いやー、久々、「鬼滅の刃」全巻感想というマラソン企画。今回は第18巻!
遂に18まで来ました。なんとなく、「18」って言うと20まであとちょっと感がありますよね。ほとんど20巻というか。全23巻なので、いよいよラストスパートといったところでしょうか。
ところでこの18巻…ヤバいです。
もうね、ホント色々と見所満載!
個人的には、これまでのところ最高傑作の巻だと思います。
猗窩座はなぜ鬼になったのか
猗窩座がなぜ鬼になったのか、その話がめちゃくちゃ良かったように思います。そこには深いドラマがあったんですね。
漫画に描き切れなかったエピソードが扉絵にも綴ってあって、全てを総合すると、この猗窩座との戦い、裏にある深度が、もう深すぎる!
猗窩座はなぜ鬼にならねばならなかったのか。こういう深みがあるから表面に表れてくるもの、この場合だとバトルシーンなんですけど、それが面白くなるんだと思います。
猗窩座は、犯罪を繰り返していたので、もちろん悪人ではあると思います。
でも、その犯罪は本当に罪だろうか、という作者の「レ・ミゼラブル」的問いかけがそこにはあると思うんです。
猗窩座を犯罪にまで追い込んだ社会にも罪はないのか、という。
猗窩座のエピソードはややステレオタイプなきらいはありますけど、でもそれだけに、人間の社会が普遍的に内包する問題を表してもいると思います。
思うに、結局、猗窩座はやさしすぎたが故に罪を犯したのではないでしょうか。
やさしすぎた彼が、社会に絶望したから、暴力を振るってしまった、そして強くなりすぎてしまった。
そしてそういうところに、鬼舞辻はつけこむんですね。そういう鼻がものすごく利く。さすが鬼というべきか、そうじゃないと物語が作れないというべきかw
また、そんなやさしい猗窩座に育てた、猗窩座の父はいかなる人物だったか、推して計るべしですね。
肉体が進化しない人間の強み
猗窩座が何百年かけても辿り着けなかった「至高の領域」に、炭治郎がこの戦いの中でやすやすと辿り着いてしまったのは、一見、いかにも「天才が好き」な少年漫画っぽいですけど、その実炭治郎が辿り着けたのは、父親まで至る脈々と受け継がれた先祖からの「日の神神楽」の伝承があったからだと思います。
確かに鬼に寿命はなく、その意味で何百年となく研鑽を積むことができます。しかし、一人という限界もあると思うんです。
一方、人の一生は鬼に比べればそりゃ短いですが、その技術は何百人となく多くの人を通っています。
その過程で、技術は改良もされれば、新たな発見もあったでしょう。その先端にいるのが、炭治郎なんです。
だから、一見やすやすと手に良いれた「透明な世界」なんだけど、そこには鬼以上の時間、そして試行錯誤が積み上げられているんですね。
そしてまた、それは炭治郎の後にも続いていくものなんです。
それは、この物語のテーマの一つでもあると思います。この「繋がっていく」というテーマは、煉獄さんが炭治郎に鬼殺隊を繋げたことでも描かれていたように思う。
この「繋がっていく」、「受け継がれていく」ということは、肉体が進化しない高度な社会的動物たる人間の最大の武器、進化でもあるわけですね。
ここの感じ、以前読んだ「ロスト・ワールド」とも繋がっているような気がします。
自己犠牲
また、猗窩座の物語は、自己犠牲の物語でもあるように思いました。
確かに猗窩座は犯罪を犯しまくってしまいました。しかしそれは、父親のために体を張って罪を犯し、汚れ者になっていった過程でもあったと思うんです。
いわば自己犠牲ですね。
そしてまた、猗窩座へ挑む、炭治郎と義勇の戦いもまた、二人がお互いを助け合った自己犠牲の戦いでもあったように思います。
最後に猗窩座は自らを攻撃して散っていきましたが、これもまた自己犠牲と考えることもできると思うんです。自らを攻撃することで炭治郎と義勇の二人を「自分から」守ったわけですから。
と同時にまた、自己救済とも言えるようにも思います。自らの魂をも救済したように見えるんです。
そしてそうさせたのはかつての恋人の恋雪でした。ここでも、人との繋がりを感じることができました。
そしてまた猗窩座は、自らを消滅させることで、鬼舞辻にも勝ったと言えるかもしれません。なぜなら、鬼舞辻の思い通りにならなかったからです。
この瞬間、猗窩座は鬼舞辻の支配から逃れられたのかもしれません。
カナヲさん、怖ぇ
また、次のエピソード、カナヲさんの戦いなんですけども、カナヲさんが相手を挑発し、芯を食うのが上手すぎたw
そして強い!
久々、頼もしい「味方」を感じましたねぇ。
ああいう普段大人しい人は、よく周りを観察しているので(だから大人しいのかもしれない)、いざ怒ると怖い。
そしてまた、カナヲさん自身が弱いからこそ、上弦第二位の鬼を「何も感じることができない」と看破できたのではないでしょうか。
弱い人間はその弱さゆえ、敏感、センシティブであるように思います。
下からしか見えない視線というか。
弱いゆえにカナヲは孤独であった。だからこそ、カナヲは鬼の「孤独さ」を看破できたのかもしれません。
空気を読まない伊之助の存在感
しかしそこはやはり上弦第二位。やはりカナヲさんも苦戦してしまいます。
そこに乱入してきたのが、伊之助です。
やはり、鬼一匹に対して隊士は複数で対決する、という構造のよう。どことなく新撰組を彷彿とさせます。
それにしても、(最後はシリアスになるものの)伊之助の空気を読まない滅茶苦茶さは、どこか作品に救いのようなものを与えているように思います。
伊之助が乱入したことで、一気に雰囲気を変えてしまう。こういうところがさすが伊之助ですよね。
ややもすると、暗くなるだけの展開になってしまうところを、楽しみ、可笑しみを与えてくれるというか。そのバランスが上手い。
かと思いきや、上弦二位の鬼と突然の因縁。ここにきていきなりの伊之助の過去が明かされます。
この急転直下な展開がすごいと思うんです。こう行くのか、と思わせといてそうはさせないというか。
伊之助の助っ人登場はちゃんと意味があったんですね。
こういう、いきなりに見せかけて用意周到、という演出が光ります。後から思いついたとしても、それはそれですごい発想力ですからね。
そんな感じで、隊士二人の憎しみが上弦第二位の鬼にどう向かっていくか。続きは次巻!