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僕が買ったもの、観に行った映画・ライヴなど、要は金を払ったものに対して言いたい放題感想を言わせてもらおうというブログです。オチとかはないです。※ネタバレありまくりなので、注意!

「エクス・マキナ」ネタバレ有り感想。帝国側の将軍は反乱軍のエースパイロットの部下!?

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「アバウト・タイム」という映画が好きなんですけども、主役を演じたドーナル・グリーソンがすごく良くてですね。以来、非常に好きな俳優なんですけど、その彼がまた主役をやるということで、観に行ったのが「エクス・マキナ」です。

士郎正宗原作のSFアニメ「EX MACHINA」という同タイトルの映画もありました。その点でも、気になる映画でしたね。

ちなみにエクス・マキナというのはラテン語で「機械仕掛けの」を意味するそうです。タイトルからして非常にSF的な香りがしますね。

そうなんです、この映画は、そのものズバリ、ロボットの映画なんですけども、そのロボットと人間の恋愛を基本的には描いています。ロボット、というかAIといった方がしっくりきますかね。

ジャンルとしてはSFスリラーらしいのですが、非常に綺麗でスタイリッシュな映画でした。

ドーナル・グリーソン、やっぱいいなぁ

というわけで、基本的にはドーナル・グリーソン目当てで行った映画なんですけども、やっぱ良かった!

彼の演技は相変わらず良かったですね、。ナイーブな男の子を演じさせたら右に出るものはいないのではないか、と思ってしまいます。

ひょろっとした体型とか、どこかオドオドした感じとか、この映画でも特にハマッていたと思います。こういう感じの人、あまりハリウッドでは見かけないですからね。

しかし、そんなドーナル・グリーソンですが映画「レヴェナント」では将軍役というのがすごい。全然違う! こちらはものすごく威厳のある役ですからね。もう、髭面の大男。

俺、全然わかんなくて、後でキャスト調べたら、あの「アバウト・タイム」の男の子であるというじゃありませんか。えー!とかびっくりしちゃって。

もう、見た目から演技から全部変えちゃう。個人的には名優と言っていいと思うんですけどね。あぁ、だから主役たくさん演じたり、大作にも多く出演してるのか。

そうそう、スター・ウォーズでも将軍役演じてましたね。なんだか将軍づいてるなぁ。それを思うと、あのナイーブな男の子がねぇ、と勝手に親戚のおじさん的気分に浸れます。

でも、スターウォーズの将軍は割と情けない感じの役でムカつく役どころでもあるんですけどね。でも、その感じがまた上手い。さすがですねぇ。

登場人物で言うと、社長役のオスカー・アイザックスター・ウォーズのポー・ダメロン役を演じてるんですよね! これまたびっくりした。この映画の時は割と太かったんですけど、スター・ウォーズでは渋い大人の男担当でしたもんね。やっぱ向こうの俳優は演じ分けがすごいなぁ。

しかし、よくよく考えたら、この映画では帝国側の将軍が反乱軍のエースパイロットの部下なのですね。そう思って観ると、なんか味わい深いですね。

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ロボットと言えば日本?!

ところで、この映画は全編通して、何となく「日本」を意識して作られたのではないかと思えてしまいます。

山奥の社長の別邸からの景色は、なんとなく日本的な印象を受けるんですよねぇ。

木が風にそよぐ音だけのシーンがあったりもして。こういうのって、なんか日本的じゃないですか? こういうシーンを使う日本映画もたくさんあるし。例えば、是枝裕和とか西川美和の映画に多い印象。

あとわかりやすいところで言うと、日本人のアンドロイドが出てきたり、ですかね。

やはり、ロボットものは日本、ということでしょうか。ロボットアニメとかは有名なところですし、日本のロボット産業はすごいものがありますからね。

但し、この映画のテーマでもある「人間とAIの恋愛」ということで言うと、AIに関しては日本はもうすっかり周回遅れというか、もう完全にアウトみたいですけどね。

デザインの勝利

それで、この映画、全体を通して、えらいスタイリッシュなんですよね。

別荘のデザインなんかもですねー、ちょっとキューブリックっぽくて秀逸ですし。自然派キューブリックとでもいうべき趣がありますね。

また、アンドロイドのロボ感がですねー、なんか綺麗だった! ああいう、中のメカが見えるアンドロイドのデザインって大体キモくなるのに(キカイダーはカッコ良かったですが)。それこそ透明感があって(透明ですからね)、すごく綺麗でした。

まー、アンドロイドを演じたアリシア・ヴィキャンデルが綺麗だった、って要素は相当にデカイいとは思いますがw

それにしても綺麗でしたねー。ありゃ恋に落ちるわ。このアンドロイドを観るだけでも一見の価値アリではないかと、個人的には思います。

あと音楽もですね、非常に良かったと思います。何が良かったって、その使い方ですね。よく聞くとひっきりなしには流れているのですが、あまり意識されない。

この主張しない感じが、映画を邪魔せず、それでいて、作品の構築に一役買っている感じで。

しかもちょっと音響系テクノっぽいんですよね。その感じもこの作品にすごく合ってるし、そうやって音楽が作品世界を盛り上げていたと思います。

そしてこの映画、アカデミー賞の視覚効果賞を受賞しています。さすがですね。

男女関係の比喩?

話自体もですね、サスペンス仕立てで面白かったと思います。シニカル、というには毒の効きすぎたラストも良かったですね。

そしてそれは、男女の関係の比喩だったんじゃないか、というような気がしたりしなかったり。

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「ナイン・ストーリーズ」(J・D・サリンジャー)ネタバレ有り読書感想。漫画「バナナフィッシュ」に影響を与えたであろう珠玉の名作集!


以前、あれはいつだったか、高校生の時だったか、ちょっと忘れてしまいましたけどね、「ライ麦畑でつかまえて」を読んでみたんですよ。その時思春期だったし。思春期の人が読むにはお勧めだろうって色んなところで言われてたので。

で、まぁ、読んでみたんですけどね、これが風呂上がり…あぁ失礼…サッパリわからなくてですねー。

で、それから何年か経って、何年くらいですかねぇ、十数年じゃ足りないかもですね、数十年かもしれないですね、それくらい経って、どういう経緯かは忘れましたが、同じJ・D・サリンジャーの「ナイン・ストーリーズ」の文庫本を本屋さんで手に取りまして。

そしたら、これが面白い!

一遍30ページくらいの、短編としても短めの作品集なんですけどね、これは非常に面白く読めました。

サリンジャー、と言ったら大抵の人は「ライ麦畑でつかまえて」だとはもちろん思います。でも、個人的にはこの「ナイン・ストーリーズ」を断然お勧めしたいです。それくらい好きですねぇ。

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「バナナフィッシュにうってつけの日

漫画「バナナフィッシュ」のタイトルの元ネタともなった話としても、その界隈では有名かと思われます。

アメリカのビーチの情緒が全体を覆っているのですが、その裏で常に不穏な空気が漂っています。おそらくは第二次世界大戦の帰還兵であろう主人公の、戦争によって傷つけられた精神が通奏低音のように鳴り響いているような印象です。

これはイーストウッドが「アメリカン・スナイパー」でも描いた問題と同じで、漫画「バナナフィッシュ」の主題にも影響を与えていると思うんです。

「戦争によって破壊された精神」「若き元軍人の死」というのは非常に「バナナフィッシュ」の物語の始まりと共通しているように思いました。

「バナナフィッシュ」はタイトルだけでなく、その物語もこの作品を下敷きにしているのではないか、と思います。

主人公の恋人とその母親との電話での会話から、そういった不穏な雰囲気が醸し出されます。

それで、この二人の会話が、何というか実に上手いんですね。服の話とか、日焼けの話とか、いかにも女性の会話って感じで、それもまた非常に上手いんですけど、そんな最中にポツッポツッと主人公の精神が破綻しているのではないか、というような情報が、主に母親から、出てくるんです。

この、情報が自然に会話からこぼれてくる感じ。あたかも盗み聞きしているような感じが、実に上手い。じわりじわりと不穏な状況が迫ってくる感じというか。

そんな中、後半に主人公が登場します。

ビーチで、小学生の女の子相手に良きお兄さん的に接する主人公からは、戦争の傷を見出すのは難しいですが、バナナフィッシュの話題を持ち出すと、不穏さが顔を出してきます。

それでこの主人公、やたらと女の子の足首を掴むんですね。なんか変だな、って思うくらい。で、その女の子と別れてホテルに帰るんですけど、エレベーターに乗る時に、同乗した女性から自分の足首をジロジロ見られたらしいんです(それもまた定かではない)。

おそらく、主人公には足首に何かしらの傷があるのでしょう。しかし、そのことと、主人公の精神が傷つけられたことと関係があるのか、確かなことは書いていません。

物語は主人公の自殺というショッキングな形で幕を閉じますが、なぜ、この物語の主人公が自殺に至ったのか、明確にはわかりません。

しかし、女の子が、バナナフィッシュを見つけた、と言ったことに何か深い関係があるように思えます。女の子が本当にバナナフィッシュを見つけたのかどうかはわかりません。子供らしい見栄のようなものかもしれません。しかし、主人公にとってはそれは重要なことだったのでしょう。

だとしたら、この主人公の自殺の直接の引き金になったのは、女の子ということになります。そこらへん、何か子供に宿している無垢な悪魔性というものを、なんとはなしに感じてしまいます。

コネティカットのひょこひょこおじさん

正直、よくわからない話だったんですけども、大学の同級生だった、今はおばさんになった二人の女性の会話は、実に生き生きとしていました。

これは「バナナフィッシュに?」の前半部の娘と母親の電話での会話もそうだったんですけど、サリンジャーって、女子二人の会話がめちゃめちゃ上手いんじゃないでしょうか。

そしてこの話も、わからないながらも、やはり戦争というのが通奏低音的に、顔を出したり引っ込めたりしているように思います。

結婚している方のおばさんの元恋人が戦死した兵士、という設定らしいのですが、ハッキリとは語られません。やはりポツリポツリと小出しに語られます。そしてそれが、結婚して子供もいる現在の彼女にも大きな傷となって残っています。

また、この話にも「バナナフィッシュに?」同様、女の子が出てきます。結婚している方のおばさんの娘さんなんですけど、その子には見えない恋人がいるらしいんです。

この娘も「バナナフィッシュに?」同様、何かこう、悪魔めいたというか、主人公に不穏な陰を落とすような気がしてならないです。

ラストの方で、母親が寝ている娘の部屋を訪ね、最終的にはそこで泣き出してしまいます。

なんとなく作りが「バナナフィッシュ?」と似ているように思われるし、やはり戦争の影が色濃い。おそらくは、サリンジャー自身の戦争体験が色濃く反映されているのかもしれません。

「対エスキモー戦争前夜」

テニスをやっている女の子二人が、タクシー代を払う払わないで、一方の女の子のマンションに行く話。またしても女性二人です。

主役はマンションに押しかけた方の女の子で、奥に引っ込んだもう一方の女の子を待っている間に、その子の兄貴や兄貴の友達と話をしている、といった内容。

しかし、何を言いたいのかよくわからなかったです。結局、なぜ主役の子がタクシー代は「やっぱり払わなくていい」と言ったのかもわからない。

ただ、この話でも、主役の女の子を中心とした会話が実に生き生きしていました。思うに、サリンジャーは「その当時現代の」若者の等身大の姿を活写したかったのかもしれません。

笑い男

タイトルからして、攻殻機動隊笑い男の元ネタになったものと思われますが、どうでしょうか。

この作品は短編ながら多角的に楽しめる一遍となっていると思います。

コマンチ団とその団長、そして団長の彼女との交流を中心に、団長の話す「笑い男」の物語をもう一つの軸として話が展開します。

そして、団長と彼女の別れ、そしてそれを見ていたコマンチ団、初めて触れる大人の恋の世界と、思うにそうとは意識されなかったであろう、団長の彼女への、つまりは大人の女性への、おそらくは初めての、主人公の恋心が描かれています。

笑い男が、この現実のストーリーにおいて、何の比喩であったのかはわかりません。しかし、笑い男の悲劇的な最期は、子供に現実を突きつけるというか、必ずしもハッピーエンドで終わらない、ということを教えているようでもあります。

ウルトラマン最終回や、デビルマン最終回で日本の子供たちに衝撃を与えたように、団長が語った笑い男の最後のエピソードはコマンチ団に衝撃を与えたことでしょう。

また、コマンチ団が非常にですね、可愛らしいんですね。子供が非常によく描けている。彼らと団長、そして団長の彼女との交流もまた良い。元子供のおっさんとしては、郷愁感も掻き立てられました。

個人的には非常に好きな話でした。

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「小舟のほとりで」

これまた子供が実によく描けていると思います。

笑い男」とは変わって、今回は一人の男の子、年齢はグッと下がって4歳の子供でした。そしてまた、母親もよく描けていましたねぇ。

仕草の感じを実に丁寧に描くことによって、子供の心情をよく表していたと思います。

また、お母さんの感じも良かったですねぇ。何か問題を抱えた子供に寄り添おうとする感じ、その絶妙な距離感は親のお手本とも言えると思います。

なぜ、子供が家出をしたのか、その理由は、メイドが父親の悪口を言っているのを聞いてしまったからでした。それを思うと、冒頭の黒人のメイドたちの会話が違った風景に見えてきます。

最初は、子供の方が困った奴なのかと思っていたのですが、その実、メイドたちの方にも問題があったのです。

思い返してみれば、メイドは始終愚痴を言っています。そこに既にこのメイドの性格が描かれていたのかもしれません。

何が起こるわけでもないけど、その後ろにあるものを浮き立たせる(おそらくはユダヤ人差別問題のように思える)感じです。一つの事象を描きつつ、じわりと本当のテーマがあるような気がします。

「エズミに捧ぐ」

おそらくは、サリンジャーの自伝的短編かもしれません。

第二次世界大戦の頃、イギリスで諜報部として働いていた主人公と、たまたま会った幼い姉弟との交流。

ここでも、やはり子供がよく描けています。特に幼い弟の子供じみた仕草が実にリアルに、生き生きと描かれていました。

お姉さんの方は、年頃(中一くらい)の女の子らしく、少しおしゃま、でも非常に知的で礼儀正しく、しっかりと大人びて、それでいて子供らしい、可愛らしい面も持ち合わせている。とても魅力的な女の子に描かれています。

この短編の魅力はそのままこの女の子の魅力と言っても過言ではないと思います。

そして、この子と主人公との交流が非常に清々しくて、微笑ましい。出会いが良いですよね。ふと入った教会で聖歌隊の一人として女の子がいたという。

歌声は群を抜いて綺麗で、佇まいにも惹かれた主人公。そしてまさかの喫茶店での再会。女の子が雨に濡れている、というのもまた劇的さを感じます。

そして、これから戦場に向かう主人公に、女の子は無傷での無事を祈るりますが、その願い虚しく、主人公は大怪我を負ってしまいます。

ここでの終戦後の戦場での部屋の様子は、以前観たサリンジャーの半生を綴った映画でも描かれていたような気がすます(うろ覚え)。

そして、ラストはこの子、エズミからの手紙を読む場面で終わり、最後は未来に向けた希望の言葉で終わる。

確かに後半の主人公の様子は痛々しいのですが、冒頭の未来(現代というか)の描写で、物語的にはハッピーエンドで終わることがわかるので(というより、冒頭が実はエズミの結婚式に招待されたことがわかるシーンなので、倒置法的に冒頭がハッピーエンドの場面なのだ)、読者はある意味安心して読める。

この作品も非常に心に残る作品です。

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「愛らしき口もと目は緑」

今度は一転、大人の男女….というよりは男同士の会話劇。

しかも電話越し。

しかも、主役である電話のこちら側の白髪まじりの紳士は女とヤッてる最中を中断しての電話。

最後の方までは、電話の向こうの男の奥さんと不倫してる最中かと思いきや、最後の最後で奥さんが家に帰ってくる。つまり奥さんじゃなかった。

全く何が言いたいのかわからない作りだけど、とにかくおっさん同士の電話越しのやり取りが面白い!

電話の向こうの奴は相当酔っ払ってるらしく、主人公は正直迷惑そう。だけど、粘り強く話を聞いてやっている、という設定。

どうも立場的には主役の方が上役っぽいんだけど、あんまり主役の方が強く出れないっぽい雰囲気。そこがよくわからないながらも、なんか面白い。

とにかくサリンジャーは会話がめちゃめちゃ生き生きしていますね。これは訳者の力も大きいと思います。

なんかわからないけど楽しい一作。

「ド・ドーミエ=スミスの青の時代」

うーん、これは正直つまらなかったかな…(^^;;

コメディを書いたつもりなんだろうけど、ぶっちゃけ全然笑えない(^^;;

日本人とアメリカ人の笑いのセンスの違いもあれば、時代性もあるのでしょう。

あと、日本人が出てくるのですが、苗字をヨショトという。そんな苗字はない。

「テディ」

船の旅の描写がいかにも古き良きアメリカを感じさせ、その雰囲気が実に良い。

親を困らせる、アホな子供の話かと思いきや、実は世界が注目する天才少年の話であることがわかってきます。この展開は意外性もあるし、突然の転換が面白い。

ただ天才少年(そうでもあるらしいのだが)というよりは、もっとスピリチュアルな存在、発言で世間を賑わしているらしい、という設定でした。

ここらへんのスピリチュアルな問答は、確かサリンジャーの反省を描いた映画でもあったと思うけど、サリンジャー自身、確か仏教に入信したと思うのですが、その経験が生かされているのかもしれません。実際、日本の俳句が作品中に登場していますし。

そんな感じで、前半部(家族との交流の場面)と後半部(大学院生らしき若者の男との会話)で大きく趣が異なる作品です。

ラストはまぁ、非常に不穏な感じをほのめかして終わっていますが、なんとなく「バナナフィッシュに~」を彷彿させる感じですね。

「バナナフィッシュに~」では、ビーチの女の子が、主人公の自殺の引き金になったかのように思えるのですが、この「テディ」では、主人公・テディの妹が、ひょっとしたらテディの命を奪ったかもしれない描写で終わっています。

何かこう、ひょっとしたらサリンジャーの中では、幼い女の子が主人公を不幸へと導く、というプロットのようなものがあったのかもしれないなぁ、とちょっとこの一連の短編を読んで、そういう印象を受けてしまいました。

 

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「名探偵コナン ゼロの執行人」ネタバレ有り感想。福山雅治は「赤安」を知った!!


最近、ようやっと鬼滅旋風が一段落といったところですが、いや凄まじかったですね。

年始の「スポーツ王は俺だ!」の「リアル野球BAN」でも日ハムの杉谷が鬼滅バット持って打席に立ったりして、もうすっかり日本全国が鬼滅に飲み込まれた感じ。

そして公開当初は、煉獄さんを100億の男にするとかなんとかで、劇場に何度も通うオタクも多かったと思いますが(まぁ、そんな何度も通ったからどうこうとかいうレベルの話じゃなかったですけどね。300億ですよ)、そこで思い出したのがこの映画です。

名探偵コナン ゼロの執行人」。

いわゆる「ゼロシコ」ってやつです。

この時も「安室の女」たちが、「安室さんを100億の男に!」と言って、せっせと劇場に足を運んでいたのです。何度も何度も。

残念ながら、彼女たちの甲斐甲斐しい努力とは裏腹に、日本での興行収入は100億には届かなかったのですが(91億)、海外も含めると、見事110億と相成ったわけであります。すげえな、安室の女。

僕の友達にも「安室の女」は何人かいまして、もう大絶賛してるので、「そんなに面白いか?面白かろう!」というわけで、僕も観に行ってきたのです。そうなんですよ、僕も「全世界で100億の男」に貢献してきたのですよ。

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予告編

そりゃ面白いでしょ

まぁね、事前の評判もなかなか良かったので、期待はしていたのですが、まぁ、ぶっちゃけ、「言うてもそんなでもねぇだろ」という気持ちも半分くらいありました。

そんな半々の気持ちで観に行ったのですが、めちゃ面白かったです!

まぁ、そりゃあね、基本はミステリーだし、あれだけの長寿シリーズだし、それが力入れて劇場版作るわけで、しかもその劇場版も何作も作られて毎回毎回興行成績も良いわけですから、もう手堅く面白いですよ、ええ。

で、ですね、やってることはハリウッド映画のようなスケール感なんですよ。いや、見事でしたね。デカいビルで爆発事件が起きちゃったりしてね。内容的にも警察の内部告発モノで、非常に骨太の警察ドラマでした。

そういうのを実写で撮るとなると、そりゃ予算もハリウッド級になってしまって、なかなか難しいですが、絵なら何とか頑張れる、という感じでしょう。アニメーターの方々は大変だと思いますが(^^;;

一方、ラストのアクションの方はですね、少林サッカーを思い出してしまいましたw コナン君の必殺の武器はサッカーボール(と特殊シューズ)ということもあってw でもやっぱり、安室さんが運転するカーアクションはハリウッド級でした。ここのアクション、作画もアニメーターの方々大活躍という感じ。

日本人だって、発想だけならハリウッドに負けてねーぞ!といったところですよね。

俺は安室さんより犯人に興味を持った

でも…ですね。世間で言われているようには僕は安室さんにはそれほど惹かれなかったですねー。実はそこも(を?)期待して行ったのですが、そういった意味ではほんの少しだけ残念だったかな。

世間の女子(主に腐女子)がなぜああも安室安室と騒いで「安室の女」になったのか、まぁ、正直、全く分からなかったですね(笑)

なんでもクライマックスのアクションシーンでの「俺の恋人は……この国さ」という安室さんの台詞が名ゼリフとされているらしいのですが、個人的にはまるで響かなかったですね。

むしろ…何かこう、非常にファッショなものを感じてしまい、うすら寒くすらありました。まぁ、安室さんが警察ということを考えると、一応の納得もするのですが…。台詞の一部が「市民」となると、おお!とも思うのですが、「国」となると…。いや、まぁ、いいんですけどね。

逆にですねぇ、僕が強く惹かれたのは、黒幕であるところの日下部さんだったんです。

何と言うかですねぇ、その、非常に人間臭いんですよねぇ。

警察機構の被害者的側面もあって、その意味で本当の悪人ではないと思うんです。

むしろ、彼の中の正義を全うするために、行き過ぎた行為を行ってしまい、挙句犯罪者となってしまった、ということも言えると思うんです。

もちろん、彼のやったことは決して褒められたものではなく、むしろ裁かれなくてはいけない、罰を受けなくてはいけない行為です。

しかしよくよく考えると、彼を犯罪行為へと駆り立てた事の元凶は、安室ら公安警察である、とも言えると思うんですよね。そのことを思うと釈然としない。だから、安室にも釈然としない。

何が正しくて、何が悪いのか、非常に曖昧に思えてきます。犯した罪が悪ならば、その元凶を辿っていかなくてはならないものなのかもしれません。

そういった意味では、非常に後味の悪い、非常に考えさせられる、そういった奥行きの深い作品であったとも言えるでしょう。

なんとなく、思い出してしまったのが、かの名作刑事ドラマ「相棒」です。警察物だし、非常に共通点が多いかもしれません。

その他雑感諸々

また、ゲスト声優は今回博多大吉と上戸彩だったのですが、二人共とても上手かったと思います。特に大吉先生は意外でしたねぇ(失礼!)。上戸彩も、ちゃんとアニメの絵に負けていない、実写の俳優が陥ってしまいがちなモソモソ感はほぼなかったと思います。

それから思ったのは、コナン君がですねぇ、最早小学生の姿であることが物語の足枷でしかないように思えて仕方なかったですw 高校生の新一君でもキツいですかねぇ(高校生は世間的にはバリバリ子供です)。もっとちゃんとした、社会人であった方がスムーズに話が進むような気がしました。

安室さんの部下の風見さんっていう人がコナン君に愚痴をこぼすシーンがあるんですけど、そのシーンなんて「風見は大人として終わってる」風に見えてしまいますw お前、大人だろ?w しかも公安警察だろ?w 小学生相手に仕事の愚痴こぼすなよwww

後はですねー、これも割と強く思ったんですけど、話が難しいw 警察の細かい機構や裁判についての話が結構細かく描かれていて、もちろん「図入り」で詳しく解説はされているのですが、それでも難しく、子供が観ても面白いものか?と思ってしまいました。

一応、「名探偵コナン」って子供向けのアニメですよね? 人殺しの現場は出るは、警察の難しい話は出るは、なかなかハードですよねw

最後にですね、今回主題歌を担当しているのは福山雅治! あの「日本一モテる男」こと福山雅治です(いや、ホントカッコ良いですよね!)!

で、その福山。ツイッターで動画が流れてきたんですけど、なんと、「赤安(読み:あかあむ)*1」なる単語を知ってしまったそうです。そんでまた調べてしまったそうです。あまつさえ、読んだそうです(!)。

いやさすが福山ですよね。自身のコンサートにおいて、ノーパンでチャック全開させただけのことはある。

 

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*1:気になった人は調べてみてください。福山曰く「割と浅いところに埋まってる」ので。

「海を駆ける」ネタバレ有り感想。不可思議映画だけど仲野太賀スゲエ!


「ほとりの朔子」「淵に立つ」が良かったので、すっかり好きな監督になったのが、深田晃司です。

で、その最新作が公開されるってんで、その当時、当然のごとく観に行ったのが「海を駆ける」です。

ま、でもですね、なかなかにして不可思議な映画でしたね。

またまた謎映画の森に迷い込んだのでありました。

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映像美

先ず、すごく綺麗な映画でしたねぇ。

画面の切り方とかがすごく計算されている印象を持ちました。

そしてとてもスタイリッシュ。

家の感じとか家具とか、南国インドネシアのお洒落な部分を切り取った、という感じでしょうか。

絵としての映画というか。

これもまた、劇場に足を運ぶ醍醐味ですよね。

展覧会で絵を観る気分で映画を観るというか。そういう効能も映画にはあると思います。

謎映画

でも、なんだかよくわからない映画でした(^^;;

まぁ、ファンタジーということなので、ファンタジーにありがちと言えばそうかもしれないですけども…。

とにかくディーン・フジオカの役どころが謎すぎてわからない。

ただただ不可思議なだけの存在で、周りに何か影響を与える、ということもないように思えます。

で、そのディーン・フジオカが主役らしいんですが、主役には思えなかったですね。

むしろ、鶴田真由のファミリーを取り巻く若者たちの群像劇、といった趣でした。

初めのうちはインドネシアで起きた津波災害と東日本大震災をなぞらえるような、そんな話かと思ったんです。

でも、そこから微妙に浮き上がる日本人のいびつさがあぶり出されていき、全編に渡ってそのような描写が点在してきます。

ただ、物語も中盤を過ぎると、それぞれの恋愛感情を軸に行き方を模索する若者たち、という方向にシフトしていったように思います。

そして更に、そこからディーン・フジオカ扮する謎の男・ラウの不思議性がどんどんと露わになっていって、ラストの方では完全に不可解ファンタジーになってしまうのです。

ラウは人を助けもするし、理不尽に人の命も奪う(そのように受け取れる)。

そんなラウは、ひょっとしたら自然の象徴なのかもしれない、と思うとなんとなく納得はいくんですけど…。

それにしても不可思議な映画でした。

太賀スゲエ!

そんな感じで、ディーン・フジオカが演じた主役のラウはもちろん、インパクトは絶大だったわけですが、ただ役者としては、何と言っても太賀でした(現在は仲野太賀ですが、この当時は太賀でした)。

前々から良い役者だなぁ、とは思っていたのですが、この映画を観て、マジ半端ねぇな、と思いました。

もう、その実存感たるや、他の追随を許さない、って感じです。

ホント、現地人か、って思うくらい。インドネシアの現地の言葉もとても流暢に(と言って、その言語知らないんで、「日本人的には流暢に聞こえる」って感じなんですけど(^^;;)話すし、佇まいなんかも、我々がイメージする「現地で生まれ育った日本人」って感じ。

確かに話の筋はよくわからない謎映画ではあるのですが、映像美、そして太賀の演技だけでも一見の価値有り、だと個人的には思います。

 

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「カンガルー日和」ネタバレ有り読書感想。村上春樹のエキス絵本?!


基本的に僕は短編小説が好きです。

やっぱり読むのが遅いってのが大きいと思いますw 読むのが遅いと、いつまでも話が終わんない。

だけど、短い話だと割とすぐに読み終わる(それでも遅いけど)。もちろん、本一冊となると時間はかかっちゃうんですけど、それでも、短い方がキリをつけるのに便利だったりします。

村上春樹も好きでたまに読むんですけど、やっぱり長編よりも短編の方が肌に合う感じです。

特に村上春樹の場合はそれが顕著ですね。村上春樹の短編は長編に比べてスキッとまとまっていて読みやすいと思うし、切れ味も鋭い気がします。

人気がある故に酷評も多くて、割と最近出された「女のいない男たち」も結構批判されているのを見たことがあるんですけど。僕は面白く読めました。

カンガルー日和」は、もう随分前に刊行された本なんですけど、これも好きです。

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村上春樹の魅力が凝縮

カンガルー日和」は短編と言うには短く、ショートショートにしては長すぎる、そんな分量の、掌編とでもいうべき長さです。これがまた個人的にはすごく読みやすかったです。読むの遅いですからねw

短編っつっても、大体50ページくらいあるじゃないですか。そうなると僕的にはもう長いw どんだけ読むの遅いんだ、って話ですけどねw

でも、「カンガルー日和」は一日一話読み終えられる感じ。一話10ページくらいですかね。実に短いです。ちょっと時間がある日は二つ三つ、できれば五つくらい読めちゃうし、時間がない日は一話でもOKだし。実に都合が効く感じです。

それだけ短いから、言ってみればその作家の物語性みたいなものをギュッと絞ってエキスにした感じになるから、より村上春樹の短編の良いところが出ていると思うし、短編集全体を見渡しても、村上春樹っぽさがよく出てると思います。

幻想小説的なところや、エッセイのような私小説のようなもの。お洒落な感じや、郷愁感を感じるところ。不気味なところや、ちょっとユーモアがあるところ。あと、料理に関する文章! たまらなく魅力的ですよね。こっちも食いたくなってきてしまいます。そんな、色々ある村上春樹の良いところが全てある感じ。

それに、今よりもまだ大分若いからか、文章に瑞々しさが感じられるんですね。まだ多分、30をちょっと越えたくらいじゃないかな。本人的には、もう若くはない、って意識が文章の端々から見えるんだけど、でもやっぱり30はまだまだ若い。

ただ、80年代当時としては、30はもうすっかりおじさん、おばさんって感じだったんですよね。今の30とは全然違う。今のイメージだと、40かそこら。それを思うと、今の人たちはホント若いですよねー。

あと、佐々木マキのイラストも村上春樹の小説に合っているんですよねー。実際、何度も装丁を担当していますし。ちょっとお洒落でちょっと不気味。それって村上春樹の文章の特徴でもあるし、実にハマッていると思います。それまでは表紙を担当していただけらしのですが、この本では挿絵も幾つか入っているんです。だから、大げさに言えば、ちょっとした絵本的にも楽しめるんですよね。そして、そういった挿絵が箸休めにもなって、読むのが遅い僕としては、何となく息抜きできて楽しかったです。

ちなみに、この本にはあとがきがあるのですが、村上春樹の何かの本でまえがきとかあとがきが嫌い、って書いてあったの読んだことあるけど、その後けっこう見かけますけどね。村上春樹の本のまえがきとあとがき。

「1963/1982のイパネマ娘」が一番好き

で、どの話も面白いんですけど、中でも「1963/1982のイパネマ娘」が個人的には一番好きでしたかねー。

ジョビンの「イパネマの少女」に登場する娘に対する、まぁ、夢物語というか、そんな感じ。レコードの中、或いは歌詞の中の少女は歳を取らない、という。そして、その少女と会話をする。ちょっと妄想的な小説、というかエッセイかもしれない。

とりとめのない連想を通じて、郷愁感を描いている。ブラジル音楽特有のサウダージ村上春樹なりに表現してみた、という感じかもしれません。

「イパネマの少女」に対する返歌のつもりで書いたのかもしれません。で、更にそれを、リオのビーチで起こったことを、都市的に表現してみた感じ。村上春樹の都会的センスが良い意味で爆発してますね。とても読み心地の良い作品って感じです。

個人的に思う「村上春樹の良いところ」が全部詰まってる感じですね。60年代の音楽が好きで、シャレオツで、食べる描写が美味しそうで、知らないはずの時代に懐かしさを感じて、ちょっとユーモアがあって、幻想的で。

懐かしの手紙の時代

バート・バカラックはお好き」を読んだ時に、ちょっと思うところがあって。

これは手紙の通信添削の大学生の話なんですけども。添削の先生は生徒とは異性、という決まりが、そのバイト先ではあったらしく、主人公(多分村上春樹)は若い子からおばさんまでの手紙の指南を行なっている、という話。

思うに、この時代はラブレターとか、文通とか、手紙での交流が盛んだった時代だったかもしれません。多分60年代が舞台だし。

この物語では主人公は手紙を書くのは「寂しいから」だろう、と言っています。そして、この時代、手紙を出す相手は、おそらくは自分の手紙を、書いた文章を、ひいては自分を、受け入れてくれる人だったのでしょう。だから、手紙を書くということは、それだけで救いになっていたのかもしれません。

翻って現代はSNSの時代です。手紙なんか誰も書かない。手紙の代わりになるのがSNSだから。で、一人ではなく、一気に多数の人に自分の文章を見られてしまう。

でもそこは、基本的には悪意の塊だったりします。だから、今の時代、自分の文章を書いても、自分を受け入れてくれることは、あんまりない。

おそらく、この「不特定多数」というのがよくないのかもしれません。一対一ならば、真摯に向き合わざるを得ない(あるいはそのことを強要される)ことが多いと思うんです。

なんだか隔世の感を禁じ得ませんね。

こんな風に、昔のエッセイや小説を読むのは、今の時代と比較できるので、そういう楽しみ方もできて面白いと思います。

村上春樹は案外昔気質の人?

「五月の海岸線」ではですねー、村上春樹の意外な一面を垣間見れた気がして、そういった意味でも面白かったです。

結婚式で、おそらく地元の神戸に帰郷した時の村上春樹のエッセイといった話なんですけど、多分小説じゃないんじゃないですかねー。

もう、とにかく開発に対して否定的なんです。新幹線から、地元の海辺の町から、変わってしまうことに関して全否定(^^;;

個人的には新幹線から見える風景が(新幹線も)大好きなので、読んでてあんまり気分が良くはなかったのですが、ただ、なんとなく気持ちはわかります。

日本って、それまであった風景を台無しにして、画一的で無駄な建築を作り続けるところあるじゃないですか。そんな国、世界でも稀なんじゃないですかね? 歴史と伝統を大事にするヨーロッパを見習うべきだと思うんですけどねー。

そういうことは細野晴臣も、昔の東京オリンピックで東京はダメになった、みたいなこと言ってました。

でも、村上春樹にはそんなイメージなかったんですよ。でも、この話を読んで村上春樹も、戦後すぐ生まれの日本人、ていう感じがして意外でした。

近所の海で海水浴を楽しみ、井戸で冷やした西瓜を好んで食べていたそうです。井戸というのが良いですよね。

普段の文章では村上春樹は都市型スノッブを気取りまくっていますが、その根底にあるのは、まだ牧歌的だった日本の風景なのかもしれません。

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