azzurriのショッピングレビュー

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僕が買ったもの、観に行った映画・ライヴなど、要は金を払ったものに対して言いたい放題感想を言わせてもらおうというブログです。オチとかはないです。※ネタバレありまくりなので、注意!

「アド・アストラ」ネタバレ有り感想。宇宙を股にかけた父子の話。

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ブラッド・ピット主演ということで「アド・アストラ」を観たんですけど、いや良かったですねぇ。

とても地味で、あまり一般受けはしそうもない映画だったんですけど、個人的には大好きな映画でした。

なんとなくミッチー主演の『クローンは故郷を目指す』に雰囲気が似ていた、心のSFとでも言うべき作品。なかなかの傑作だと思います。

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ざっくり言うと…

僕が感じた個人的で全体的な印象で言うと、太陽系を股にかけて、子が父を乗り越える話、です。

スケールは宇宙級ですが、家族というミニマムな単位のものが語られるという。まぁ、そういった意味では、ダイナミックと言えばダイナミックですね。

あと、要素的には同じ年に観た「イカリエーXB1」に似ていたように思います。

宇宙という舞台、未知の知的生命体の探査、また旅の途中で遭難した宇宙船の発見し、探査する、などなど。ちょっとは参考にしていたかもしれませんね。なんせSF映画の元祖ですから。

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舞台設定が俺好み。映像が最高!

舞台としては、ほんのちょっとの、それこそ直近未来といった設定で、超僕好みでした。日本のアニメによくありそうで、それをハリウッドの金と技術で魅せた、という感じ。

僕の超好きな世界観を実写化、言ってみれば現前してくれたので、これはもう、映像見るだけで元が取れたというもんですけど、それを超絶美麗な映像で現前してたものですから、それはもう至福の時でした。

特に月面のシーンが美しくて、且つリアリティ、というか説得力がありました。ホント、アトラクション的というか、あれちょっとした旅行ですよ。そういえば、ライアン・ゴズリング主演の「ファースト・マン」も月面の描写が非常に美しい映画でした。

で、美しいだけじゃなく、直近の宇宙未来を非常に日常的に描いていたと思います。

月へと完全に進出して、火星開発も着手してる人類なのに、相も変わらずの資源の奪い合いや商業主義に、ブラピ演じる主人公のロイは厭世を感じてしまうのですが、その感じが「さもありなん」といった感じで。

また画作りというか、全体を覆う雰囲気作りとしては、非常に重苦しくてですね、息が詰まるようでした。

音のない宇宙空間は圧迫感がすごく、精神を保つのが大変という話を聞いたことがあったと思うのですが、そういった雰囲気ですね。特に暗くて、スクリーンの大きな映画館で観ると、まさにそんな雰囲気で、そこも非常に臨場感があって、圧倒されました。

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子が父の囚われから脱却する

ブラピは厳格な父に育てられたエリート軍人という役どころで、脈拍が79を越えない鋼の精神力の持ち主。なんですけど、しかしそれは、尊敬する父の教えを頑なに守っていた結果だと思います。

それは尊敬と同時に「囚われている」とも考えられるのかなと。父親への思いは憧れと同時に疎ましく思うという反対方向のベクトルに向かっているのでは、と思います。

言ってみれば、外面的には父親のようになりたいという風に見せているけど、その実、心の奥底では、ああはありたくない、というようにロイの心情は引き裂かれそうになっているように思います。

最後は怪物と言えるほどの超人的な仕事人間の父(演じているのはトミー・リー・ジョーンズ!)と再会し、地球に連れ戻そうとするのですが、父は息子の手を離し、宇宙の暗闇へと消えて行きます。

ここで思い出されるのは「オイディプス王」を祖とする父殺しのシークエンス。でも、ロイは父を殺したわけではありません。父が自ら、宇宙の彼方へと消えていくのです。おそらく、ここに父殺しではなく、「父と子の決定的な断絶」を表したのではないでしょうか。

この父親、地球外知的生命体を探す任務についていたんですけど、太陽系外に茫漠とした無しか見いだすことができなかったようなんです。でも、それでも自分の仕事を完遂しようとしていた。彼には彼の矜持があったと思います。だから宇宙に残った。

しかしながら息子は、そんな父とは反対の方へと人生の舵を切ります。ロイは地球に帰還した後、別れそうだった、でも愛している女性との再会を果たします。それまでは、自分の仕事は危険な仕事だからと、結婚も出産もしなかった男(確か結婚してなかったと思う…多分)が、家族と共に暮らすことを決意した瞬間のように思えました。それは、仕事を選んだ父とは真逆の道で、彼自身が囚われ続けた父からの脱却の瞬間だったのかな、と思います。

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