらいはありましたが、内容が非常に面白く、主役二人の対照的なキャラも魅力的で、最後まで飽きずに観ることができました。

元はガガガ文庫ラノベが原作ということで、大体において小説の方が映像作品より細部が丁寧に描写されているし、警察モノなので、細かい内容は小説の方がわかりやすいだろう、ということで買って読んだのですが、これがまた良かったんです。

作りそのものが凝りに凝っているのが楽しすぎました。

異種格闘技戦のような設定

先ずどんな話かというとですね、「剣と魔法の国」と現代アメリカの警察、という異種格闘技戦のような組み合わせなんです。

「剣と魔法の国」と現代アメリカの警察。

どうです? そぐわないでしょうw

麻薬や売春、殺人事件などゴリゴリの凶悪犯罪を相手にする警察組織というハードボイルドな世界とは、およそ最もそぐわない、相容れない世界である剣と魔法と妖精のファンタスティックな世界を掛け合わせたわけですから、これはもう異種格闘技戦以外の何物でもありません。

最近のラノベ界では異世界転生モノが隆盛を極めていますが、この作品では異世界『そのもの』が現代の、しかもアメリカに殴り込みをかけてきたのです。

突如太平洋上に超空間ゲートが現れ、異世界との行き来が可能になった、という設定です。

「子供のためのもの」というイメージの強い異世界という夢の世界と、「大人のためのもの」という感じのするハードボイルドという現実世界のガチンコ勝負。

僕はこの設定だけで、「よし、観よう!」と思いましたw

凝りに凝った大外枠の設定

そんな感じで、内容的なコンセプトも面白いと思うのですが、アニメとはまた違い、この小説自体の構造というか、コンセプトもまた非常に凝ってて面白いんですね。

読んでて、なんとなく「ハリウッド映画の字幕を読んでるみたいだなぁ」なんて思ってたのですが、それもそのはず。

アメリカで放送されたバディもの刑事ドラマ」のノベライズ版の、しかも翻訳という体で書かれていたのです。何ですか、その三重構造w 凝りに凝ってますねぇ。

しかも、ご丁寧に作者の賀東招二自身が「訳者」として解説を書いてさえいるのです。その解説も「ドラマ」の各回のタイトルを原題と、「日本で放送された」際の日本語タイトルを併記するという念の入れよう。

しかも英語の原題が割とそっけないのに対して、日本語タイトルはやたらと長く凝っていたりします。Earth、Wind and Fireの「Fantasy」を「宇宙のファンタジー」、マイケル・ジャクソンの「Beat It」を「今夜はビート・イット」と訳してしまう国民性が現れています。ここらへんの「あるある」を抑えているあたり、ニヤリとしてしまいます。

こういった「裏コンセプト」はアニメなどの映像で表現するのは難しく、小説ならではと言えるでしょう。

それぞれの世界の描き方が秀逸

あとですねー、異世界設定が細かい。

この小説での異世界は「セマーニ世界」と呼ばれているのですが、とにかく地球とは世界の概念が違う上、「世界そのもの」が違うっぽいんです。「宇宙」すらあるのかどうかもわからない。

地球側からセマーニ世界に入って、調査・探検するものの、最新の科学技術や装備をもってしても、未だ解明されていない、というまさに「不思議の国」。

この世界設定が非常に「さもありなん」で、ある種非常に「リアル」なんです。

しかも、作者はこのセマーニ世界の言語まで作ったみたいなんです。だから、セマーニ人である、主人公の一人・ティラナは物語中で時折、セマーニ語を話します。こういった細かいところの作り込みもすごい。

ちなみにセマーニ世界の文明レベルは中世くらいらしいんですけど、そこの人間の設定も、なるほど、と思わせるものです。「かつては地球人も持っていた」とされる「生命力」に溢れてるんですね。例えば、日本で言ったら、戦国時代って聞くと、なんか色々と「濃い」感じがするじゃないですかw 戦国の人とケンカしたりとか、何かで競争したりとか、勝てる気しないじゃないですかw それと似たようなニュアンスだと思います。

で、生命力旺盛であるが故の、日常的な血生臭さもあるんですね。ざっくり言ってしまうと、現代アメリカ人からすれば残忍すぎるようなところがセマーニ人にはあるんです。これも日本の戦国時代に当てはめてみると割と理解しやすいと思います。そういうセマーニ人特有の残虐さを、ティラナは所々で見せ、主人公であるケイ・マトバを驚かせ、また嫌悪させてしまうんです。

ここらへんが剣と魔法のファンタスティックな世界と言えども、「夢の世界」とも言い切れない、一筋縄ではいかない点で、面白いところだと思います。

また、現代アメリカの警察の描写も丁寧ですね。警察の組織や、捜査の仕方、使用する武器などなど非常に細かく詳しく描写されていて、警察小説としての側面すらあります。そして時には政治小説の側面すら見せ、現代のアメリカ、というよりは多くの資本主義社会の国が抱える問題も結構描かれています。

そんな感じで、双方の世界をできるだけリアルに描こう、という意図を感じます。だから、異質なものの組み合わせなんですけど、違和感がない。丁寧に描くことによって、それぞれの世界が存在することで生じる齟齬をできるだけ取り除いてやっている、そんな気がします。

そしてそれ故、それぞれがそれぞれを引き立てている、というこの小説が本来持つ魅力を上手い具合に出せているのだと思います。

キャラクターが魅力的

あとはやっぱりラノベ(ぶっちゃけこの小説をラノベと呼ぶのは、実は僕の中で違和感ありますが(^^;;)で重要なのはキャラの魅力でしょう!

このラノベの大きな特徴として、ラノベなのに主役が強面でダンディな男である点ですね。もう、ホンット、がさつで気が利かない、口は最上級クラスで悪いw それでいて仕事となると細かいところまで気が付くし、腕っぷしと銃の腕は一級品。設定は日本人なんだけど、いかにもハリウッド映画に出てくるような荒くれ刑事って感じで、一言で言うとカッコいいw

しかもアニメ版では、このケイ・マトバを演じるのは津田健次郎なんです! 彼の超低音ヴォイスがホント、ばちばちにハマッていて、マトバの魅力を更に倍化していました。もちろん、小説読んでる時は、自然と脳内アフレコされてましたね。ええ。

一方のティラナは、若干定型的なきらいはあるものの、却ってそれが「ハードボイルド世界代表」のマトバとの対比を浮き彫りにしている効果があります。マトバと違い、こちらは貴族の出なので折り目正しく、言葉遣いも高貴(偉そう)です。でも、マトバに一歩も引かずにやり合う感じが、読んでてすごく楽しいです。ここらへんの人物造形や会話のやり取りも上手いですね。

それに、村田蓮爾の手によるデザインの効果も大きいでしょう。小説読んでる時はティラナが登場するといつも脳内出演してました。

あと、マトバのデザインもカッコいいんですよね。村田蓮爾というと、まぁぶっちゃけロリっ娘のデザインで一世を風靡した感はありますが、実はダンディな男デザインがめちゃめちゃカッコいい! 以前、「ROBOT」という雑誌を買ったことがあるのですが、この時に村田蓮爾の男デザインもカッコいいです。

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現代の世界を予見?

この二つの世界の関係なのですが、幾つかの衝突や戦争を経て、現在は共存への道を模索している、という段階。

その、異なる二つの世界が交わっていく感じが、世界の分断が進みつつある現代を見越したような内容です。

異文化交流、異文化による軋轢を綺麗ごとではなく、そこに起こる問題をかなり現実的に描いています。甘い融和や、にべもない反発だけではなく、もっと闇が深い「利用」ということが描かれているんです。

つまり、お互いにないものを上手い具合に利用して、そこに付け込む。まぁ、ぶっちゃけ商売です。それも闇的な。

二つの文化が出会う時に、実は必ず起こることで、だからこそ、この小説が警察モノとなったのも、必然だったのかもしれません。

そして、今回の事件の根本的な動機、原因となったのは、異文化の人間への恐怖、そこから引き起こされる差別なんです。それは、メインとなる事件だけに留まらず、小説全般を通奏低音のように流れています。そもそもの主人公二人の出会いの感情も、この差別、そして裏に隠された恐怖だったのです。

この、異文化が出会う時に必ず生まれる人の心の動きを、この小説は真っ向から描いています。

「俺たちはこいつらに負けるんじゃないか」

この台詞はマトバから語られるものですが、異質の文化と出会った際に、人間はそう感じ、そこから差別が生まれるのかもしれません。

ちなみに、上記の台詞は、セマーニ人に向けれたものではありません。日本人であるマトバが中国人に向けられて感じたことです。

中国、また韓国や台湾にも、完全に置いてけぼりにされた今の日本を予言するような台詞です。ちなみにこの小説が刊行されたのは2009年のことでした。

異種格闘技戦的なエンタテインメント感溢れる設定からスタートしていながら、実は冷徹なまでに世界の問題を見つめている作品が、この「コップクラフト」なのだとも思います。

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