学生の頃、渋谷系が好きで、結構聴いてましたね。その頃隆盛を極めていた小室系とか、ビーイング系よりも断然好きでした。あ、小室哲哉で言うとTMネットワークは大好きでした。
でも、その渋谷系に大きな影響を与えたこのアーティストを知ったのはごく最近という…。
ROGER NICHOLS & THE SMALL CIRCLE OF FRIENDS
いや、これはちょっと我ながら恥ずかしいですねーw
聞けばかなり有名なバンド(というよりは人?)ですからね。
みのミュージックというYouTubeチャンネルで紹介されていたのを聴いてみて、「これはいい!」と思い、購入。
なぜ知らなかったのか、自分でも謎です。割とスレスレのところをすり抜けてきたのやもしれません。
渋谷系
先ず、一発目の「Don’t take your time」のね、イントロのストリングスからもうやられましたよ。その最初の出だしの音だけでわかる、「あ、俺これ好きだわ」感。
そういう人間の勘って、バカにできないものがありますよね。
で、案の定全編聴いてみて、すごく良くて、それからしばらく、一ヶ月くらい…それ以上かな? このアルバムしか聴いていませんでした。
それくらいインパクトありましたね。
ま、ホントねー、実に渋谷系っぽいw
ライナーノーツは、まぁ、かなり独特な文体で、多分一般的には全然知られていない友達の名前と話を出してきたりして「誰だ?こいつ」と思ったら小西康陽でしたw
知ってる人だと思うと、急に「なーんだ」とか思って、好意的になっちゃうっていうのは、まぁよくある身勝手な話で。
そのライナーノーツによると、ピチカートファイヴもかなり影響を受けたようで、「Love song,Love song」というまんま同じタイトルの曲まで作ったらしいです。
でも、アルバム聴いてみると、どちらかというと初期フリッパーズギターの方が強く(まんま)影響を受けている感じですねぇ。
女性コーラス
何回か聴いてみて、一番印象に残った好きポイントはコーラスワークですかね。
主に男女二人のコーラスなんですけど、これがまた良い。コーラスのフレーズやハモり具合も良いし、声の相性も良い。
しかし何と言っても良いのが女性の声ですね。それも、コーラスの時の高い声。
これがね、そりゃもちろん女性の声なんですけど、どことなく少年の声を彷彿とさせる、少年ボイスなんですよ。むしろ、なんとなくボーイソプラノって感じ。
この、女性なんだけど少年みたい、っていう、性のどっちつかずな感じがすごく良くて、なんか聴いててむしろ切ないっていうか。不思議なんですけど。
その感じがですね、素晴らしく良いし、すごく好きです。
ギターがない?!
そんな感じでフリッパーズギターに強い影響を与えたであろうRoger Nicholsなんですが、なんとあんまりギターが入っていないんです。
よく聴くと鳴っているのですが、あまり前面に出てこない。むしろ、ストリングスやピアノ、トランペットの印象が強いです。いわゆるオーケストラで使うような楽器ですね。
ロックやポップスって、なんだかんだでギターの音楽じゃないですか。それなのに、ギターが一切主張することのない音楽なんです。
逆にそのことが、主となるメロディや、ハーモニーやコーラスワークを消すことなく、じっくりと聴かせることの一助になっているように感じます。いやむしろ、だからこそギターの存在感を後退させたのかもしれません。
そう思うと、非常にアレンジの戦略が上手いと言えるかもしれません。
ついでに言うと、ギターデュオであるフリッパーズギターが、ギターの存在感のないRoger Nicholsを参考にして、ギターバージョンのRoger Nicholsをシミュレートしたのだとしたら、それもまた上手い戦略だったのかもしれません。
カバーが良い
あとそれから、カバーがすごく良いですね。中には原曲を越えてるカバーもあるくらい。カバーで原曲を越えるってあんまりないし、すごく難しいことだと思うんですけど、それをやってるんですよね。
特に印象的なのは「I‘ll be back」と「Our day will come」。
「I‘ll be back」の大サビのところで全てのパートをキメで一斉に休符にしちゃうとことか、もう最高! ここがなんつーか、すごく切ない印象を与えて、余韻が引く感じ。しかもさっき言った『女性の少年ボイス』でキメてくるから、余計にそう感じるのでしょう。すごく良いんだよなぁ、ここ。
あと「Our day will come」も大胆にテンポをアップさせて、この曲の新しい魅力、新しい側面を見せてくれています。聴かせてくれて、というべきか。この感じがまたオシャレポップという感じで、素晴らしいアレンジですね。これもまたテンポから使用する楽器から、アレンジ面での戦略の勝利だと思います。
アーティストの輪
そんな感じでですねー、非常に素晴らしいアルバムなんですけど、一つだけ難点がございまして。
それはですねー、楽器とかの細かいクレジットがないということなんですねー。誰が弾いてるかわからない。だから、さっき言った、僕が非常に惹かれた少年ボイスの女性コーラスが誰だかはわからなかったりします。
まぁこれ、1967年の発売なので、そういう時代性なのかもしれないんですけど、これはちょっと寂しいですね。
ただ、プロデューサーとか作詞者・作曲者とか、そういう「偉い人」の名前はバッチリ書いてありました(「偉くない」人のクレジット書いて欲しいですが。ここらへん、音楽界の明確な階級制を感じてしまいます)。これは嬉しかったですね。
そして、そこで目にしたプロデューサーの名前にビビった。なんと、トミー・リピューマ!
アメリカ音楽界のドン的立ち位置にして、僕の敬愛するYMOを見出した方でもあります。
僕らYMO信者からしたら、そりゃ有名な名前ですから、ライナーノーツでその名を発見した時はそりゃビビりましたよ。
そして、なんとなく納得もしましたね。やっぱ好きな音楽同士は繋がっているんだな、って。