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僕が買ったもの、観に行った映画・ライヴなど、要は金を払ったものに対して言いたい放題感想を言わせてもらおうというブログです。オチとかはないです。※ネタバレありまくりなので、注意!

H・G・ウエルズの「タイム・マシン」ネタバレ有り読書感想。現在のアニメの世界観の礎を築いた?!


H・G・ウエルズの「タイム・マシン」を読んだんですけど、いや面白かったー!

ディストピア小説の括りで語られることが多くて、僕もそのつもりで読んだんですけど、確かにその側面もあります。

でも、基本的には冒険小説であり、アクション小説であると思いました。めちゃ面白いです。

ま、普通ディストピア小説は基本的には近未来について書かれることが多いんですけど、この作品は80万年後の遠未来について書かれる上、最終的には地球が終わる日にまでタイムスリップするという。

そういった意味でも、多くのディストピア小説とは一線を画しているかもしれないですね。

ちなみに僕が読んだこの岩波版には、長編の「タイム・マシン」以外にもですね、他にもSF小説や、ちょっと変わった世界の小説が多く掲載されていて、どれも面白かったので、非常にお勧めの一冊となっております。

というわけで、この本の僕的面白かった点は以下3点!

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「われら」との違い。大英帝国ロシア帝国か。

このブログでも紹介したディストピア小説「われら」は、作者がロシア人、つまりソ連というお国柄か、言ってみれば割と固い感じの語り口だったのに対して、こちらはイギリス人の作家であるためか、割と軽い感じの語り口だったのが面白かったですね。そこら辺、やはり資本主義と共産主義の違いはあるように思います。

また、「われら」は反全体主義というメッセージが掲げられていて、当時のソ連が作られる前後、全体主義に邁進していった時代に書かれた小説なので、非常に切羽詰まった政治的主張の強い小説でありました。

対して、こちらの「タイムマシン」は基本は冒険小説であるし、政治的なメッセージも(あるかもしれないけど)希薄である、という点も作風の違いの大きな理由かもしれません。

ただ、個人的には共通していると思うのは、語り口の上手さですね。

「われら」同様、上手い方法を取っていると思います。

物語の基幹の部分は時間飛行家が仲間に語って聞かせる、というスタイルを取っています。そのため、こちらも「どういう状況で話してるんだ?」問題を上手く回避することに成功してるんですね。

ただ、ラストはイギリス人らしいブラックジョークで終わっていて、後味はあんまり良くないですかね(^^;;

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19世紀当時のUKの世相を反映

政治的メッセージは希薄と言いつつ、19世紀当時の世相を反映している作りではありました。

先ず、未来社会が資本主義社会、或いはイギリス特有の階級社会を突き詰めるところまで突き詰めた社会の果ての世界であることは、この「当時の現代社会」の風刺とも捉えられます。

また19世紀の段階から、男女差はいずれ希薄になるし、その傾向は既にある、と書かれていたのには驚きました。

日本では21世紀以後特に顕著になった傾向であると思うんですけど、その萌芽は既に19世紀イギリスにあったんですね。

さすがに産業革命を起こした国なので、そういうこともいち早く起こったんでしょう。

逆に言うと、現在の日本を含めた資本主義社会の世界の根幹は、19世紀から二百年近く地続きであるということなのかもしれません。それは驚きですね。

この作品がその後のアニメに多大な影響を与えた?!

大抵の文庫本には巻末に解説があると思うんですけど、その解説欄を読んで「なるほど」と思ったのは、「科学的」な根拠に基づいて作られた最初のタイムトラベル物である、という点でした。

それまでにも時間旅行を題材とした話はあるにはあったらしいんですけど、そこに科学の視点を付与したのは、この作品が最初だったらしいんです。もちろん、科学といっても「フィクション科学」なんですけど、それまでは大体オカルトの分野の話だったらしいんですね。それが一気に科学の側へとシフトしたわけですから、見え方的には全然違うでしょうね。

また、そういった「現実感」をもって時間旅行を描いたことによって、読み手も含めて、物語における時間感覚が一気に変わったらしいんです。

それまでは時間というと、過去から未来へという一方通行のものだったわけです。それがキリスト教圏の人からすれば、尚そうだったと思うんですね。伝統的に生まれ変わりの思想がある古来からの日本の時間概念では、時間というのは円環を成しているのとは対照的です(もちろん現代の日本人は違います)。

それが、時間というのは、もちろんフィクションの世界限定ではありますが、行ったり来たりできるものへと変化した。時間という概念が、壁が取っ払われて、一気に広がったようなものなんです。この変革は確かに大きいと思います。

大げさに言えば、今日の多くのアニメ作品やSF映画などはこの「タイム・マシン」がなければなかったと言えるかもしれない。

だって、多くのアニメって、この時間を現代からの目線ではなく、過去から未来からの視点で描かれていますからね。逆に言うと、その柔軟で広い視点で物語を作ることができるようになったと言えるでしょう。

あとちょっと思ったのは、この作品のタイムマシンはイギリスの裕福な階級の科学者によって作られているため、真鍮が使われていたり、何かと高価そうなのが印象的。

また形状的には後のドラえもんのタイムマシンはこの作品からかなり影響を受けているであろうことが面白いです。

 

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