「メイドインアビス」の最終回を観たのですが…、いやー、参った!
最後の最後にとんでもないものを見せられた気がします。
なんつーかねぇ、イライラが止まんなかったw
言っちゃうと、ボンドルドですねw あのやろう、マジでイカつく。
まぁ、そんな感じでアニメ観てここまでイカつくことは実に久々だったのですが、そんな中にあって、希望じゃないんですけど、なんというか、強く生きるというか、それ以前に、そもそも「生きる」っていうことを強く表現した作品でもあるように思いました。
ちなみに、最終回は47分で、多分本放送では1時間スペシャルだったのでしょう。だから、第13、14話ブチ抜き企画って感じなのだと思います。
PV
ミーティ
前回の「ミーティを殺して欲しい」という衝撃のラストからの続きから始まるのですが、案の定レグは火葬砲の副作用でぶっ倒れていましたw それからナナチとミーティの過去についての回想となります。
ナナチは元々は北の地方に住んでいた孤児だったらしいのです。この時のナナチは、現在のようなウサギの獣人的な姿ではなく、まだ普通に人間の男の子の姿をしていました。
その孤児院の元に、ボンドルドという白笛の男がやってきて、みなさんを探窟家にします!みたいなことを言います。これがホント、悪魔の囁きですね。
アビスに憧れていたナナチは、当然のことながらその誘いに乗ります。いや、乗ってしまいます。そしてアビスの街に来るのですが、そこで出会ったのがミーティです。
そしたら、そのミーティがめちゃめちゃ可愛い! ここで一つイラつきポイントができます。
「あの」ミーティがこんなに可愛かったということは、こんなに可愛いミーティが「ああいう風」になるということです。
そんなひどい仕打ちがこれから行われることが確定なわけです。陰々滅々としてくる上、そんな非道なことをする奴(大体想像はついている)が出てくるわけだから、そりゃイライラしてくるというものです。
ミーティは、その服装からして、おそらくは南国の出なのでしょう。内気なナナチとは真逆の外向的かつ、あまり深くは物事を考えないような楽天家です。
色々と対照的な二人ですが、二人には共通点があるように思うのです。それは、他の子供から疎まれやすいということです。
ナナチは、臭いからあっち行け、と故郷では同年代の子に小突かれるし、ミーティもアビスの街で似たような扱いを受けていました。
そんな二人がコンビを組むようになったのは必然であったのかもしれません。天真爛漫に見えるミーティも、ナナチと同じような傷を抱えていたのだと思います。だから共鳴したのではないでしょうか。
呪いと祝福
非常にショッキングと言うか、いや案の定だったと言うか、第五層まで送られる子供たちは、結局アビスの呪いの事件の被験体に過ぎなかったんです。
子どもたちは日が経つにつれ、一人、また一人といなくなります。そしてある日の夜中、ミーティがいないことにナナチは気づきます。ミーティを探しに行ったナナチが辿り着いたのはとある実験室のような部屋でした。
そこにはボンドルドがいて、そしてミーティはガラス張りの電話ボックスみたいなものに入れられていました。
電話ボックスは二つあって、一つには子供、そして多分、もう一つには何か他の動物を入れていたっぽいんですよね。そこで、ミックスさせていたのかもしれない。「The Fly」のような感じでしょうか…。
しかし、今回、ナナチがたまたま現れたので、ボンドルドの思い付きで、人間二人での実験となったのです。いや、こいつホント余計なこと思いつくな。悪の天才ですね。
一つの電話ボックスにはナナチ、もう一つにはミーティ。ということはつまり、ナナチはミーティが苦しむ姿を目の当たりにしなくてはならないことが、ここで視聴者は知ることとなるのです。
そして、電話ボックスは一気に第六層まで落とされます。そこで二人見たものは、二人の前に被験体となった子供達であろう異形たちだったのです。
そして今度は第五層まで一気に上昇。二つの電話ボックスは、一つの側にアビスの呪いを押し付けるというのです。それはミーティの電話ボックスでした。
ミーティはリコが受けたような状態になり、更に形が崩れていって、今のミーティになってしまうのです。
一方、ナナチはウサギのような見た目、つまり現在のミーティの姿に変わっていきます。その間、ナナチは電話ボックスの中で何もできず、ただただミーティを見ていることしかできない。
その後、ミーティはボンドルドの拷問と言える実験の中、何をやっても死なない体になったことをナナチに教えます。
ミーティは実験ボックスの中にいる時、ナナチに、アビス信仰にあるように、死んだら魂となって星の底へ還り、命を願った者のところへ形を変えて旅に出る、ということを願いました。
でも、死ねなくなったミーティはそれすらできなくなったということなんです。
探窟家になる夢に溢れたミーティは、こんな形で夢を潰され利用され、挙句魂の旅に出ることすらできない。
もう、ホンット、ボンドルドに対する怒りは頂点に達しました。
そしてナナチはミーティを施設から連れ出し、逃げ出したのです。
火葬砲
だから、ナナチはレグにミーティを殺すよう頼んだんです。
死ねなくなり、傷も直ってしまうミーティですが、彼女の左目はボンドルドが使った火葬砲とよく似た武器で潰されて以来、再生しない、ナナチは言います。だから、火葬砲を見た時のナナチは「ようやく見つけた」思いだったでしょう。
また、ナナチはミーティを殺す毒を開発するため、何人もの探窟家を殺していたらしいんです。ナナチの家の周りには夥しい数の墓標があるのですが、それらは全てナナチが殺した探窟家のものと推察されます。
そしてレグは逡巡した挙句、ミーティを殺す決心をします。最後、ミーティの周りにはナナチの作ったヌイグルミや、草で作ったアーチ、花が飾られていました。最後の手向け、ということなのでしょう。それが一層悲しさを際立たせていて、もう何というか、やりきれないというか…。
そしていよいよ火葬砲を…というところで、ナナチは最後にもう一度だけ、泣きながらミーティを抱きしめます。そして今度こそ、本当に火葬砲を打つのです。火葬砲とはよく言ったものだな、と思います。そして、ミーティは完全に消えてしまうと、ナナチは更に号泣するのです。
リコとミーティとボンドルド
火葬砲を打った影響で例によって機能停止したレグが目を覚ますと、楽しそうに料理するナナチとリコの姿が目に入ってきます。ミーティが消えたのとほぼ時を同じくしてリコは目を覚ましたようです。
するとレグは、リコは死産していたがアビスの呪いで動き出した、というようなことをナナチに告げます。リコの前でとんでもないデリカシーのないことを言い出したのですが、言わんとしていることは、なんとなくわかります。
ナナチはそのことを途中で遮りますが、やはりミーティの魂はリコになったのではないかと解釈したい。
そして、リコは夢の中でミーティに会っていたらしく、ミーティは自分以上に怖がっていたと言います。そう、ミーティはずっと怖がっていたのです。人格がないと思われていたミーティでしたが、怖がっている、ということは人格はあったということではないでしょうか。
それに、最後にナナチがミーティを抱きしめた時、ミーティの瞳にはナナチが映っていました。瞳に映る、ということはアニメ表現では「認識している」ということです。認識とはつまり、人格があるということです。
だから、逃げ出したナナチと暮らした時間は、ナナチ一人の時間ではなく、ミーティと二人で暮らした時間だったと、俺は解釈したいです。
そして思うに、リコとミーティはアビスへの強い憧れという点ではすごく似てると思います。
そして、その憧れの強さという点では、あのボンドルドも同じかもしれない。それが強すぎると、ああいう化物になってしまう。ナナチは自分たちは成れ果てだと言っていますが、ボンドルドこそ、成れ果てだと思うのです。あれはもう人間ではない。
探窟家の中でもボンドルドのやっていることには否定的な者もいるようで、実際ボンドルドに抗議する人もいました。それを考えると、ボンドルドのやっていることは探窟家全体の意向ではないのだと、思いたいです。
リコの強さ
そして今回、またしてもリコの強さを目の当たりにする思いでした。
左腕に傷が残り、しかも親指しか動かなくなってしまったリコ。そのことを謝るレグですが、リコはこの傷はレグが自分を助けてくれた絆の証だ、と高々と掲げてみせます。
普通、女の子は自分の体に傷がついたらショックだと思うし、またそれは当然のことだと思うのですが、リコはそのことを、レグに気を遣っているでもなく、本気でそう思っている節があるんですね。
前向きに捉えるとか、そういう次元ですらない。本気で証だと思ってる。
これはめちゃめちゃ強いことだと思います。
相変わらず料理はうまいし、リコがますますカッコよくなっていく。
見事なエンディング
今回は辛いし、イカつくし、色々と思うところのある回だったですが、箸休めとなるような楽しく、ほっこりするようなシーンもまた多かったように思います。そこらへんのバランス感覚もすごいですよね。
あと、リコが最後にナナチを、自分たちの冒険の旅に誘うのですが、察していたのか、何のてらいもなく即答するナナチがまた良かったですねぇ。
最後に家を出る時、あの家はミーティを模したものだったことが今更ながらわかりました。遅いですよね、いい加減俺もw あの家はナナチのミーティへの愛に溢れた家だったんですね。
ボンドルドに対する怒りがある一方、ナナチのミーティに対する思いが、そういう細かいところ(細かくないか)からも感じられた回でありました。
そして、その気持ちの深さは、ひょっとしたら孤独の深さの表れでもあるのかもしれません。孤独が深い分だけ、信じたその時は、すがるようにその気持ちも深くなる。
そして、街に届ける手紙がアビスを上昇していく時、総集編的にやっかいだった動物や第二層の人たちが登場するエンディングも秀逸だったと思います。それらは善も悪もない、普通にアビスに生きるものたちであることが良い。
そしてあの手紙は一体何だったのでしょう? 見事な最終回にして、次回以降も期待大な最終回だったと思います。
魔法の料理
また印象的だったのは、ミーティを失くした後、リコの作った料理をナナチが食うシーン。
ナナチは涙を流しながら、美味しい、と言って食べていました。
辛いことがあった後、美味しい料理を食べて、ほだされるように泣くというのは、なんというか、真理な気がします。
あと、それまで(ナナチが料理が下手なこともあり)ナナチが美味しい料理を食ってこなかった、というのもあったのでしょう。それを思うと、ちょっとした人物の癖のようなものが、後々の伏線になっている、上手い作りだと思います。
あと、個人的には、どことなくBUMPの「魔法の料理」を彷彿とさせました。あの曲で描かれていることは、今回のシーンとイコールというわけではないけれど、どこか似たようなところがあると思うのです。