『ベイマックス』を観てきました。最初はあんまり興味なかったのですが、何でも今度のディズニーの新作の舞台は東京という話を聞き、ハリウッドのアニメーターが東京をどう描くか(正確に言うと、東京をモデルにした近未来都市)、非常に興味がありました。
さて、そんなわけで観に行ったベイマックス。いやー、最高でした(^^) 街並みは期待通りの素晴らしさ! 東京でありながらそこはやっぱりちょっと違う。近未来的なテクノロジーに溢れているものの、雑多で混沌としている。ウイリアム・ギブスン的な近未来感を漂わせつつも、やはりそこは東京でした。「あ、ここ見たことあるなー」と思ったほどです。多分新橋、歌舞伎町あたりかと思われるのですが、よく描けていて、よくある勘違いした日本にはなってなかったですね。それに基本的には綺麗な、機能的な美しい街並みで、「こんな町に住んでみたい、行ってみたいなー」と思わせる素晴らしい場でした。ちょっとした観光気分も味わえる、映画の大きな魅力のひとつです。
また、ストーリーの方も少年の成長物語という感じで非常に僕好みでしたね~。つーか、最終的には戦隊ヒーローモノになってましたw この映画を作った人たちは場の設定を東京にしたのみならず、日本のエンタメ文化にも相当精通しているのではないでしょうか? 特にベイマックスとの別れ、そして再会のシーンはあの名作エロゲー「TO HEART」を想起させます、っつーか、そっくり。
そして何よりもこの映画の最大の魅力はベイマックスのやさしさに通ずるゆるさですね! あんなに弛緩したアクションシーンは見たことありません(笑) おそらく歴史上最もユルいアクションシーンではないでしょうか。また、彼のその佇まい。走ることができない(後改造されますが)、すぐ破れる、障害物はよける、デザイン的にも丸が基調などなど。デカいだけで攻撃的要素が一切なく、どことなく間抜けでかわいく、そしてやさしく、見ててほんわかする。まるでマナティーのようです。
また、自分で自分を治すシーンがあるのですが、一瞬ターミネーターを彷彿させるものの、セロハンテープで治すそのユルさには笑いが止まらなかったです。しかし、そんなベイマックスがヒロに改造されて空を飛べるようになるのですが、一転、その力強さ、スピード感、浮遊感、ダイナミックスさ、そして自由さ! それは傷ついたヒロの癒しや願望を表していたのではないでしょうか? このシーンではなぜか泣けて仕方なかったです。
そんな感じで最高に大満足の映画だったのですが、なぜ欧米の映画監督は近未来の都市を描く時、東京を選ぶことが多いのでしょうか? 古くはアンドレイ・タルコフスキーが未来の場面を描くとき、東京でロケを行いました。また、「ブレードランナー」でも未来都市を作るとき、東京を参考にしたそうです。思うに、異質なものの上に異質なものを乗せた、その奇妙な違和感が近未来を感じさせたのではないでしょうか。
そもそも現代の世界の多くの都市は似ています。それはビルのデザインが同じ、というのが一つの要素ではないでしょうか。現代の都市建築の大元はおそらくバウハウスが原型になっていると思われますが、それはヨーロッパの建築の歴史の延長線上に生まれたもので、ある意味必然的に生まれてきたデザインだったかもしれません。その意味で、元の土台は同じと言え、印象としてはごくごく自然に見えると思います。
一方、日本では明治維新、または戦後、急激な西洋化・都市化が起こり、その産物として都市建築が導入されました。しかし、土台となる文化がまるで違うので、欧米の都市と同じような外観ではあるものの違和感はぬぐいきれません。似てるようでよく見ると違う。この点に欧米の人たちは異世界を感じ、ひいては(人によっては)近未来を感じたのではないでしょうか。