去年観た数少ない邦画で(全然毛嫌いしてないです。観たかったけど、観る前に上映終了していた映画もかなりあった)「さよならくちびる」というのがあったんですけど、俺の中で、正直どう評価していいか迷う、という作品です。
ちょっと古くて、ダルい要素もあるんだけど、結果面白かったという不思議な映画でした。
僕が感じた「さよならくちびる」は、以下こんな感じでした。
予告編
表現(演出)が古いのに面白い!
脚本というか、作品自体は音楽、女子二人のアコースティックユニットをテーマとしているものの、描き方や表現やシーンがことごとく古いんですね。80年代、良くても90年代の表現を2018年の7月を舞台にしてやっているという、ちぐはくな感じでした。
人物の造形も古くて、特に小松菜奈演じるレオは一昔前のイタイ女、という感じ。今も、いつの世もこういう子いるんだろうけど、古くはあると思います。酒と男にだらしなく、妙にいきがってカッコつけてる。自己顕示欲の強い女、という感じ。
他にも、主人公の女の子二人に寄り添う男が対バンの革ジャン着た連中に殴られたり、表現がいちいち古いんですね。
上映中、同時期にテレビで放映していた「キャロル&チューズデイ」はやっぱり面白いし、それなりに新しいテーマ性でやっていたんだなぁ、と思ってしまいました。
途中までは、これはハズレだなぁ、と思って観ていたんですけど、三人の関係が台詞として明確になってからは意外にも面白くなっていって、ビビりました。
話も面白くなっていった上、ラストに二人が解散してもしなくても、どっちに転んでも面白い展開になっていって、もうその時点で映画的には勝ちですよね。この後半の持っていき方は素晴らしかったと思います。
当事者たちだけがわかる何とも言えない人間関係
この話の肝はやはり主人公三人の「何とも言えない感じ」を表現したかったのだと思うので、そこは表現できていたのではないかなぁ、と思います。
その感じとは、僕が思うに、それぞれが抱えている挫折感や辛さや好意とか色々なものがぐっちゃぐちゃになった、その三人でしかわからないものなんだと思います。
その感じは当然この三人でしかわからないと思うんですけど、「ひょっとしたら当人同士でさえもわからない、うざったいけど大切なもの」というのは多くの人がそれぞれの人間関係の中で持っているものだと思います。
「個人的」だけど広がりがある、そんな感情や関係性そのものを描きたかったの
かなぁ、と僕は観ました。
主役三人が魅力的
また、それを表現できていたのは主要人物三人の魅力に依るところが大きかったですね。
小松菜奈はやっぱり可愛いし、門脇麦は良い表情するし、成田陵は女の子二人の間でやけにカッコ良く見えたし、それぞれに演技も良い。
表現方法はちょっと古臭かったけど、この三人が瑞々しく演じていました。それぞれに微妙な表情の変化で感情を表現していて、良かったですねぇ。
やっぱり音楽が良かった
また、音楽が良かったことも古臭い表現を救っていたように思います。
ここで言う「音楽」とは、もちろん曲もそうなんですけど、二人の歌が良かったです。
上手くもある(但し、そこまで上手くはない(^^;;)けど、持ち声が良いんです。やはり良い役者は声が良いですね。一声、二姿、三芝居っていうくらいですから。
曲的には、秦基博とあいみょうんが作っているのですが、超個人的に言わせてもらうと、やはり秦基博の曲の方が良かったかもしれないかなぁ(^^;; 主題曲の「さよならくちびる」はやけに良い曲に響きました。
ラストの門脇麦の表情が良かった
そして、ちょっと思ったのが、最後はどうも解散撤回で終わりそう(そこまでは描かれていない)なんですけど、また再び三人でやっていく流れになった時の門脇麦のちょっとだけ嬉しそうな、ホッとした安心したような表情がすごく良かったです。
他の二人はこの先音楽がなくても、不器用ながらそれなりにやっていけそうなんだけど、ハルは音楽なしでは全く生きていくことができないと思うからです。
それは色々と理由があってそう思ったんですけど(それ故、音楽の才能がある、という設定もどこか腑に落ちる)、だから、ハルが嬉しそうな、安心したような笑みを少しだけ見せた時は、「良かったなぁ」と思いました。